子供に魔法を教える


「ねぇ! せんせーー! 私にも教えて!」

「ねぇ! さっきのどうやったの? 教えて!」


「せんせー僕にも教えて!!」

「私が先だから!」


なんだか子供たちが俺のところに集まってきた。しきりに教えて! 教えて! と言ってくる。


「分かった。教えるよ。ねぇ君。名前は?」

俺はさっき俺がマジックアローの撃ち方を教えた男の子に聞いた。


「ロミオです」


「そうかじゃあロミオくん。君の実力はかなりのもんだよ。だからあんまり的にバンバンやられると周りの子たちが自信を無くすからさ、出来たらちょっと離れてやって」

俺は言う。


「分かった!」

ヤンチャそうな男の子はそう言った。そして別のところで練習を始めた。


「ねぇ! 先生! 私に教えて!」

と俺の足にしがみついてくる女の子がいた。


「分かった! 分かったからちょっと離して!」

と言って俺は女の子を引き剥がした。


「で、なにが分からないの?」

俺は聞いた。


するとその女の子は涙目だった。すると泣きながら

「うわぁぁぁんん!! パパ!」

と言って俺に抱きついてきた。えっ? なんなんだ。これは。


「ここ親から引き剥がされた子供が多いので多分クロードさんが父親と被ったんでしょう」

とアルベルトは言った。


「父親と……」


「パパーー!」

と言って泣きついてくる女の子。


「コレットちゃん。それパパじゃなくてクロードさんだよ」

と別の女の子が言う。

「そうだよ。クロードせんせー結婚してるんだよ」

「えっ? 結婚してるの? じゃあいいや」

「パパーー!!」


なんていうか子供にも色々個性があるのだなと思った。マセてる子供も純粋な子供も。生まれつきもあるんだろう。


「じゃあコレット。ちゃんだね。どこが分からないの?」


「全部」

コレットは涙目だ。


「じゃあ一回やってみてくれる?」

俺は聞いた。


「うん」

と言ってコレットは小さな手のひらを的に向けた。やはり片手打ちだ。


右手に魔力が集中するかと思ったらシュルルルとそのまま消えていった。


「うわああんんん!!!」

また俺に泣きつくコレット。俺はコレットを抱きしめて背中をポンポンと叩いた。


「少しずつやってみようか」

と俺はコレットに優しく言う。


「ん……あっ……ぐすっ」

いや泣きすぎだろ。コレット。


「まずは魔力の集中からだね。コレット。この格好になってみて」

俺は右手を突き出し左手を右手首に添えて両足を開いたスタンダードポジションになった。


するとコレットも俺の真似をする。


「で、ここに意識を集中させる」

と言ってコレットの右手に俺の人差し指を合わせる。


「で、全身から魔力が巡っているイメージをして。その魔力を右手に持っていくイメージで」

俺は言うが


「んんんんんん!!!! んんんんんん!!!」

と言うだけでまるで魔力が右手に集中出来ないコレット。


俺はコレットを見る。いや、これはマジックアロー以前の段階だな。


「コレット。自分の体の魔力は感じられる?」

俺は聞いた。


するとコレットは


「分かんない」

と言った。


「そっかそこから始めようか。まずはおヘソの下に意識を集中させて」

と言うとコレットは自分のお腹に手を当てて意識を集中させている。


「で、ゆっくりと深呼吸して」

コレットはゆっくりと深呼吸をし始めた。


「それで目を閉じてお腹から出ている魔力を感じてみようか」

俺は言った。


コレットは目を閉じた。


「ゆっくりと息をして。お腹から全身に出ているエネルギーをゆっくりと感じてみて」

と俺が言うと


パチリとコレットは目を開け


「あっ! あっ! あっ! なにこれ!」

と叫びだした。


どうやら魔力を体感することが出来たようだ。


「そのまま意識を集中させて……分かる? コレット」

「分かる! お腹からなんか暖かいものが全身に流れてるの! 凄い!」

コレットは驚く。


「今日はそれを感じる訓練をしようか。まずは一歩目からだよ。周りの学生のことは気にしないで。コレットは今魔法の扉を叩いたところだよ。これから魔法の世界に飛び込むことが出来る。今日はそれで十分だ」


「うん! せんせー! ありがとう!」


コレットはそう言って意識を集中させる。


「素晴らしい教え方です」

アルベルトが言った。


「すいません。お恥ずかしいところを見せて。なかなか一人一人の指導まですることが出来ずに。助かりました。クロードさんが来てくださって良かったです」

アルベルトは言った。俺は照れる。


「クロードさんが! 来てくださって! 良かったです!」

とコレットがアルベルトのモノマネをしながら言葉を繰り返した。笑う俺とアルベルト。


「いやぁクロードさんさえ良かったらいつまでも学園内で教えて頂きたいくらいです」

アルベルトは言う。


「いずれこの村から立ち去るつもりなので」

俺は言う。


「そうですか……」


「私にも教えてよ。レベル6のクロードさん」

と声に怒気を秘めたような女性の声がした。俺はそっちの方を見る。するとそこには、さっきまで淋しそうに一人でいたベアトリスがいた。



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