ざまぁ展開⑤ 謎の首輪をつけられるシド

「なんでもじまずから! なんでもじまずがら!」

シドは泣く。


すると教会内に国王陛下が入ってきた。


シドは起き上がり国王陛下に土下座をした。

「もうじわげありまぜん……ずいまぜん……陛下……どうかゆるじでください」

鼻声で言うシド。


「そうか。大変反省しておるな。よしよし。コンスタンツ卿。もうそろそろ許してあげないか。シドを。こいつもこんなに反省しておる」

国王はコンスタンツ卿に言った。


「はぁ……国王陛下がおっしゃるならば……」

コンスタンツ卿は言う。


「よし! じゃあシドお前の命は助けてやろう」

国王は言った。


「えっ? 本当ですか?」

シドは顔を見上げる。


「お前が本当に心を入れ替え善良な人間になるのならお前の命は助けてやる」

国王は言う。


「ありがとうございます! ありがとうございます!」

シドは何度もお礼をした。


「それにはただし条件がある」

国王が言う。


「えっ? なんですか?」


「クロード・シャリエ殿をここに連れてくるんだ。魔王術に目覚めた勇者をここに連れくるのだ。彼にはこの国の将軍になって欲しい」

国王はそう言った。


シドは考えた。クロードを呼び戻すんだ。それぐらいなら……クロードが将軍というのが気に入らないが仕方ない。生き延びるためだ。なんだってやる。


「出来るか? シド」

国王が言う。


「はい。この身は国王様に捧げた身。なんでも申し付けてください」

シドは言う。


「では……」

すると国王は5つの円環を取り出した。まるで腕輪のような金属だ。


「これは古代のアーティファクトの『審判の円環』と言ってな。悪いがこれをお前を監視する」

国王は言った。


「……はい」


すると国王は従者たちを呼びシドに審判の円環を装着させた。クビに両腕両足に5つ腕輪足輪首輪のような円環を装着させた。


「この円環でお前を監視する。お前が悪事をしたならばこの円環は爆発しお前の四肢やクビは吹っ飛ぶ」

国王が言う。


「えっ?」

シドは言う。


「本来は処刑されるハズだったんだ。それぐらい大目に見ろ」

国王は言う。


「はい……」

シドはなんだか納得いかないようだ。


「お前が嘘をついたり、不道徳な行いをするとこの五つ円環のうち一つが爆発する。それは足かも知れんし腕かも知れん、あるいは一発目からクビが吹っ飛ぶのかも知れんし。だからシド。くれぐれも悪いことはしないようにな」

国王はシドの肩にポンッっと手を置いて言う。シドは首につけられた円環を手で触る。えっ? どういうこと? 俺が死ぬって? 許してくれたんじゃないのか? 国王陛下……


「では早くいけ。クロードを探すのだ。なお、お前の一族は実はほぼ捕まえておる。一日経つごとに20人ずつ殺していくからな。なるべく早く戻ってこい」

国王は残酷に言い放った。


えっ? どういうことだ? 俺がクロードを探しに行くって? それで俺の親族が人質になってるって? それで早く探し当てないと一日単位で20人殺されていくって?

シドは国王の言ってることがまるで理解できない。シドはひたすら首の円環を触っている。


「シドさん。シドさんは今まで罪を犯してきたとおっしゃいましたね。これは最後のチャンスなのですよ。どうぞこの世で正しい行いをしてください。そうすれば死後に神にその善行を誇れます。俺は死ぬ前に一族の命を救うために頑張ったのだと。そう神の御前で言うことが出来ます。シドさんの贖罪の旅に救いあらんことを……」

そう言って神父は祈りだした。


いやなんだ。こいつはなにを言ってるんだ。シドは頭がパニックになる。


「タイムリミットは10日だ。それでお前がクロード探し出して戻らなかったらその円環は爆発する」

国王は冷たく言い放つ。

シドは首の円環を触った。これが爆発する?


「シドさんこれに着替えてください。それとこれを」

神父は言った。


「これは修道服です。神に身を捧げたものが着る服です。そして少しばかりの路銀です。あなたがこれから出る旅は巡礼の旅です。この王家を映えあるものにする栄光の旅です。どうかお気をつけて」

神父は泣きそうになりながら言う。


俺たちは無言になる。


「なにをしてる早く行かんか。腕をふっ飛ばすぞ」

国王が言う。


「はっ! はい!」

シドはそう言って教会を出た。まだ自分の置かれている立場が理解できない。


クロードを探してこいと言われた。悪事をしたら円環が爆発して首や腕が吹っ飛ぶと。それで一日が経過するごとに俺の親族が20人死んでいくと。タイムリミットは10日でそれに間に合わないと円環が爆発すると。


ガヤガヤと楽しそうに雑談する街の人達。追いかけっこをして遊ぶ子供たち。いつもの日常的な光景。だがシドは絶望の眼差しでそれを見ていた。


シドは占い師アルディスの言葉を思い出した。クロードはモントレイユの街にいると。


あっ! そうだ。ここからモントレイユに直行する船があるハズだ。それにとりあえず乗り込もう。乗り込んでからだ。これからどうするのか整理するのは。今は頭がパニックになってなにがなんだか分からない。


シドは船着き場まで向かった。

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