ざまぁ展開⑦ そこまでやるか

ピッ……ピッ……


音が鳴り響く。


しまった! 忘れていた! 国王が言っていた。これは悪事を行うと爆発する……


「分かった! 1万クローネだな。渡す……」

ピーー!!


ボゴン!!


えっ? なんだ。よく見ると俺の右腕が地面に落ちていた。


俺の右肩から鮮血がほとばしる。


俺は腕を飛ばされていた。


「うっ……あ……あ!!!」

あまりにも痛すぎて声すら出てこない。俺は膝をつく。


「ありがとうございます。いただきます」

と言うとリュカの母親は落ちている俺の右腕から財布を取りどこかに消えた。


「あっ……あっ……」

俺は痛さのあまり倒れ込む。


「どうしたんですか? シドさん」

とシドに声がかかる。


えっ? あっ? シドが見上げるとそこにはコルネリオが居た。


元天空の大鷲団のコルネリオ。錬金術師の小柄なコルネリオだ。


「助けて……コルネリオ……助けてくれ」

シドは言う。


コルネリオはニヤニヤ笑ってシドがのたうち回っている様を見ている。


「てか、シドさん。どうしたんですか? 腕なんて落としちゃって」

コルネリオはニヤニヤしながらシドを見ている。


「頼む……教会に……教会に連れて行ってくれ」

シドは泣きながら言う。


「ん? 命令形ですか? 命令形だったら無理ですね」

コルネリオは立ち上がりシドから離れようとする。


「あっ! ちょっとまってくれ!」

シドは必死で呼び止める。


「頼む! なんでもするから! 教会まで連れて行ってくれ」

シドが言う。


「分かりましたよ。僕にも人の心はありますからね。じゃあシドさん行きますよ」

と言ってコルネリオはシドの爆発して地面に落ちている右手を拾って歩き出した。


「違う! そっちじゃない! こっちだ! 本体の方!」

シドは泣きそうになりながら言う。


「あぁ。そうでしたね」

とコルネリオは言うとシドの千切れた腕をポイッっと地面に捨てた。


「ああああ……」

シドは非情にも捨てられた腕を見てうめく。


「コルネリオ頼む。その腕は教会に行って付けてもらわないといけないんだ! だからそんな……」

シドはコルネリオに言う


ガウッ! ガウガウッ! となんと野犬がシドの千切れた腕に噛み付いている!


「うおっ! この馬鹿犬! こいつ!」

シドがそう言って犬の頭を叩こうとするも


バウッ! バウッ! バウッ!

野犬が吠えまくってなかなか叩けない。


コルネリオはギャハハと腹を抱えて笑っている。


するともう一匹の野犬が現れてシドの千切れた腕に噛み付いた!


バウッ! バウッ!

ウォン! ウォン!


シドの腕の所有権を巡って争う野犬たち。そしてそれに参戦するシド。


「おい! やめろ! やめろ!」

シドが叫ぶ。


バウッ! バウッ!

ウォン! ウォン!


