黒龍団バルドウィンが来た!
「ほう。なかなか小綺麗ないい店じゃないか! おっ! なるほど白銀の大盾……あそこの壁にかけてある盾のことか!」
バルドウィンは壁にかけてある大盾を見る。
「おい! 黒龍団だ!」
「ヤバいぞ……絡まれたくない……」
「なんだよあいつらも来るのかよ」
「最悪だ!」
さっきまで騒いでいた客が静まり返ったかと思ったらザワザワざわつき出した。
「ほう。なかなかの大盾だな」
バルドウィンはそう言って店の店名でシンボルでもある大盾に触った。
「!」
それを見たミランダがバルドウィンに駆け寄る。
「お客様! 申し訳ありません! それは商品ではございません! 店の守り神です。勝手に触ることはご遠慮お願いします!」
ミランダはハッキリとバルドウィンに言った。バルドウィンはミランダより一回りも二回りも大柄だった。バルドウィンを注意したミランダの度胸に俺は驚愕する。
「なんだ女! この大盾がなんだというんだ!」
バルドウィンは言った。
「この大盾はかつての英雄クロードウィッグ様が置いていかれたものです。この大盾がこの店を守ってくれると。ただの大盾ではありません! この店の魂です!」
ミランダは懇願するように言った。
「ほほう……守り神とな……そんなものよりこのワシが直々にこの店を守ってやろう。この筋力32のバルドウィン様がな!」
とバルドウィンは言うと力こぶを周りに見せびらかすように見せた!
「筋力32!」
「筋力32!」
「筋力32!」
「筋力32!」
一緒にいた取り巻きたちが大声で筋力32コールをする。
「この筋力32のこのワシにかかれば……」
するとバルドウィンは白銀の大盾を壁から外し持ち上げようとするが……なかなか重くて持ち上がらない!
「うおおおお……」
大盾を持ちながらヨロヨロとあっちこっちを行ったり来たりするバルドウィン。
「頑張ってください! アニキ!」
「その大盾プルプル震えてますよ!」
「ホントだ。アニキにビビッてプルプル震えてますよ!」
取り巻きが言う。白銀の大盾のあまりの重さにバルドウィンは手がプルプル震えているだけであったが、取り巻きたちはそれが気づかなかったようだ。
「あっ!」
ドシーーン! 白銀の大盾は床に転がる。
「おーーい! もう降参か! 倒れちまってよ!」
「これが守り神かよ! 情けねぇなぁ!」
口々に大盾の悪口を言う取り巻きたち。
バルドウィンはハァハァ言いながらメチャクチャ汗をかいている。
「いや、なにやってんすか。ここ酒場ですよ」
俺はひょいと白銀の大盾を片手で持ち上げた。
「!」
見るからにビックリした顔をするバルドウィン。
「これ勝手に触っていいものじゃないでしょう」
と言って俺は大盾を壁に戻した。
「クロード……」
ミランダは俺を見る。
「で、なにしに来たんですか? 迷惑行為をするんなら帰ってください」
俺は言った。
「なにぃ!! はぁ……はぁ……」
バルドウィンは息を切らせながら威嚇する。
「すまん! 俺たちもう帰るわ」
バルドウィンの威嚇にビビったのか続々と帰ろうとするお客さんたち。
「あんな奴らと一緒に酒を飲めねぇよ。怖くて」
「そうだ。なにされるか分からないからな! すまんが店主会計を頼む!」
口々にそう言って会計を済ませて帰ろうとする客たち。
「こっちも会計お願いします」
小声でミランダに言う客。
「お客様! 申し訳ありません……ですがお客様がこの店を離れてしまったら……この店は……」
ミランダはそう言って客を引き留めようとするが黒龍団に怯えている客はドンドン帰っていった。
お店に残ったのはアレクサンドラたちと黒龍団たちだけになった。ガックリと肩を落とすミランダ。
「なんだ。急に席が空いたな。ワッハッハ! 寂れた店じゃのう! 良いだろう。この店はワシらの店にする! ワシら黒龍団がならず者から守ってやるからのう。その見返りとしてワシらの食事代は当然タダ。そして女性店員に自由にセクハラさせんかい!」
