ガヴォイセンとの交渉。えっ?チョロすぎない?

「よくもオイラを! 殺してやる!」

俺が召喚した使い魔になったガヴォイセンはその小さな体を怒らせて口を開けて光弾を放とうとする! キィイイイインン!! 口に光が集まる。


「うわぁ!」

俺は思わず飛び退いた。


キィイイイインン……イイ……するとその光はそのまま消えた。


「えっ? あれ? どういうとこだ」

驚くガヴォイセン。そのリンゴほどの小さな体でキョロキョロ自分の体を見る。


「使い魔は主人を攻撃出来ませんからね」

ミラーカはそう言いながら俺に近付く。そして俺に耳打ちした。


「ガヴォイセンとちゃんとしたギアスを交わした方がいいですよ」

「ギアスってどんな?」

「それは……」


ミラーカは契約の内容を俺に話す。

「なるほどでも……それでは」

俺は答える。

「でも……」

ミラーカは俺に耳打ちした。


「こらーー! オイラを無視するなーー」

ガヴォイセンは怒り出す。


「黒龍。ガヴォイセン。あなたにお願いしたいことがあるのです」

俺は敬意を払い言った。


「なにっ! なんでオイラがお前のお願いなんて聞かないといけないんだ!」

ガヴォイセンが怒り出す。


「しかし、お願いを聞いてくれないと一緒あなたはそのままのちんまいサイズで一生過ごすことになります」

俺は言った。


「うわああああ!!! お前! 脅迫か! それ! 脅迫だな!」


「はい。脅迫です」


俺は答えた。


「うおおお!! オイラを脅迫すればどんなことになるか分かってるか!」

ガヴォイセンは怒り出す。


「どうなるんですか?」

俺は聞いた。


「そりゃお前! 元のドラゴンの姿に戻ったら一番最初にお前を噛み殺してやる!」

ガヴォイセンは怒鳴った。


「ですから、一生元のドラゴンの姿に戻らないんですって」

俺は言った。


「うわああああああ!!!」

ガヴォイセンは悔しさのあまり床をゴロゴロ転げ回る。


「ですが! 元通りになる方法があります!」

俺は言った。


「えっ? なんだ! 早く言え!」

興奮気味でガヴォイセンは食いついてくる。俺は若干の使い魔ガヴォイセンのチョロさを感じながら話を続ける。


「僕の家族を救ってください。ガボさんにしか出来ないんです」

俺は頭を下げた。


「ん? どういうことだ?」

ガヴォイセンはまだ食いついている。


「実は……」

俺はことの顛末を話した。


「……で、僕の妹はそのシドという奴に酷い目に合わされそうになってるんです」

俺は言った。


「そんな悪い奴がいるのか。全く人間っていつのはどいつもこいつも悪人ばっかりだな!」

ガヴォイセンは憤慨して言う。


いや、あれだけ人を殺してたお前がそんなこと言うか? と思ったがそこは黙っておいた。


「ガボさんにしか出来ないことなんです。僕には翼が生えてないです。ですからガボさんにお願いするしかないんです!」

俺は懇願した。


「ふっふーーん。そうだろう。人間には翼がないからな! ふん! いい気味だ! こうやって人間にお願いされる日が来るとはな!」

ガヴォイセンは嬉しそうに笑った。なんかチョロ過ぎないか? このドラゴン。


「はい。ではやってくれますか?」

俺は言った。


「嫌だ断る」

ガヴォイセンはそう言った。


は? 俺は内心キレそうになる。


「ガヴォイセン様。では、ガヴォイセン様は一生私めの憎たら……いや、可愛らしいペットとして愛玩されるということでよろしいですか?」

俺は聞いた。


「ふっふーーん。そんなわけないだろ。スキを見てお前らを殺してやるからな。覚悟しろ!」

ふざけんな。なんなんだ。この使い魔は全然言うことを聞かないじゃないか。そのクソガキドラゴンめ!


俺はハァっとため息をつく。


「しかし、そのお前が話していた、国王との盟約ってなんだ? オイラそんなもの知らないぞ?」

ん? どういうことだ?


