えっ?こんなに報奨金が貰えるの?

「じゃあみんなはここで待っていて」

俺はアレクサンドラたちにそう言った。


アレクサンドラたちはコクリとうなずく。


俺は衛兵の詰め所に入った。この衛兵の詰め所は塔になっていて最上階の見晴らしから街が一望出来る仕組みになっていた。


しかもここは地下牢も兼ねておりここにバルドウィンたち黒龍団も投獄されているハズだ。


まさか俺も投獄される? 妙な緊張感を感じながら俺は詰め所に入った。


「あのーすいません。クロードですが。エリックさんは?」

俺は詰め所の衛兵に聞いた。


「エリック隊長ですか? どうぞこちらに」


すると俺は隊長室に連れて行かれた。コンコンとノックする衛兵。


「クロード様をお連れしました」

「入れ」


俺は中に案内され入る。そこには衛兵の立派な制服を着たエリックさんが居た。エリックさんが黒龍団に潜入捜査してた時にはひ弱な印象を受けたが、制服を着ると全く別人のように見える。


「それでは」

衛兵の隊員が部屋を後にした。俺とエリックさんの二人きりになる。


「申し訳ありません。ご足労いただいて」

エリックさんは言う。


「いえいえ」

謎の緊張感が俺を襲う。


「お呼び立てしたのは感謝を伝えたかったからです。バルドウィンを倒してくださって感謝します」

エリックさんは言った。


「あっ! はい」

俺は言った。


「実はあのバルドウィン中々のつわ者でして、実は我々が一番頭を抱えていたのがあいつなんです。あいつはもう既に衛兵を何人も殺しており、逮捕する際にうちのよりすぐりの衛兵が何人かほど殉職すると覚悟してました。それをまぁあんなにあっさり」

エリックさんは言う。


バルドウィンはそんなに強かったのか。そりゃそうか。一流の冒険者と一緒のレベル6だもんな。しかも筋力と速力がよく考えたらかなり強い。俺が魔王になったから麻痺してたが筋力32も素早さ40も中々のステータスだ。


「ありがとうございます。あなたのお陰でこの街に未亡人や父親のいない子供が生まれる悲劇を防げました。大変感謝しまふ」

エリックさんがそう言うと俺にお礼をした。


「ど、どうも」

俺は褒められすぎて照れる。


「これはバルドウィンの報奨金です。合計で50万クローネです」

と言ってエリックさんは金貨の入った革袋をドシンと机に置いた。


「50万クローネ!? 家が買えるレベルじゃないですか!」

俺は言う。


「バルドウィンば凶悪犯でしたので……多額の報奨金お渡しすることになってます。あともしよろしかったらこれを……」

エリックさんは小さな革袋を俺に見せた。


「こちらは白銀の大盾亭の黒龍団が溜め込んでいたツケの分になります。黒龍団が貯め込んだ金銀財宝から徴収しました。これを大盾亭の方にお渡しいただけますか?」

エリックさんは言う。


「もちろんです! もちろんです!」

俺はコクリコクリとうなずく。


「では。この受け取り書にサインを」

エリックさんは微笑んで言った。


「サインします! サインします!」

俺は喜んでサインする。


クロード・シャリエ



「それではお受け取りください」

そう言ってエリックさんは俺に金貨の入った革袋を手渡した。重い! メチャクチャ重い! だがこれは重くていい! 重いほうがいいのだ! これは!


エリックさんは俺がサインした受け取り書を見る。

「クロード・シャリエ様ですか。ですが、クロード様に一つだけ悪いニュースがあります」

エリックさんは言う。


「え? なんですか? 悪いニュース? なんですか?」

俺はエリックさんに食い入るように聞く。


エリックさんは手配書を出した。そこには俺の似顔絵とクロード・シャリエ の名前が書かれていた。重罪人! 生死を問わず!

