絶体絶命! そして覚醒!

「うわああああああ!!!」

俺は叫ぶ。そしてドラゴンが口から光弾を放った!

ヒュン! その光弾は冒険者数名の体をあっと言う間に燃え上がらせたかと思ったら次の瞬間その冒険者の体は粉々に吹き飛んだ!


「うわああああああ!!!!」

それを見て冒険者たちは恐怖のあまり叫びだした。


「逃げろ!」

俺が叫ぶと冒険者たちはハッっとしたように散り散りに逃げ出した。俺もその場を離れようとするが、腰を抜かしたように座り込んでいる小柄な冒険者がいた。


「おい! 逃げろ!」

俺が叫ぶがその小柄な冒険者は涙目で首をブルブル横に振った。恐怖のあまり動けないのだろう。

「クソっ!」

俺はその腰を抜かしている冒険者のところに駆け寄る。そして肩を貸して逃げようとした。

すると俺の視界の端に……


「あああ!!!」


俺はブラックドラゴンを見た。ブラックドラゴンが俺めがけて口をパックリ開き光弾を放とうとしているさまを!


「うわああああああ!!!」

俺は抱えていた小柄な冒険者を突き飛ばし反射的に大盾を召喚した。だがなんの魔法効果もないただの大盾。俺はここで死ぬだろう。


視界が光に包まれる。まずこの大盾が燃え尽きたあと、俺の体も燃え尽きるだろう。そして衝撃波で俺の体はフッっとタンポポの種を飛ばすようにバラバラに吹き飛ばされる。その全てが一瞬のうちに起きる。


人間が太刀打ちすべきじゃなかった。こんな巨大な龍に。


そしてここにいる冒険者たちも全てブラックドラゴンに殺されるだろう。守りたかった家族もシドたちに陵辱された挙げ句処刑されるだろう。


全て間違っていたというのか。この俺が。見捨てるべきだったと言うのか。この冒険者たちを。


全てがスローに見える。


ボッ! っと大盾が燃えて一瞬で粉砕された。次は俺の体だろう。もし救いがあるとするなら、俺は一瞬でこの世から消え去るということだろうか。

すると脳内で女性の声が響いた。


「巨大な魔力を感知しました。パッシブスキル。マジカライズを発動します」


「!?」


キュインと脳内に音が聞こえる。


ドグン!


「! うおおおおおおおおおお!!!!!」

なんだこの感覚! 巨大な魔力が体中に流れ込んでくる!


「うああああああ!!!」

俺は両手をドラゴンにかざし耐える。


「体内の魔力貯蔵が限界を迎えました。このままではオーバーロードを引き起こし使用者の体は破壊されます。体内の魔力貯蔵を経験値に変換しますか?」

脳内から女性の声が聞こえる。


「なんでもいい助けてくれ!」

俺は叫んだ。


「かしこまりました。体内魔力を経験値に変換します。ステータスが更新されました」


クロード・シャリエ 冒険者 レベル6→7


最大HP……20→30(+10) 

最大MP……18→28(+10)


筋力……18→21(+3)

体力……12→13(+1)

素早……30→32 (+2)


魔力……12→28(+10)

幸運……28→42(+14)


目の前にレベルアップ時のステータスが表示されすぐに消える。


グンッ! っと力が増すのを感じる。

「これは……」


「ステータスが更新されました」


そしてステータスが俺の目の前に表示される。


クロード・シャリエ 冒険者 レベル7→8


最大HP……30→35(+5) 

最大MP……28→32(+4)


筋力……21→28(+10)

体力……13→15(+2)

素早……32→38(+6)


魔力……28→42(+14)

幸運……42→52(+10)


えっ! またレベルが? ドラゴンの光弾は俺を焼き尽くそうとしている。だが、俺はまだ耐えている。これは現実なのか。それとも夢なのか。ステータス表記が一瞬で現れて一瞬で消える。


ボッ! ついに俺の手、そして腕、そして体が燃えだした。俺は全身炎まみれになる。駄目だ。いくらレベルが上がっても俺はもうすぐ死ぬ。全てがスローに見える。この急速なレベルアップは俺が最後に見た幻だろうか。


「ステータスが更新されました」


クロード・シャリエ 冒険者 レベル8→9


最大HP……35→42(+7) 

最大MP……32→42(10)


筋力……28→42 (+14)

体力……15→26(+11)

素早……38→52 (+14)


魔力……42→52(+10)

幸運……52→60(+8)


パッシブスキル『光・火炎耐性レベル3』を手に入れました。


「!」


すると燃えていた俺の体の炎がみるみるうちに消えていく。全身の火傷の痕だけが残った。


「!」


「ギャオオオオオオオオオオオ!!!!」


なにっ! ブラックドラゴンがもう一匹現れた! 嘘だろ! ブラックドラゴンが二匹に! 嘘だろ! 俺は絶望する。するとその一匹のブラックドラゴンも口を開き俺に光弾を放った!


