ざまぁ展開 元パーティーの目線 ビクトリアの末路



シドは考えていた。


俺はエリートギルド『天空の大鷲団』のシド・ウォールデンだ。貴族であるウォールデン家の長男。生まれながらにして、才能、美貌、人望、そしてそれを全て備えてもまだ飽き足らない欲望を兼ね備えて生まれてきた。


エリート中のエリート。そんな俺がたった一度の失態で全てを脅かされそうになっている。目の前にはドラゴン。全身に火傷を負っている。ドラゴンは俺を決死の眼光で睨みつけている。


ここはオイゲンシュタット城の中庭。主人公であるクロードが使い魔であるブラックドラゴン、ガヴォイセンを空に放った数時間前。同じくブラックドラゴンであるアンシルヴァンドは城を急襲していた。国王に説明を求めるためだ。


つまり、これは脅しだ。シドは思った。交渉と言っても実質脅迫。剣を喉元に突き立てられた状態での話し合い。


確かに宮廷内にも超一流の戦士や魔術師たちがいる。いずれもレベル5〜レベル6の高レベルの兵士たちだ。


その兵士たちがシドの後ろに控えていた。交渉が決裂したときにドラゴンと戦うためだ。


だが、そうなった場合はほぼ全滅だろう。目の前にいる魔力の塊であるブラックドラゴン。これは神器なしには倒せない。だが、ここに神器はない。その使い手もここにはいない。すなわちドラゴンとの交渉が決裂したら俺たちは全員死ぬということだ。だから後ろに控えている兵士たちは虚仮威しにすぎない。


「ゴオオオオオオオ!!! オオオオオオ!!!」

ドラゴンは犬のように遠吠えした。城の壁が震える。宮廷内の役立たずの召使いどもが役にも立たない悲鳴を上げている。まったく本気であいつらを餌にしてやりたい。


「学者! アンシルヴァンド様が仰っていることを説明しろ!」

シドはそう言った。


「はい……古龍の中の古龍。伝説の黒龍して偉大なお方アンシルヴァンド様がおっしゃいますには……」


シドは学者のこの長台詞にイライラする。この主語の長さは本当に必要なのだろうか。学者はドラゴンに最大級の敬意を払うために絶対に必要だと言うが……


「兄をどこにやったか説明しろと仰ってます」


と学者は言った。シドは焦る。そんなもの知るわけがない。確かにブラックドラゴンに餌として冒険者を食わせる約束はした。だが、兄であるガヴォイセンをどこにやったか? 知るわけがない。


「只今調査中です。そう答えろ」

俺は学者にそう告げた。


「はい。ではグオオオオオオオンンン!!!! ゴッゴッ! ゴォーーー!!」

と学者が龍語でアンシルヴァンドに話す。傍から見たら危ない奴にしか見えないが学者は真剣だ。


「グオオオオオオオ!!!」

アンシルヴァンドは叫んで答える。


「なんて言ってる?」

シドは聞いた。


「私を焼いたあの男は誰だ! と聞いています」

意味が分からない。男? 人間のことか? そもそも人間が神器なしにブラックドラゴンにダメージを与えられるハズは……まさか魔族か? ますます意味が分からない。


「只今調査中ですと答えろ」

シドは言う。


「しかし! そのような答え方ではアンシルヴァンド様がお怒りになられます!」

学者は言う。


「良いから言え! 女のヒステリーなど聞き流せ!」

シドは言う。


「はっはい! グオオオオオオオ!!! オオオオオオ!!! ゴッグオオオ!!」

学者が言った。


「クオオオオオオオオオ!!! オオオオオオ!!!」

アンシルヴァンドは叫ぶ。


「シド様。アンシルヴァンド様はこの火傷の治療としてエリクサーを1000個ほど持ってこいと仰ってます」

学者は言う。


は? え? は? エリクサー1000個? なにを言ってるんだこいつは。デタラメな通訳じゃないのか? あの人間が飲めばどんな怪我も治すと言われているあの秘薬! 世界樹から抽出される樹液で精製されるあの秘薬! 王族でもありとあらゆる権力を使ってやっと一瓶手に入れられるか手に入れられないかと言われているあのエリクサーを1000個? このアホドラゴンの脳内はどうなってるんだ!