お互いに噛み付いてシドの腕を離そうとしない野犬たち。


最後には二匹の野犬はシドを避けるようにシドの腕を二匹で咥えてどこかに走り去った。


「ああ……」

呆然とするシド。腹を抱えて笑っているコルネリオ。


「さぁ教会に行くんですよね。お付き合いしますよ」

コルネリオは言う。



「片腕の治療代2万クローネです」

教会の神父がそう言う。


シドは教会に着いた。神父から2万クローネの支払いを要求されている。もちろんそんな金はない。


「コルネリオ……」

シドはコルネリオに呼びかける。


コルネリオは手伝えないと言わんばかりに頭を振っている。


「申し訳ないですが……お金が無い方には神々の祝福がもたらされることはありません。どうぞお引取りください」

神父が言う。


「そっ! そんな! 神父さん!」

「どうぞ。お引取りお願いします」


と言って神父はシドを教会から追い出した。


「コルネリオ頼む! お前の作ってくれたポーションでなんとかしてくれ!」

シドが教会前でコルネリオに懇願する。


「えーー僕のポーションあれ試作品ですよ。それにあれ結構材料費高いんですよね」

コルネリオが言う。


クソっ! どうしたら。シドは思った。


シドはふと物乞いが地面に座っているのが見えた。物乞いの目の前には入れ物が置いてあり、そこには道行く人々から恵んでもらった金が入っていた。


「おいっ!」

シドはその物乞いに詰め寄る。


「その金を渡せ!」

と言うとシドはその物乞いから金を強奪した。


「ちょっとシドさんなにやってるんですか?」

コルネリオが言うがシドは全く気にしない。


「お前もだ! 早く渡せ!」

と言いながらシドは物乞いから金を強奪する。


「なにをするんじゃ!」

怒る物乞い。


「いいから! 早く俺に金を渡せ!」


ピッ……ピッ……


「ひいっ!」

シド怯えた。いきなり首の円環から音が鳴った。駄目だ。これ以上爆発したら死んでしまう。


「ああああああ!!! 返すよ! お金返すよ!!!」

そう言ってシドは物乞いにお金を返し始めた。

すると……ピッ……ピッ……。……


首元から音が鳴り止んだ。


「はぁ……」

とため息をつくシド。


「おい! 止まれ! おまえ何をやっている!」

野太い声が聞こえる。シドはハッっと振り返るとそこに屈強な衛兵が立っていた。


衛兵はスラリと剣を抜いてシドにその切っ先を向ける。


「違う! 俺は!」

「お前! 物乞いから金を盗んでいたな! なんていう悪党! さぁ! 地下牢に入れ!」

衛兵は怒鳴る。シドはコルネリオに助けを求めたがコルネリオはもうその場にいなかった。



「貴様の名前がシド・ウォールデン? ふざけるな! 貴族の名前を語りやがって!」

衛兵が言う。


「お願いだ! 国王からの密約があるんだ! クロードさんを探しに行かないといけないんだ!」

シドが叫ぶ。


ここは衛兵の詰め所の地下にある地下牢。シドはそこに連れてこられた。そしてシドは衛兵から尋問を受けていた。


「お願いだ! 密約があるんだ! 国王直々の! 頼む! こんなことをしてる場合じゃないんだ!」

シドが叫ぶ。


すると衛兵がシドの千切れて切れた腕のところをバシーーンと叩いた。


「つっ!」

「よく腕が千切れたのにまだ生きてるな。おい誰か手当てしてやれ!」

衛兵がそう言う。すると別の衛兵がシドの腕に布を巻いて止血してくれた。


「まぁ。こいつはもうすぐ出血で死ぬか、感染症にかかって死ぬだろう。とりあえず地下牢に入れておけ!」

衛兵がそう言ってシドは連れて行かれる。


「お願いだ! 助けてくれ! 国王に聞いてくれ! シドだ! シド・ウォールデンだ!」

シドはそう叫びながら連れて行かれた。


「あれ。本当ですかね。国王の密約の使者なら牢屋に入れるのは流石にまずいのでは」

「まぁ。一応確認しておくか」


衛兵たちはそう話し合った。



「おい! 入れ!」

シドは衛兵に連れていかれて地下牢に入れられる。ガチャリと閉められた扉。


「おい! なにするんだ! 俺をこんなところに入れるな!」

シドが怒鳴り声を上げる。

すると衛兵が持っていた剣の鞘でシドの顔をバコッ! っと突いた。


「あぁ!」

叫ぶシド。


すると衛兵はどこかに消えた。


「一体俺はどうすれば……」

シドは悩んだ。


シドが呆然としているとガチャリと衛兵が鍵を開けた。


あっ! 開放される! 俺が国王の密約を担ってると分かったんだ! シドは色めき立つ。


だが、その屈強な衛兵はいきなり甲冑とズボンを脱ぎだした。カチャ……カチャ……床に落ちる服と甲冑。


その男の衛兵は股間をむき出しにしている。しかもその股間はガチガチに勃起していた。そしてその衛兵は地下牢の扉をガチャリと閉めた。


えっ? まさか。シドは思った。


そしてその衛兵は言った。


「悪いな。これはここの牢屋での決まりごとなんだ。まずはこれを咥えてくれ」



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