三角関係の前兆?

「アレクサンドラ……」

俺はエールを注ぎながらアレクサンドラを見る。アレクサンドラの美しいドレスに目がくぎづけになる。


「ちょっと。クロードくん。エール溢れてるよ」

ミランダが俺に言う。


「!」

気がついたらエールが大量に溢れていた。あっ! しまった! アレクサンドラを見た瞬間全ての意識を持っていかれた。


俺はエールを布巾で拭く。


「これはどこに座ればいいのか」

クロエが若干の居心地の悪さを感じながら言う。


「私こういうお店くるの初めてだから」

アレクサンドラは言った。


店内はアレクサンドラたちに注目していた。ただでさえよそ者が目立つこの街。派手な服装をした美女三人が目立たないハズはない。


「勝手に座るんですよ。開いてる席に。遠慮なんていりませんよ」

ミラーカが言う。


「えぇ……でも……」

アレクサンドラが戸惑っている。


俺は壁にかけてある鏡で俺の髪型をチェックした。髪型は……よしっ……いや駄目だ。ここの髪のボリュームをもう少しクシャッっとしてここは逆にボリュームを落として……よしっ! これで! 俺はアレクサンドラの接客に向かおうとするがまた自分の髪型が気になって鏡の前に戻った。そんな俺をミランダは呆れたように見ていた。


「よしっ!」

意を決した俺はアレクサンドラのそばまで行く。


「あっ……」

アレクサンドラの声が聞こえた。


「お客様。三名様ですか」

俺はアレクサンドラたちに言う。アレクサンドラは恥ずかしそうに下をうつむいている。


「そうです。テーブルに案内していただけますか?」

クロエが言った。


「はい。ではこちらに……」

俺はアレクサンドラたちをテーブルまで案内した。


「こちらのテーブル席にどうぞ」

俺はそのこじんまりとしたテーブル席に案内した。ここは店内の喧騒があまり届かない人気の席だ。


「では、お嬢様お座りください」

クロエが椅子を引いてアレクサンドラを座らせようとする。


「!」

俺はすぐさまクロエからその椅子をひったくるように奪う。


「なっ! なんですか!」

クロエはおどろく。


「お客様にそのようなことはさせられません! どうぞお客様お座りください」

俺はアレクサンドラに言う。


「ありがとうございます」

アレクサンドラは耳が真っ赤になりながら座った。


「よしっ! ではご注文はなにになさいますか?」

俺は聞くとミラーカとクロエは立ったままだった。


「どうしたんですか? お客様お座りください」

俺は言う。

「いや、クロード。席を引いてくれるのではないのか」

ミラーカが呆れたように言う。


「あっ! はい! もちろんです! お座りください!」

俺はテキパキとミラーカのクロエの椅子を引き席に座らせた。


「ではっ! ご注文はなにになさいますか?」

俺は聞いた。


「もしよろしければ店員様のおすすめを聞きたいのですが」

顔を真っ赤にしてうつむきながらアレクサンドラは言った。


「あっ! オススメですか。僕のオススメはそうですね。このコールドフィシュの冷製パスタ、それとこの世界樹もどきのサラダがオススメですね」

俺は言う。


「店員」

クロエが言う。


「すまないが、私達はこういう店に来たのは初めてでな。悪いが勝手が分からん。こちらにおわすのは魔界の姫君。神々に仕えると思って最高級のもてなしをしてくれ。金のことは心配いらん」

クロエは言った。


「もう! クロエったら! 迷惑でしょ! そんなことを言ったら!」

アレクサンドラは言った。


「頼むぞ。クロードくん。我々は神々らしいからな」

と意地悪そうな顔でミラーカが言う。


「かしこまりました!」

俺はそう言ってその場を離れようとすると……


「クロード!……神父さま……」

とアレクサンドラの声が背後からかかった。


「はい! なんですか?」

振り返る俺。


「どうですか。このドレス。場所にそぐわず派手な衣装でしょうか?」

と髪の毛をクルクルして赤面しながらアレクサンドラは言う。


「いえ! まさか! アレクサンドラ様がお越しになってこの場の空気が変わりました。あなたがお越しになった瞬間全ての人間が美というもの本質を知ったのです! 星々の輝きが散りばめられたそのドレス。大変お似合いですよ」

俺は言った。


「そうですか。その言葉ありがたく頂戴します」

そんな俺とアレクサンドラのやり取りをミラーカとクロエは苦虫を噛み潰したような表情で見ている。


「それでは……」

俺はうやうやしくお礼をしてその場を離れた。


俺がテーブルから離れたのち、


アレクサンドラは

「うおっしゃーーー!! ねぇ! みんな聞いた? 聞いた?」

とクロエやミラーカに聞いた。


「聞きましたとも。あの歯の浮くようなセリフ。歯が折れるかと思いました」

クロエは言う。


「良かったですね。姫様」

ミラーカは言った。


「ねぇ! ミラーカ! 本当に喜んでくれてる?」

アレクサンドラは聞いた。


「もちろんです。姫様とクロード様のご結婚。それが全ての魔族の悲願ですから」

ミラーカはそう言った。クロードのアレクサンドラに対する求愛の言葉を聞き、ズキリと胸が傷んだことはひた隠しにしながら。



まだまだ続きます。

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