バルドウィンはそう言って息巻く。
ミランダはヨロっっと倒れそうになる。それを支えるエドガー。
「大丈夫か? ミランダ」
ミランダの肩を両手で支えながらエドガーは言う。
「もう終わりだ。この店……あんな奴らに目をつけられて……まともなお客様も全員居なくなって……あっ……」
ミランダは泣き出した。
「今まで必死に頑張ってきたのに……こんなことで……」
泣くミランダ。
「ミランダ……」
エドガーはミランダに言う。
「さぁ! どうした! 女性店員に給仕させんかい! ぷりぷりした可愛いお尻をナデナデしてやろう!」
バルドウィンは高笑いしながら言う。
「申し訳ありませんがお客様。この店には私の硬いお尻しか置いておりません」
俺は言った。
「なっなんだ! お前は! 呼んでないぞ!」
バルドウィンは焦りながら言う。
「お客様。申し訳ないのですが……」
俺がそう言いかけると
黒龍団のガイウスが……
「おほっ! いい女じゃねぇか!」
アレクサンドラに絡んでいた。俺の中で何かがブチンと千切れる音がする。
「なぁ! そのドレス。俺を誘ってるんだろ? エロい格好してさぁ!」
アレクサンドラにガイウスが下品な言葉で罵った。
「やめてください! あなたのような人に見てほしくてこの格好をしている訳ではありません! ハッキリ言って気持ち悪いです!」
アレクサンドラはハッキリとガイウスに言った。
「なにぃ!」
ガイウスがアレクサンドラに拳を振り上げたその瞬間!
俺はダッシュでガイウスのところに駆け寄りガイウスを壁の方にそっと押した。するとドゴン! ガイウスはふっ飛ばされて壁にバゴン! と穴を開けて外に飛んでいった!
どうやら怒りのあまり力が入りすぎていたようだ。壁に穴が開いている。そこからガイウスが見えた。呆然としているバルドウィンたち。ミランダも呆然としている。
「大丈夫ですか。アレクサンドラ」
俺はアレクサンドラに聞いたを
「えぇありがとうございます。クロード」
アレクサンドラは俺を潤んだ瞳で見つめて言う。
「あの下品な男の言葉が許せませんでした。あなたにあんな無礼な言葉を吐くとは」
俺はうやうやしく言う。
「気にしてません。あのようなものの言葉で私の品位は一切貶められることはございません!」
アレクサンドラはそう言う。
「その通りです! あのような者がなんと言おうともあなたの価値には一切翳りはございません。愚か者が月に侮辱をしたとしても月の輝きは一切失われないように。教養のないものに芸術が理解出来ないように。愚か者がいくらあなたを貶めようとあなたの素晴らしさは変わりません」
俺は言う。
「まぁ……ありがたいお言葉。クロード……」
俺たちは見つめ合う。
「てかキミたちいつまでそんな喋り方をしてるんだ。まるで演劇みたいな。そのままだったらいつまでも変な距離感のままだぞ」
ミラーカは俺たちに突っ込んだ。
俺とアレクサンドラはお互いを見る。
「あはは……ミラーカ殿これはおかしなことをおっしゃいますな」
俺が言う。
「あはは……ミラーカ。そのような下品な言葉遣いをなさってはいけませんよ」
アレクサンドラは言った。
「おい! いつまでやるんだ。このノリは。気持ち悪いぞ!」
ミラーカはそう言った。
「ガイウスーーーー!!!」
バルドウィンが叫んだ。そして店の外まで出ていってガイウスのそばまで行くバルドウィン。
「おい! ガイウス! 大丈夫か!」
バルドウィンは言う。
「へぇ! 大丈夫です。ヤロウバカ力で……体の節々が痛くて……」
ガイウスが泣きそうになりながら言う。
「おい! 貴様!」
バルドウィンが店の外から俺に呼びかけた。俺はガイウスが吹っ飛んでぶち破った穴からバルドウィンを見る。
「ガイウスの仇だ! 外に出てワシと勝負せい!」
バルドウィンはそう怒鳴った。
◇
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