ベアトリスと偶然の再開
「クロエ。大丈夫だよ。しっかりと休んでおいて」
俺はクロエに優しく言った。
朝になっていた。俺はクロエの部屋に食事を届けにいっていた。
「申し訳ございません。クロード様。なにからなにまで」
クロエは申し訳なさそうだ。
「大丈夫だよ。お互い様だよ。クロエには無理させたからね。なにか欲しいものとかない? 市場に買いに行くよ」
俺は笑う。
「あの……クロード様。昨日ミラーカとなにがあったんですか?」
「えっ? 普通にナジャバの実を探しに行っただけだけど、あ! ゴブリン大量に倒したな! それくらい」
俺はニコッっと笑って答えた。
「はぁ……無自覚なんですね。クロード様は。そうやって乙女心を弄ぶのですね」
クロエはため息をつく。
「クロード様。我々の宿願をご存知ですか?」
「えっ? 魔界の英雄を産むことだっけ」
「そうです。それではそのご準備を初めてください」
「えっ?」
「アレクサンドラ様と結ばれてください。それがご準備です!」
「えーーーー!!! 婚前交渉?!! それいいの?」
「大丈夫です。もう既成事実を作ってください。アレクサンドラ様も待ってます。少しくらい強引にいかないといつまでも御子が産まれませんから」
「そんな強引って……アレクサンドラ怒りそうだからな」
「大丈夫です!! アレクサンドラ様は意外と強引な殿方が好きなのです!!」
クロエは親指を立てて俺に応援する。
ほんとかなぁ……でもアレクサンドラがもし望んでるなら……少しくらい強引な方がいいのか。
「分かった。考えてみるよ」
俺は部屋を出た。
◇
「クロード様。アレクサンドラ様。本日はこのハックダートの村は過ぎ越しの祭日です。村の若いものが興奮して危険ですのでどうかこの屋敷に留まるようお願いします」
この村の首長が言う。
「危険っていうのは?」
「よく喧嘩が起きるんです。この村はホビットとリザードマンが両方住んでいます。考え方や宗教がまるで違うのです。その両方の種族が集う祭の日ですので」
「なるほど」
「えーー! 行きたい!!」
アレクサンドラが叫ぶ。
「ねぇ! クロード行こうよ! 絶対楽しいよ!」
アレクサンドラが俺にそう告げる。
「でもアレクサンドラ。喧嘩に巻き込まれたら嫌じゃん?」
「えーー!! クロードだったら絶対喧嘩に勝てるじゃん! なんで私達が部屋にいないといけないの!!」
アレクサンドラは怒っている。
「それでは!」
パンパンと首長が手を叩いた。
「腕利きの用心棒をご用意します。どうぞご活用してください」
と言うと小柄な少女が現れた。
あ! あれはアルベルトの学校で俺に喧嘩を売ってきたベアトリス!!
「始めまして。お客人。どうぞよろしく。私ベアトリスと申します」
とベアトリスはスカートを少し上げ挨拶をした。
俺と目が合うと
「むぅ!」
と俺を睨んだ。いや怒りたいのは俺の方だ。
「彼女がこの村一番の使い手です。ベアトリス。お客人を守ってほしい」
「はい。かしこまりました」
◇
俺とミラーカ。そしてアレクサンドラとベアトリスの四人は過ぎ越しの祭の様子を楽しんでいた。
様々な催し物、踊ってる人。出店。などがあった。
「やはりリザードマンが多いな」
俺は呟く。多くの人々の群れ。やはりリザードマンが多かった。
「そりゃそうだろ。ここはリザードマンの村なんだから。ちゃんと三人とも付いてこいよ。俺が守ってやるからな」
ベアトリスはなぜか男みたいな喋り方だ。ていうかベアトリスはフリフリのゴシックロリータみたいな格好をして男みたいな喋り方をしてる。だから違和感が凄い。
「どうしたんだ? その格好は?」
俺は聞く。
するとベアトリスは俺の前で一回転して見せた。ヒラヒラのスカートがめくれそうになる。
「こうすると男どもが油断すると思ってな」
と言ってベアトリスはナイフを構えるポーズを取る。
「どうだ。俺も中々可愛いだろ? えっ? 言ってみてもいいぞ。クロード」
からかうようにベアトリスは言う。
「似合ってるよ。ベアトリス」
俺は言う。
「あっ! お前! そんな直球で!」
といきなり顔を赤らめるベアトリス。
「って、あれ?」
と俺が振り返るとアレクサンドラとミラーカはいきなり居なくなっていた。
「えっ? どこに」
俺は探すがリザードマンの巨体が邪魔して見えない。
「あっ! あそこだ! 出店で買い物してるぞ!!」
ピョンピョンしながらベアトリスは言う。
「えっ? どこ?」
俺は見るがまったく見当たらない。
「ほら! あそこ!」
ベアトリスが叫ぶがやはり俺には見つからない。
「はぁ……見失ったな。お前。あの女の彼氏なんだろ? ちゃんと手ぐらい繋いどけよ」
乱暴な口調でベアトリスは言う。
「しまった! でもミラーカがいるから大丈夫か……」
「さてと、ふたりきりになったな」
