ドラゴンのところに置き去りにされた俺がドラゴンの火に焼かれながら【魔王術】に覚醒する!魔族の姫君と結ばれ魔界の英雄を産む運命らしい。元いたギルドは俺を嫌っていたリーダーが逆に追放され消滅したらしい

水ManJu

決死の絶望(ストレス展開はこの回だけです)

「さっさと行け! ドラゴンと戦え!」

司令官であるシドの叫び声が響く。俺たちはブラックドラゴンと対峙していた。そして俺たちの被害は甚大。目の前には多くのギルドメンバーたちの死体の山。そこには人間の尊厳など微塵もなかった。


「早く行け! 突撃しろ!」

シドが叫ぶ。だがその指示に従ってしまえば俺たちもあの死体の山の一部になってしまうだろう。生き残ったメンバーは数十名。最初集まっていたメンバーは数百名だった。それが10分足らずで10分の1になっていた。


城下町を脅かすブラックドラゴンが問題になったのは最近だった。城下町の近くに巣を作り、まるでオヤツでもつまむ様にフラッっと空を飛び町に現れては人々を捕食していた。


国王よりブラックドラゴンの討伐命令が出された。多くのギルドが名乗りを上げた。その中でそのクエストの受注を勝ち取ったのがここで突撃を命じている司令官のシドだった。多くのギルドが提示する金額の半値以下で国王から出されるクエストを受注した。


だが、その結果このありさまだ。シドはまず人件費を徹底的に削るために新米の冒険者を集めた。もちろん新米冒険者に本当のことは教えない。シドは多くの新米の冒険者にただの荷物運搬のクエストだと伝えた。そしてその冒険者を偶発的にブラックドラゴンと鉢合わせ戦わせた。そして今のこの累々と死体が並ぶあり様だ。


このあまりにも酷い戦い方に俺は異論を唱えた。だがシドはこう言い放った。

「別にこのクエストに失敗してもいい。もう国王から金は貰ってあるからな」

と。


つまり、国王はもうクエスト受注時にシドにクエスト代金を払っていたのだ。それは半値以下でクエストを受注したシドの交渉の結果だった。つまり、多くの冒険者を雇い、鍛え、武具を揃えるのに金がかかる。そのための費用として金が必要だと。だがシドは冒険者たちに武具など買い与えなかった。もちろんシドが冒険者に必ず払うと言った多額の報奨金も嘘だった。


「まぁこのクエストに参加した奴の大半は死ぬからな。死んだ奴には報奨金はいらない」

俺はシドのこの言葉を聞いたとき絶句した。


しかし、クエストを失敗した場合シドにも責任がかかる。多くの人はそう思うだろう。だがそれは違う。国王にとっても俺たちが死んでくれた方が良かったのだ。


国王とブラックドラゴンは密約を結んでいた。それはドラゴンが国民を捕食する代わりに街を守護してもらうという密約だ。


国王とブラックドラゴンはグルだったのだ。だから国王の本心はこうだった。討伐されては困る。だが国王としてブラックドラゴンを放置しては国民が不審に思うだろう。ならば多くの冒険者に犠牲になってもらえばいい。


冒険者たちの死体の山、足が炭化して歩けなくなった冒険者を見せて、国民に思い知らせればいい。国王はブラックドラゴン討伐に本気なのだと。


そこに目ざとく気づいたのがシドだった。シドは討伐計画書を国王に見せた。それはブラックドラゴンを討伐に行き負けて甚大な被害を受けて帰ってくるという国王の意に叶うものだった。


俺はシドのノートを盗み見、その企みに気づいた。だが、俺はそれを他の人に伝えることが出来なかった。もしその情報を他の人に漏らしたらどうなるだろうか。これは重要な王家を揺るがすスキャンダルだ。


しかも、俺が密約の証拠を持っている訳ではない。ただシドのノートを盗み見ただけだ。例え告発しても、王家からしらを切り通されたら終わりだ。王に対するただの反逆として見なされるだろう。


