ざまぁ展開 ① カシムの終わりの序曲



「シド様。ポーション1000個かき集めてまいりました!」

城の兵士がそう言う。


「そうかご苦労様。いい仕事だ。城下町の人々の反応はどうだった?」

シドはそう答えた。


「はっ! ポーションの強制徴収に戸惑う人々も多く、抵抗も激しかったです。ただ……」

兵士はそう言う。


「なんだ?」


「さすがに病院からの強制徴収は……医師から猛抗議をされました。これがないと死ぬ患者がいるんだ! と……」

兵士が暗い顔で言う。


「いや実にいい働きぶりだ。オイゲンシュタット城の兵士はそうでないとな。大事の前の小事だ。こんな時に病気になる方が悪い」

シドはそう言い放つ。


「……」

兵士は苦虫を噛み潰したような顔をする。


「おい。シド。グレートフォレストに向かうんだろ?」

カシムが声をかける。


「ああ。そうだ」


「どうしてまたあそこに戻るんだ?」

カシムが聞いた。


「あそこでなにかがあったのか。それを確かめる。カシム、コルネリオ、ジャムディ、サムソンは着いてこい」

シドが言う。


「あれ? マオさんやユイさんやエリスさん、あとアルディスさんの女性メンバーは連れてかないんですか?」

コルネリオは聞いた。コルネリオは天空の大鷲団の錬金術師だ。主に火薬を作ったり血清や薬作りに秀でているハーフエルフだ。小柄な男だった。


「あいつらはすぐピーピー文句言うからな」

シドが言う。


「よく言うぜ。あいつらシドのお気に入りだからだろ?」

カシムがサムソンにヒソヒソ声で話す。


「クラン内でのハーレム王のつもりだろ? あのバカ。面倒くさい仕事は全部俺らに押し付けるつもりだぜ」

サムソンも愚痴る。


「あはは……」

コルネリオはそれを聞いて苦笑いしたように頭を掻く。


「みんな! 行く前に僕が調合した薬を飲んでください。空は寒いですからね。耐冷の霊薬です」

そう言ってコルネリオはカバンから薬の入った試験管を取り出した。


「あっ! そうだ。そうだ。飲まなきゃな」

と言って全員耐冷の霊薬を飲んだ。


「よしっ! では行くぞ!」

シドたち一行はワイバーンに乗り込む。


「あのっ! 絶対に邪魔にならないから!」

侍女のリーシャはカシムに懇願する。


「分かったよ。だけど寒いから俺の後ろに乗りな」

カシムが言った。リーシャが言われたとおりに乗り込む。

「カシム。大好き。絶対に離さないからね」

カシムの後ろでリーシャがそう囁いた。


そして

「クイイイイイイイ!!!」

と奇声を上げながら飛ぶワイバーンたち。


シドたちはグレートフォレストに向かった。


数時間後


シドたち一行は一番最初にブラックドラゴンと戦ったグレートフォレストの丘陵地帯に来ていた。グレートフォレストはもうすっかり暗くなっていた。


「ううー寒かった!! 」

コルネリオがかじかむ手を息でハーーっと暖める。


「おい、誰か明かりを」

シドが言う。辺りは暗闇だった。


「じゃあ僕がトーチライトの呪文を使いますね」

と言ってコルネリオは手のひらから光の球を出す。それはフワフワ浮いてシドたち一行の辺りを照らした。トーチライト。ダンジョンなどでよく使う魔法だ。光で暗闇を照らすシンプルな魔法。


「……ん? なんですか? あの平地のところ。なにかが並んでいる……あれは……」

コルネリオは聞く。


「あれは……確かに冒険者たちがドラゴンに殺された場所……」

サムソンが言う。


「よし! あそこに行くぞ」

シドは言った。


シドたちは規則正しく並んでいる不審なオブジェの方に向かった。


「うわーー。怖いなぁ。昼間あんなのなかったですよね」

コルネリオは興奮気味で言う。


「あぁ。そうだな。しかしあれは一体……」

ジャムディは答える。


少し離れたところでシドたちがケラケラ笑いながら歩いていた。


「ったくちげーよ。なあ! サムソン」

「ギャハハハハハハ」

「お前ふざけんなよ! カシム」


目的地に向かう途中で


シド、カシム、サムソンの三人。ジャムディ、コルネリオの二人に自然に別れて距離を取って歩いていた。要するにおふざけ組と真面目組だ。


誰が決めたわけではないが、自然とこの組み合わせになっていた。


「まったく。大鷲団にジャムディさんが居てくれて良かったですよ。僕があのバカども三人に囲まれてたらうつ病になってましたよ」

コルネリオがシドたちを見つめて言う。


「あぁ……そうだな。それ分かるよ……」

ジャムディが同意した。


「でしょ? 僕ジャムディさんとはいいお酒が飲めると思ってたんですよ」

コルネリオはジャムディにそう言った。ジャムディは困ったような表情をして笑う。


そんな雑談をしながらシドたちは目的地に着いた。


「これは……」

シドは思わず声が出る。


トーチライトで照らされる辺り一帯。暗闇の中で等間隔に並ぶ剣と盾。それはクロードたちが想いを込めて作った戦死した戦士たちの墓標だった。


「だれだ……こんなことをした奴は……ここには死体が転がっていたはずなのに」

シドが呟く。


「墓標ですかね……これは……」

コルネリオは言う。


「は? なんだよ! コルネリオ! 墓標って! 意味わかんねーだろ!」

カシムが逆ギレしたように言う。


「それを調べに来たんだろ! バカカシム! 謎タイミングで逆ギレしてないで早く調べろよ!」

コルネリオは怒った。


コルネリオの怒った声を聞いてサムソンは鼻で笑った。


「クソッーなんだよあのチビ……」

カシムは困ったように言う。


「おい。喧嘩してないで早く調べてとっとと帰るぞ」

サムソンはそう言った。


シドたち一行は墓標を調べた。


長いので分割します。

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