シドはキレそうになる。


「シド様なんとお答えしたら……」

学者がシドに聞いてくる。


「必ず用意すると答えろ」


「えっ? エリクサーなど、どこに……」

学者は言う。


「良いから言え! それらしき瓶に犬のションベンでもなんでも入れておけばいいんだ! このバカには気付かん! 早く言え!」

シドは怒鳴った。


「で、では! グオオオオオオオ!!! オオオオオオ!!! オオオオオオ!!」

学者が叫ぶ。


「クオオオオオンンン!!」

ドラゴンが叫ぶ。


「なんだって?」

シドは聞く。


「お、怒ってます! 犬のションベンなんて入れるとは何ごとだ! と」

学者は震える声でいる。


「お前バカか! それは通訳しなくていいんだよ! 訂正しろ!」

シドは怒鳴る。


「ったく! どいつもこいつも! ドラゴン一匹にビビっちゃってさ!」

ビクトリアが叫ぶ。全員一斉にビクトリアを見る。


あのバカ女……こんなとこに出てきてなにがしたいんだ……シドは思った。


「本当! ビクビクしてさ! 男らしくない奴らばっかりだね! あんたら見てるとクロードを思い出すよ!」

ビクトリアはシドの後ろで控えていた兵士たちに言う。兵士たちはお互いに顔を見合わせる。


「言われたことしか出来ない。あのバカクロード! 置いてきて正解だった! あのバカさぁ! 昔! ゴブリンの赤ん坊を助けろって言うんだよ! 幼いうちから人に慣れさせておけば人を襲わなくなるって。もうあたし腹が立っちゃってさ! あのクロードの目の前でそのゴブリンの赤ん坊を殺しちゃった! そしたらあのクロード泣いてんの! バカでしょ! あいつ……ギャハハハハハハ」

とビクトリアは笑いだした。と思ったら!


バチーーーン!!


笑ってる最中にドラゴンの尻尾の一薙ぎでふっ飛ばされるビクトリア。ドゴーーン!ビクトリアは壁に打ち付けられた。


「あ、あ……」

一瞬にして致命の一撃を食らうビクトリア。


「あ、あんたなんてね! この転移魔法で……あっ……手が……」

ビクトリアの腕は折れていた。曲がってはいけない方向にプラーンと曲がっていた。腕がいや、全身の骨が粉々に砕けていた。


「うそ……転移魔法が使えないじゃない……」

壁に貼り付いていたビクトリアは地面にドサッっと倒れ込む。


「助けてよ……シド」

ビクトリアはシドの方を見る。だがシドはビクトリアから目をそらした。


「ゴオオオオオオオオ!!!」

アンシルヴァンドは叫ぶ。


「こっ! この女を人質にする! 助けて欲しかったら必ずエリクサーを持って巣穴まで来い! 明日の日の出までに!」

学者はそう通訳する。するとブラックドラゴンのアンシルヴァンドはビクトリアを口に咥えた。


「グフッ!」

血反吐を吐くビクトリア。


そして言った。

「ねぇ! 私女の子だよ? ねえ! なんでみんな見てるだけなの? 私女の子なのに! これだけ頑張ったんだよ? みんな男なのに! ただ見てるだけじゃん!」


ビクトリアは兵士たちにそう言った。すると兵士たちは互いに顔を見合わせた。そして兵士たちはワハハハと笑いだした。


「えっ?」

驚くビクトリア。


「知らねーよ! お前が勝手に突撃したんだろ?」

「バカ女。なにが女の子なのにだよ! 都合のいい時だけ女ぶるなよ。クソ女」

「人のことをよくも情けないとか言ってくれたな! さっさと死ねよ!」

「こいつ前から気に入らなかったんだよな。ブスのくせにさぁ! 自分のこと美人だと思ってる感じがさ」

「そうなんだよな。周りが気を使ってお世辞を言ってるだけなのにな!」

「ゴブリンの赤ちゃんを殺すとか頭おかしいんじゃねぇか? それを自慢気に話すとか。死ねよゴミ女!」


城の兵士たちから罵声を浴びせられるビクトリア。

城の兵士たちからよっぽど嫌われていたようだ。それもそのハズ。ビクトリアはよく兵士たちを全裸で寒空の下でほふく前進をさせていた。兵士が血と泥まみれになるのを見て笑っていた。ビクトリアは真正の異常者だった。だからビクトリアに同情するものなど誰も居なかった。


「うそ……みんな! なんでそんなこと言うのよ! みんなは私を守らないといけないじゃない!」

ビクトリアは叫んだ。

まだまだざまぁ展開続きます。

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