「ガヴォイセン様が国王と交わした約束ですよ。国を守る代わりに国民を餌として食べても良いっていう」

俺は言う。


「え? そんなこと聞いてないけどなぁ。ある日オイラのとこに国王の使者がイキナリ現れて国民を餌として食べていいから、ずっと城のそばに居てくれって言われただけで、守ってくれなんて言われてないぞ」

ガヴォイセンはそう言う。


お? 話が違うんだけど。シドのノートによると国王は確かにガヴォイセンと契約したって……


「しかし、その密約ってなんだ? なんか面白そうだな」

ガヴォイセンはワクワクしながら俺にそう言った。あっ……俺は悪いことを思いつく。


「ガボさん。密約に興味がおありですか?」

俺は言った。

「あぁ! なんか楽しそうだな!」

ガヴォイセンは目をかがやかせる。


「では私めと密約をしましょう。ミラーカくん」

俺はミラーカを呼んだ。

「はい。クロード局長。こちらが書類になります」

ミラーカも俺に乗ってくれた。そして一枚の紙を俺に手渡す。それはミラーカが書いてくれたギアスの契約の紙だった。黒龍ガヴォイセンを強力に縛り付けるギアスの呪いが込められた紙だった。


「どうもありがとう。ミラーカくん。いい仕事だ。ではどうかね。今晩一緒に食事でも」


「イヤですわ。クロード局長。今の会話全て録音して人事部に報告してクビにしてもらいますからね」

ミラーカはそう言って微笑む。


「ははっ! 手厳しいな」

俺たちはそんな小芝居をはさみながら書類を受け取った。


「おっ! お前局長だったのか? 局長って凄いんじゃないのか?」

ガヴォイセンはそう言った。どうやら驚いている。


「そうです。局長は凄いです。それで、この書類で局長である僕と密約を交わすことが出来ます」

俺は言った。


「おおっ! これで! 密約が!」

ガヴォイセンは興奮している。


「あーでも。この契約って大人の方じゃないと契約出来ないんですよね……どうしよっかな」

俺は言った。


「ふざけるな! お前さっき密約するって言っただろ!」

ガヴォイセンは怒る。


「そうですね。じゃあ今回だけ特別で。ガヴォイセン様だけですよ。こんな特別扱い。ではここにサインしてください」

俺は書類をガヴォイセンに見せるとサインを求めた。


「そっか! これが密約の書類か! えいっ」

と言ってガヴォイセンは口から炎を吐いた。その炎がギアスの書類を燃やす。


「えっ? ガヴォイセン様?」

するとみるみるうちにその炎は消えてサイン欄のところにガヴォイセンの名前が焦げたように焼き付いた。


「これでいいだろう」

ガヴォイセンがそう言うとギアスの紙からヴンッっと魔法陣が飛び出した。


「!」

すかさずその魔法陣から稲妻のような光がほとばしって……バチン!! 


俺とガヴォイセンの胸に直撃した!


「うおっ!」

「うあっ!」


衝撃を受け少し吹っ飛ぶ俺たち。


すると焼きごてで刻印が押されたように俺とガヴォイセンの胸に魔法陣が刻まれた。


「こっ! これが密約か! かっけぇな!」

事態をよく分かってないガヴォイセンはそう言う。


「契約完了ですね。ではガボちゃん。今からヴァリュレーの村まで行って僕の家族を助けてください」

俺は言った。


「なんでちゃん付け? てか! お前! オイラに命令すんな!」

ガヴォイセンは怒る。


「いえいえ僕は一切命令してないですよ。ただそう言う契約なだけです」

俺は言った。


「契約? なんのことだ?」

ガヴォイセンはよく分かってないみたいだ。


「さっき契約したじゃないですか! それでお互いの胸に魔法陣が刻まれましたよね?」

俺は言った。


「確かに……契約したな。うん」

ガヴォイセンはよく分かってないようだった。


「ですから僕が命令するんじゃなくて、契約が命令するんですよ。ガヴォイセン様もちゃんとした大人だから分かりますよね?」

俺は聞いた。


「バカにすんな! それくらい分かるわ!」

ガヴォイセンは言う。


「では僕の妹を助けないといけないのも分かりますよね?」

俺は聞いた。


「うん! もちろんだ! だってそう言う契約だからな!」

ガヴォイセンはそう言った。


「ガヴォイセン様! 正解です! 流石! ではヴァリュレーの村はここから東です! ちなみに妹の名前はルイーズ・シャリエです! では! いってらっしゃい!」

俺は窓を開けながら言う。


「しょうがないな! お前に命令されたんじゃ無くって。契約されただけだからな! じゃあ! 行ってきます!」

そう言ってガヴォイセンは夜の空に飛び去った。


夜空を見上げる俺。するとポンっと俺の肩に手が置かれた。

「クロードお前、詐欺師でもやってたのか?」

ミラーカが俺に聞いてきた。



次回はざまぁ展開になります。見たい方モチベに繋がりますので是非フォロー。ハート。レビュー。★お願いします!

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