魔王術を実際に使ってみたら…なんだこりゃ!

チュンチュン……


「これが魔王かニャ? どう見ても人間に見えるけどにゃ」

声が聞こえる。俺は瞳を開けた。目の前の人型の……ん? ネコミミ娘が見える。


「おはようさんにゃ。魔王様のお目覚めにゃ」

しゃがみ込んでいるネコミミ娘は頬杖をつきながらニコッっと笑った。


「おはよう……」

俺は回らない頭で返答をする。


「じゃあ一緒に来てほしいニャ。魔王様」

ネコミミ娘がそう言う。


「?」


「え? 誰キミ?」

俺は聞いた。


「嫌だニャ。ミュゼルだにゃ。魔王さまミュゼルのこと知ってるニャ」

自分のことをミュゼルだと言ったネコミミの少女がそう言って笑う。


「んーー……」

ミラーカが寝言を言った。するとバッ! っとネコミミ娘のミュゼルは窓から飛び出してそのまま消えた。俺は呆然とする。


「えええええええええ!!!! 今の誰?!!」

俺は驚く。


「どうしたんだ。クロード。なにかあったのか?」

ミラーカは俺の胸の上でそう呟く。


「いやなんでも……えええええええええ!!!!」

気がついたら俺の胸でミラーカは寝ていた。まるで朝チュン後のカップルのようにミラーカは俺に体を絡ませていた。



宿屋の一室。俺は床に座り、魔王術を自分で確認していた。確か今俺が使えるスキルは


マテリアライズ……魔力の物質化

マジカライズ……魔力の取り込み?

ファミリアライズ……ミラーカと魔術回路を合わせて発動したスキル。アーティファクトを使い魔にした。


それと自動回復と光・熱耐性 か


「これをどうやって応用するか……」

俺は確かめる。今までは、ほとんど魔法効果のない物質を生成出来るのみだった。出来たとしてもスコップレベル2くらいのちょっと掘りやすくなったスコップを作れるくらいだった。それでも結構重宝がられたんだよな。時間をかけて船を作ったり、アーティファクトの部品を一時的に代替したり……


まぁ戦闘向きではなかったが……俺はシドに言われたパワハラの数々を思い出し、思わず頭を振った。


ミラーカは朝食を買ってくると言って部屋から出ていった。俺はそのスキに自分の能力を確かめていたと言うわけだ。


今までは物質を生成出来ると言っても一時的な生成ばかりだった。つまり、スコップを作っても一時間くらいで消えるレベルのものだった。まぁそれでも充分役に立っていた。永続する、つまり、術者が魔力を送らなくても存在し続ける物体を生成することはかなりの魔力量を使う。昔の俺のレベルでは相当難しかったが…さてレベルアップした今では一体……


「マテリアライズ……やってみるか」

俺は両手に意識を集中させる。作るのは一緒に同行してるヴァンパイアロードのミラーカの彫刻だ。両手の間から光が産まれてミラーカの親指くらいの大きさの彫刻が完成する。


「おっ! 出来た! 凄い!」

良く出来てる。二頭身の石で出来たミニ、ミラーカだ。本当に今から動き出しそうなぐらい。服装も髪型も瞳の形もそっくりだ。明らかにマテリアライズの精度が上がっている。


「よしっ! もう1個作ろ」

俺は独り言を呟いていくとまた両手に魔力を集中した。また出来るミラーカの彫刻。

「おほっ! すっげぇ!」

俺は独り言を言う。


そんなこんなで俺はひたすらミラーカの彫刻を使った。10個くらい作っただろうか。多く作られたミラーカの彫刻はまるでチェスの駒だった。しかし二頭身で作られたミラーカは可愛い。あのミラーカのふてぶてしい態度の特徴がよく捉えられていた。俺はミラーカの彫刻を自分の手に取り観察した。


「コラッ! ベタベタ触るな!」

ミラーカの声が聞こえた。えっ? 俺は思わず後ろを見る。誰もいない。部屋には俺一人だった。


「なにをしている離せ!」

俺は手に取っている彫刻を見る。すると俺が作った二頭身のミニミラーカは俺を睨んでいた。


「うわああああ!!!」

俺はミラーカの彫刻を放り投げる。その彫刻はカコン、カコンと音を鳴らして床に転がった。


まさか? 俺が作った彫刻が喋った? 俺が放り投げた二頭身のミラーカは自分でムクリと起き上がると、また俺を睨んだあと自分で歩きだした。


ガヤガヤと騒がしい。

「!」

俺が作ったたくさんのミラーカの彫刻がガヤガヤと喋っていた。


「ふざけるな! どうしてボクがこんなに居るんだ」

「紅茶はまだかね」

「クロード。君の血を吸いたい」

「食事はまだかね」


ミラーカよりも少し高い声で口々に喋りだす10個のミラーカの彫刻。


「うわあああああああ!!!!」

俺は叫んだ。


「どうした? クロード」

ミラーカの声が聞こえる。俺は後ろを振り返ると等身大のミラーカが買い物袋を抱えてそこに立っていた。


「おおお!! 喋ったぁ!!」

俺は驚く。


「なにを驚いているんだね。クロード」

等身大のミラーカは….…あっ! これは本物のミラーカか。ミラーカは買い物袋をベッドに置くと俺が作ったミラーカ彫刻の数々を見た。


「なにをやっている。魔王術は使うなって言っただろ? 力を制御出来てないじゃないか」

ミラーカは言う。


「制御?」

俺は聞く。


「ほら。自分のお尻を見てみたまえ」

ミラーカが言う。


「?」


俺はミラーカの言うとおり自分のお尻を見た。

「!」



俺のお尻から獣のような尻尾が生えていた。その尻尾はまるで犬のように俺の意志とは関係なく左右にブンブン振られていた。その様を見て俺は


「うわああああああ!!!」

と叫んだ。


すると俺が作ったミラーカの彫刻も一緒に一斉に

「うわああああああ!!!」

と叫ぶ。


俺の身に一体なにが起こったんだ?



まだまだ続きます。


気になる方はハートフォロー★お願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る