「ギャオオオオオオオオオオ!!!!」

2つの方向から放たれる光弾。

巨大な咆哮をあげる二匹のドラゴン。


「巨大な魔力を感知しました。このままでは魔力回路が焼き切れます。パッシブスキル。マジカライズをレベル2にして魔力の変換効率を高めますか?」

脳内から女性の声が聞こえる。


「うおおおおお頼むううううー!」

俺は叫んだ。


すると脳内で声が聞こえる。


「魔力変換効率30→80%になりました」


「ステータスが更新されました」

脳内で声が聞こえて一瞬でステータス表記が消える。どうやらレベル9からレベル10になったようだ。


「ステータスが更新されました」

またもやステータス表記が現れては消える。今度はレベル11に。


「ステータスが更新されました」

次はレベル12に!


「ギャオオオオオオオオ!!!!」

ドラゴンの咆哮が響く。


ボッ! 俺の口から火が出てきた。いや、コレは違う。俺の内蔵が高温で燃えているのだ!

「うああああああああ!!!!」

俺は叫ぶ。俺は全身が炎に包まれる。


「ステータスが更新されました」

レベル15→16になりました。


パッシブスキル

『自動回復レベル2』

『光・火炎耐性レベル4』

を獲得しました。


「ああああああ……あぁ!?」


すると体からみるみるうちに炎が消えていってしかも全身の痛みも火傷の痕もスッっと消えていった。


「これは……」

俺は全身を確認する。


「ステータスが更新されました」


「ギャオオオオオオオ!!!」

ドラゴンの鳴き声が響き渡る。俺はまだ生きている。あの炎の中でも。だがこのままじゃジリ貧だ。なにか攻撃する武器がないと。


「ステータスが更新されました

『マテリアライズ』が

『マテリアライズレベル2』

に上がりました」


「ターゲットを選択してください」


脳内で声がする。


ターゲット? なんの……えぇい! どうにでもなれ!

「ターゲット! 選択!」

俺は叫んだ。すると


バグン! 目の前のブラックドラゴン一匹が巨大なブラックホールに包まれたようになる。


ギャギャギャギャ……


まるでブラックドラゴンを万力で押しつぶそうとしているようなイヤな音がする。


「クオオオオオオオオオオオンンン!!!」

ブラックドラゴンが叫ぶ。だが、ブラックドラゴンはブラックホールに押しつぶされて


ボキボキボキボキボキボキ!!!


ブラックドラゴンの全身の骨が砕ける音が聞こえる。もう一匹のブラックドラゴンは光弾を放つのをやめてその様子を見ている。


まるで折り紙で出来たドラゴンを握りつぶして丸いボール状にするようだった。ブラックドラゴンはリンゴほどの1つの黒い球になった。


その黒い球なフワーーっと俺のところに来てそして


「武器を作成してください」

脳内で声が響く。俺の脳内には槍が思い浮かんだ。するとその小さな球はグイーーンと伸び変形していく。そして禍々しい槍の形になった。


呆気にとられている冒険者たち。そして残ったがブラックドラゴンも呆然と俺を見ていた。


それはもはや槍と呼んでいいのか、黒く槍の穂先はドラゴンの口のような形をしていた。


俺はそれを手に取る。っ……!! すると使い方が脳内に流れ込んでくる。


これはガヴォイセンの槍。槍の穂先を敵に向けると巨大な光弾を放つ。石突の方は突けば相手に麻痺、猛毒、狂気、老化の効果を全て一瞬にして与える。これを俺が召喚したのか? これはもはや並大抵のアーティファクトではない。神話級の武具だぞ。それを俺が……


ガクッっと俺は意識を失いそうになる。足を前に出してなんとか堪える。一連の魔力行使で俺の魔力回路が悲鳴を上げているのだろう。だが……!


俺は槍の穂先をブラックドラゴンに向ける! 

槍の穂先に光が集中する! 槍からドラゴンのうめき声が聞こえる。そして放つ! ガヴォイセンの咆哮!


凄まじく光がブラックドラゴンを襲う! 一瞬にしてブラックドラゴンが炎に包まれる。終わりだ! 


「ギャオオオオオオオオオオオ!!!!!」

ブラックドラゴンはそう叫ぶと逃げ出した。炎を纏ったまま、まるでフェニックスのように空を飛び去った。


「ハァッ! ハァッ!」

勝った! やった! ブラックドラゴンを追い返した!


「うおおおおおおおお!!! よっしゃあああああ!!!!」

俺は叫ぶと地面に倒れ込んだ。俺は空を見上げた。生きている。俺は自分の体を何度も触る。生きている。怪我もなく。


「驚いたな。キミのその魔法。人間の魔法じゃないよ」

と俺が守ったハズの小柄なフードを被った冒険者が俺を見下ろし言う。


その子はフードを取った。あっ! 一目で分かる。尖った耳、爬虫類のような瞳。そして口に生えたキバ。魔族だ。魔族がなんでこんなところに。しかもその子は女の子だった。


その子は冷静な口調で爬虫類の瞳で俺を見詰めて言った。

「キミのその魔法は魔王術と呼ばれているものだ。魔王にしか使えない究極の魔法。予言の通りだ。今ここで魔王が誕生した」




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