と、その手配書には書かれていた。


「この手配書が我が詰め所にも届きました」

エリックさんが言う。俺は急速に青ざめる。


「この手配書が確かならば私は衛兵の職務を全うするためあなたを逮捕しなくてはいけません。この手配書に書かれた内容は本当なんですか?」

エリックさんは聞いた。


「違うんです。それは……」

俺はことの顛末を話した。シドにハメられたことも。それでいわれなき罪を押し付けられたことを。


エリックさんは黙って聞いていた。


「おそらくクロードさんの仰っていることが本当なのでしょうね。ですが、私も立場上この手配書を無視することが出来ません。この手配書は明日の夜明けに街に張り出します。ですので今はまだクロードさんは指名手配犯ではありません」

エリックさんは言う。


「エリックさん……」


「ですが、あなたが明日の夜明け以降もこの街に居た場合、我々は全力であなたを逮捕せねばなりません。どうか、そのような真似は避けていただきたい。あなたは我々と街を救った英雄ですので」

エリックさんは言う。


「……」


「クロードさん。この街での最後の夜をお楽しみください」

エリックさんはそう言った。


「……」

俺は無言になる。


俺は衛兵の詰め所から出た。


「どうだった? クロード。えっ? なにこのお金は?」

とアレクサンドラが俺に聞く。


俺はショボーンとしながらお金を両手に持っていた。


「あぁ。これ報奨金だよ。バルドウィンの」

俺は引きつりながら言う。


「でも全然嬉しそうじゃないね。クロード。なんで?」

とアレクサンドラは無邪気に聞いてきた。


「……!」


俺はアレクサンドラに話すべきだろうか。俺が指名手配になっていることを。いや駄目だ……言えない。嫌われたくない。アレクサンドラがどんな反応をするか分からない。この無邪気なアレクサンドラ無邪気な憧れが変わるのが恐ろしい。


「うん。エリックさんの話が長くってさ。本当にありがとうございます! 本当にありがとうございますってメチャクチャ感謝されて!」

と俺は嘘をついた。


「そっか! クロード頑張ったもんね。凄い凄い」

アレクサンドラは俺の頭を撫でた。


「ハハハハ……」

俺は力なく笑う。


そっか。言えないよ。やっぱりこのアレクサンドラの無邪気さが曇ることなんて俺にはそんなことできない。俺は話を切り替えた。


「えっと大盾亭はどうなったの?」

俺は聞いた。


「店だいぶ壊されちゃったけど、クロードをここに運んだ後どうなったか分かんない」

アレクサンドラは言った。


「ミランダさんが心配だから戻ろう」

そう俺は言うと白銀の大盾亭に戻った。


帰り道俺は考えていた。どうしてこんなに早く手配書が……あれは間違いなく俺の顔だった。ひょっとしてシドたちが俺を死んだものとして扱ってくれるのを期待してたのだが……俺が生きているのがバレたようだ。これからどうすれば……というか早めに逃げた方がいいんじゃないか? アレクサンドラにはなんて言おう。あえて嫌われるようなことをするか? しかし、早すぎる。早馬でも使ったのか。別の街にも手配書が回っているのだろうか。俺はそんなことを鬱々と考えていた。



俺は大盾亭の前まで来た。


あれ……なんだか騒がしいな……夜中だというのに大盾亭が騒がしい。もうとっくに閉店の時間のハズだが。どんちゃん騒ぎをしているようだ。音楽も聞こえる。えっ? 中で踊っているのか?


「どうしたんだろう」

俺はアレクサンドラたちに聞いた。


「店を壊されて頭がおかしくなったとか?」

ミラーカが言う。


「まさか!」

俺はミラーカの言葉を否定した。


俺たちは中に入る。


ドアを開けたら音楽が止まりみんな一斉に俺を見る。えっ? なにこれは……みんなさっきまであんなに踊ったり喋ったりしていたのに一瞬で黙った。


すると


「おおおおおおおおおおおお!!!!」

と歓声が聞こえた。


「クロード! こっちに!」

「うおおおおおおおおお!!!!」

鳴り止まない歓声。その中でエドガーさんが俺に席に座るよう言った。


「英雄さまのお帰りだ! みんな拍手を!」

すると拍手と一緒に

「うおおおおおおおおお!!!」

と店内が壊れるんじゃないかと思うくらいの声で客が叫んだ。えっ? 全員酔っぱらってるのか?



次回多分エンディングです。ハッピーエンドです。それが終わったらシドざまぁ編に突入します。


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