と言ってベアトリスは俺のお尻を触ってきた。
「えっ? おい! なにするんだ! ベアトリス!」
俺は叫ぶ。
「いいじゃないか。減るもんじゃないし。しかしお前なかなか強かったな。ほら筋肉を見せてみろ」
と言ってベアトリスは俺の腹筋を触ってくる。
「ちょっとまて! セクハラだぞ!」
俺は言う。
「いいじゃないか! ほら触らせろよ。俺に」
なんだかベアトリスは俺の太ももも触ってくる。
「おい! あいつベアトリスじゃないか!」
「なんだあの格好!」
「オイ! ちょっと話しかけにいこうぜ!」
と下品な男の声が聞こえた。
すると3匹の巨体のリザードマンが俺の前に現れた。
「なぁ! お前。ベアトリスだろ。お前俺らのクラン抜けて何やってんだ?」
とリザードマンAが言う。
するとベアトリスはビクッっとしたように動かなくなった。まるで人形のようになってしまった。よっぽど怖いのだろうか。
「あぁそうだよ!! なんだよその変な格好! お前俺らのクラン入ってた時散々人に言えないようなことをやってたよな。強盗に万引きに置き引き。そんなお前が元に戻れると思うなよ!」
リザードマンBが言う。
「そうだテメェが!」
「オイ! 俺の友人になんて口のきき方をしてるんだ! お前ら!」
俺は怒鳴る。
ベアトリスはガチガチに震えている。
「あぁ! なんだテメェは!」
リザードマンAは俺に顔を近づけてくる。
俺は一歩も引かない。
「悪いが俺は首長の客として屋敷に招かれている。この意味は分かるな?」
俺は言う。
「えっ? なに? 首長?」
「おい! そうだ! こいつヤベえぜ! こいつらが首長の屋敷に出入りしてるの俺見たよ」
リザードマンCが言う。
「チッ! そっか面倒くさいことになりそうだな。オイ! 行くぞ!」
と言ってリザードマンたちは歩き出した。ベアトリスは俺の腰を持ってガクガクに震えている。
「大丈夫か。ベアトリス。震えているぞ」
俺は比較的優しい口調で言う。
「あ……あ、うん」
ベアトリスは恐怖で顔を青ざめている。
「あいつらとなにかあったのか?」
ベアトリスはガクガクと首を縦に振る。
「じゃあ怖いなら俺の体を掴んでいてもいいぞ」
ベアトリスは恐怖のあまりガクガクと震えながらうなずく。
◇
しばらくのちベアトリスは落ち着いたようだ。それでも俺の体にしがみついている。
「ベアトリス。守ってくれるって言ったのにな」
俺はふざけるように言った。
「ごっごめん。クロード」
この反応。昔のクランでよっぽど怖いことがあったんだろう。
「大丈夫だよ。ベアトリス。少し落ち着いたか?」
俺は聞く。
「ありがとう。クロード」
俺はひねくれたベアトリスのその言葉になんだか胸が熱くなった。
「いいって気にすんな!」
俺はベアトリスの頭をクシャクシャに撫でる。
「うわぁーーー。もう! 子供扱いはやめろ!!」
と言うベアトリス。
「でも、俺のことを仲間だって言ってくれて嬉しかったよ。クロード」
ベアトリスはそう言って俺を見つめた。
なんだか俺に対する態度が軟化している。
「あぁ。それは本当だからな」
俺は言う。
「あっ! クロード!」
出店で買った食事を頬張りながらアレクサンドラが俺に手を振った。
「姫様も来たことだし合流するか」
俺はそう言う。
すると
「もう少し二人きりでも良かったのにな」
と言ってベアトリスが俺の服を握りながら言った。
?
どうしたんだ。ベアトリス。
俺たちは姫様と合流した。
◇
少しでも面白かったら
フォロー。
ハート。
★お願いします!
新作書きました。
セクハラ冤罪をかけられ追放された魔法教師。元教え子の【聖女】と再び出会い、最強スキル【魔王術】に覚醒し無双する。聖女から溺愛されながら幸せな日々を送ります
https://kakuyomu.jp/works/16816700428241467918/episodes/16816700428241495867
フォロー。評価。お願いします!!
こっち側の主人公も魔王術を使います。
ドラゴンのところに置き去りにされた俺がドラゴンの火に焼かれながら【魔王術】に覚醒する!魔族の姫君と結ばれ魔界の英雄を産む運命らしい。元いたギルドは俺を嫌っていたリーダーが逆に追放され消滅したらしい 水ManJu @mizumanjuu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ドラゴンのところに置き去りにされた俺がドラゴンの火に焼かれながら【魔王術】に覚醒する!魔族の姫君と結ばれ魔界の英雄を産む運命らしい。元いたギルドは俺を嫌っていたリーダーが逆に追放され消滅したらしいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます