ミラーカとの夜

「ふぅ結構寒いな」

ミラーカが俺に体を寄せてくる。


「ミラーカ……ちょっと近いんだけど……」

俺は言う。


「近くしてるんだから当たり前じゃない」

ミラーカは怒ったように呟いた。いや怒りたいのはこっちだよ。


「ミラーカ。俺はアレクサンドラが好きなんだ」

俺はミラーカに告げる。

「うん……知ってるよ」

ミラーカがまたボソリと呟いた。


「だから……俺の勘違いかもしれないけど……ミラーカと恋人にはなれない」

俺ははっきりと言った。


「えっ? なんの話をしてるんだ? キミは?」

ミラーカが怒り出す。


「えっ? 違う? そういう話じゃなかった?」

俺は挙動不審になった。


「だーーれがぁ! ボクみたいな高貴なヴァンパイアが人間ごとき好きになるか! 勘違いするのも大概にしろ!」

ミラーカは俺を人差し指で指差して怒り出す。


俺は思わずホッとした。安心する俺。


「あっ。そっか。そうかゴメン。勘違いしてた。そりゃそうだよな。ミラーカと俺じゃ……ゴメンゴメン。勘違いしてた」

俺は笑顔で笑う。


「あっ……うん……」

ミラーカは俺の笑顔を見て暗く沈むように言った。


「よしっ! じゃあナジャバの実だな。市場で見つかるといいな」

俺は笑顔で言う。


「うん。そうだね……」


俺たちは市場についた。リザードマンの店主が客引きしている。


「へい! いらっしゃい! いらっしゃい! 色んな魚が安いよ! 安いよ!」

店主は俺たちを見つけると声を張り上げる。


「お! 人間と吸血鬼のカップルか。イイねぇ。若いのって。よし! おじさん本気になっちゃう! 二人の前途を祝して大割引! 普段300クローネのこの魚! 200クローネでいいよ! さぁ! 買った! 買った!」

とリザードマンの店主がテーブルを叩きながら言う。


「え? あっ……カップルって」

ミラーカは立ち止まる。

「ミラーカ。果物を探しに来たんじゃ……」

「寄り道だ。それが楽しいんだろ」

ミラーカが子供みたいな笑顔で言う。


「さぁ! めでたいこのお魚は子沢山のお魚! この魚を食べるとなんと! 子々孫々まで続く子沢山! あそこの幸せそうな家庭もそこの幸せそうな家庭もみんな食べている。さぁ! どうだ! 200クローネ! 持っててくれ!」

おじさんが叩き売りをする。


「クロード。この魚を……」

ミラーカが魚を指差す。


「ミラーカ! ナジャバの実を買いに来たんだろ?」

俺は怒ってミラーカの手を引く。


「あっ!」

ミラーカは驚いたように俺についてきた。


「クロード。怒ってるのか?」

ミラーカは申し訳なさそうに言う。


「怒ってないよ」


「ごめん……クロード」


俺はミラーカに向き合い言った。

「なんだかミラーカらしくないぞ。今日なんだか変だぞ。いつもだったら俺を小馬鹿にしたような態度なのに。さっきも俺とデートに行くとか言って。ただの買い物なのに」

俺は不満をぶちまけた。


「そうか……ゴメン」

ミラーカはうつむいて謝る。本当にどうしたんだミラーカは。


「いいよ。ほら行こう」

俺は歩き出す。


「クロード! てっ! 手!」

ミラーカは焦るように言った。

「て?」

俺はミラーカに手を差し伸べるとミラーカは俺の手を握ってきた。


ミラーカは蒸気が出そうなほど顔を赤くしている。

「ほっ! ほら、人通りが激しいから!! はぐれちゃうから!!」

ミラーカは慌てている。えっ? ミラーカは子供じゃないのに……いやそりゃはぐれるのは嫌だけどさ。


「そうか……いくか」

俺とミラーカは恋人のように手を繋いで歩く。ミラーカ言ってたよな。俺には気がないって。思い上がるのも大概にしろって。


だったらこれも違うのだろう。ヴァンパイアロードの文化としては手を繋いで歩くのが普通なのか? まぁヴァンパイアロードは貴族的なところがあるからな……その影響かも。


「すいません! ウチではナジャバの実は置いてないんです。村外れの店なら売ってるかも」


「そうですか。ありがとうございます」

別の店に聞いたが空振りだった。


俺とミラーカはまた暗い道を歩く。


「クロード。今日が最後なんだ」

ミラーカがボソリと呟いた。


「最後って?」


「こんな風に過ごせるのは。キミはアヴァロンに行くとすぐに姫様と式を挙げるだろう」

ミラーカがボソリと呟く。


「そうなるだろうな……」

おそらくそうなのだろう。魔界の英雄を産むということらしいからな。国の存続に関わることだからすぐにでも挙式をされるだろう。


「ボクも魔王を見つけれれた褒美として太守として任命されるだろう」


「うん」


「だから、こんな風に二人で歩くなんてもう出来ない」

ミラーカは言う。俺はミラーカを見た。なんだかんだ寂しげだ。


「そっか」

俺はミラーカに声をかける。


「だからボクと過ごせる最後の日を大事にしてくれよ」

ミラーカは俺に向き直り言う。


「そっか。分かった」

俺は笑顔で答えた。



新作書きました。



セクハラ冤罪をかけられ追放された魔法教師。元教え子の【聖女】と再び出会い、最強スキル【魔王術】に覚醒し無双する。聖女から溺愛されながら幸せな日々を送ります


https://kakuyomu.jp/works/16816700428241467918/episodes/16816700428241495867


フォロー。評価。お願いします!!


こっち側の主人公も魔王術を使います。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る