そして俺と俺の家族も拷問の後に殺されてしまうことになる。


そんなことがあり、今俺たちはここにいる。この地獄の光景を見ている。


「おい、クロード」

俺の名前が呼ばれる。


「クロードお前。こいつらを指揮して突撃してこい」


シドはあっさりそう言った。その言葉を聞いてギルドメンバーたちは青ざめる。


「さっさと行けよ! この臆病者たち! 本当に男なの? 情けない!」

ビクトリアの怒号が飛ぶ。


ビクトリア……シドと同じ天空の大鷲団に入っているシドの彼女みたいなものだ。みたいなものだというのはシドは色んな女に手を出してるからだ。


俺もシドと同じ天空の大鷲団に入っていた。だが俺はお荷物だった。俺のユニークスキル。マテリアライズはまるでギルドの役に立たなかった。


マテリアライズ……物質化とも言う。体内の魔力を集中させて武器にする魔法。しかし、この世界には元から魔力を秘めた優秀なアーティファクト……つまり魔法武器がゴロゴロあった。だから俺が魔力で武器を作っても元からあるアーティファクトに叶わない。


それでエリートギルド天空の大鷲に入ったのだが、このユニークスキルを馬鹿にされ俺は荷物運びになった。


「おい、クロード」

シドはそう言って俺に近づき耳元で話しかける。


「お前は途中で帰ってこい。お前イジメがいがあるからな。それにお前は俺たちと同じクラン天空の大鷲団だ。残りは全員ドラゴンに殺してもらえ」

シドが言う。


「えっ? どういうこと?」

俺はシドたちの計画を知らないフリをする。


「お前には知らなくても良い。黙って俺の言うことに従え」

シドはそう言う。


ドラゴンは冒険者をムシャムシャ頭からかぶりついている。


俺はシドたちに指揮されている新米の冒険者の顔を見た。あまりの惨状に思考停止になっているのが見て取れた。この冒険者たちにも家族がいる。過去が未来がある。こんなに簡単に奪われていいものだろうか。


俺は考えた。確かに自分と自分の家族のことを考えたら俺はシドの命令に従うべきだろう。だが、怯えたような顔で見る新米冒険者たち。


俺は……


「シド。すまない。それは出来ない」


言った。


「は? なに言ってんだ。お前」

シドは驚いたように怒鳴る。


「シド。お前のたくらみを全部知ってるんだ。国王とブラックドラゴンの密約も。あの新米冒険者たちは殺されるためにここに連れてこられたってこともな!」

俺はシドに言う。


冒険者たちがざわつく。


「え? どういうことだよ……」

「殺されるためって」

「これ荷物運搬のクエストじゃなかったのかよ」

口々に言う。


もうこれで俺の運命は決まった。俺は家族よりこの哀れな新米冒険者たちを選んでしまった。俺と家族はこれから悲惨な目に会うだろう。


するとシドは


ドグッゥ! 俺に腹パンをかました。


「あ……あ」

俺は腹を抱えて呻く。


「みなさーーん。こいつの言ってることは嘘ですよーー。報奨金2倍にするので行ってくださーーい」

シドは怯えている冒険者に言った。


ポカーンとしてなにも反応しない冒険者たち。


「早く行けっつってんだろうが! テメェら! 文句しか言わねぇ役立たずのクソどもが!」

とシドは冒険者たちに怒鳴った。


「ヒィッ!」

怯える冒険者。他の冒険者は訝しげにこちらを見ている。


「クロードお前はクビだ」

シドが俺を見下ろし冷たい目でそう言った。


「そして国王に伝えてやろう。元天空の大鷲団に所属していたクロード・ シャリエは気が触れて国王に反逆したとな。お前もお前の家族もこれでお終いだ」

嫌らしい目でシドが笑う。


「そう言えばお前、妹がいたなぁ。あぁそうだ。あの子美人だったなぁ。どうせ処刑されるんなら俺ら全員で味見でもしとくか。もったいないからなぁ! なぁ!」

シドが俺の髪を掴み言った。そして俺を睨みつける。


そして左手に魔力を集中させ光弾を放った。ドゴン! それがブラックドラゴンの顔に当たった。それでギロリとこちらを見るブラックドラゴン。俺たちを敵として認知したブラックドラゴンは翼を使い天高く舞い上がるとこちらに襲いかかってきた。


「うわあああああああ!!」

「ドラゴンがきたああああ!!!」


「変な仏心は意味なかったな。死体の山にお前も追加されただけだ。じゃあな。転移門を出せ! ビクトリア!」

シドはビクトリアにそう叫ぶとビクトリアは転移門を開いた。


これはビクトリアのユニークスキル。知っている場所をタグ付けしてそこに一瞬でそこに転移出来る最上級の魔法。


「じゃあみんな帰るぞ」

そう言ってシドたち天空の大鷲団はