ざまぁ展開④ シドの自殺

「うわああああああああ!!!!!」

泣き叫ぶシド。殺される! 殺される! 俺の全てが。家族もみんな皆殺しにされる!


「黙れ! 早く来い!」

とコンスタンツ卿の黙れ! という命令が聞こえるとピタリと黙るシド。どうやらコンスタンツ卿とシドの使い魔の契約は完全に成立したようだ。


「んんんんんんふぅ!!!! ふううううう!!!」

口を閉じてなんとか声を出そうとするシド。シドはふと窓の外を見た。あっ……! ここから飛び降りたら楽に逝ける!

「シド。お前にやってもらいたいことがある。お前の故郷に帰って一族を連れてくるのはもういい。だが……」

コンスタンツ卿は歩きながら言う。


シドは今しかない! と思った! このままじゃドラゴンに生きたまま食われる! それくらいならここで……


シドは窓のそばに駆け寄り身を投げようとする。一瞬目がくらむ。怖い。この高さから飛べば確実に死ぬ。シドは……


飛び降りた。


バゴンッ! 地面に叩きつけられるシドの体。


「しまった! あいつ飛び降りた!」

シドは薄れゆく意識の中、コンスタンツ卿が叫ぶ声が聞こえた。



シドは暗闇の中考えていた。俺は死後どこに行くのだろうかと。少なくとも天国ではない。地獄に行くんだろう。……シドは暗闇の中泣いた。自分は今までなんて人生を歩んでいたのだろう。なぜあんなにもクロードを憎んだのだろう。


やり直したい。謝りたい。傷つけた人に。クロードに。全部謝ってクロードに許してほしい。


いや、俺が傷つけた全ての人に謝りたい。俺は俺だけが特別だと思っていた。この世で大事なのは俺だけだと。自分だけが偉いと。だから人を傷つけてもいいと。自分は貴族なんだから下のものには何をやっても良いと思っていた。


もし、もう一度人生をやり直せるならクロードみたいに生きよう。誠実に愚直に。自分のことよりも相手のしたいことを考える生き方をしたい。


俺は今で自分より下の人間を欲望のはけ口にしてきた。そんな生き方はもうやめよう。だから俺はこれからもう真人間になる。これからは田舎で暮らして慎ましやかな家庭を作る。奥さんと子供がいて、そんな最低限な暮らしを送りたい。


名前も家柄も捨ててそ見知らぬ土地でやり直したい。自分に過ぎた欲望など持たない! なぁ! だから! 許してくれよ! 頼むよ! この人生がウソだって言ってくれよ! 全部悪い冗談だって。


シドは暗闇の中、小さな光を見つけた。その光は泣いている子供だった。あっ! シドは思い出した。その子供は俺がガキのときにイジメて自殺をしてしまった奴だった。俺は子供の頃からガキ大将だった。よく弱いやつをイジメてては楽しんでいた。


ある日俺が毎日のようにイジメをしていたらそいつが急に窓から飛び降りた。飛び降りてそいつは死んだ。教会による治癒には金がかかる。そいつは貧乏人の子供だったので親は治癒代が出せなかった。だから死んだ。


その自殺をした奴が暗闇の中泣いていた。その男の子だけが暗闇の中光っていた。そうか。こいつは今までずっと苦しんでいたんだな。俺は産まれて初めて後悔した。人を傷つけたことを。それは取り返しのつかないことだったんだって。今初めて気づいた。


俺がイジメた奴にも人生があって、親や兄弟がいて、親や兄弟がそいつが自殺してどれだけ辛い思いをしたのだろうか。俺は今初めて思い知った。


そいつの名前はリュカ。謝りたい。そいつの親や兄弟に謝りたい。なんとかして許してもらいたい……


光の中俺は目覚めた。目を開けて辺りを見回す。

「お目覚めですか? 大怪我だったんですよ。シドさん」男性の声が聞こえる。


俺は教会にいた。ステンドグラスから漏れる光が俺を照らす。ここは城の近くにある教会だ。俺はムクリと起き上がった……! 全身が痛い。

「あっ……つ……」

呟いてまたベッドに倒れる。


「シドさん。なにがあったか覚えてますか? シドさん窓から飛び降りたんですよ」

神父はニコリと笑ってそう言う。


シドは自分の体を触った。生きている。急に涙が出てきた。やり直したい。シドは思った。


「神父さん。僕は今まで悪いことばっかりやってきました……で、もうすぐ処刑されそうなんです。こんな僕でも天国にいけますか?」

シドは言った。


「自分が犯した罪に苦しんでいるのですね。アーケイ神に祈ってください。あなたの罪が許されるように」

神父がそう言った。


「おい。シド起きたか」

コンスタンツ卿がそう言って教会内に入ってくる。


「コンスタンツ卿……」

シドは卿を見つめる。


「まさか飛び降りるとは思わなかったぞ」

コンスタンツ卿はそう優しく微笑む。その微笑みを見てシドは泣きそうになった。


「コンスタンツ卿……俺産まれて初めて自分がやってきたことが本当に駄目なことなんだって気づきました。だから……だから……ごめんなざい……ごめんなざい……」

シドは泣く。


「よしよし……」

コンスタンツ卿はシドの頭を撫でて慰めた。


シドはコンスタンツ卿の体をガバッっと抱きしめた。

「ずいまぜん……もうじまぜんがら……」

シドは泣きながら言う。


「そっか……なんだかワシも涙腺が緩んできたな。ワシも鬼じゃない。人の子だからな……でも駄目じゃ」

コンスタンツ卿は言う。 


「えっ?」

シドは驚く。


「駄目じゃ。そんなことじゃ許さん」

コンスタンツ卿は冷酷に言い放った。



まだまだざまぁ展開続きます。

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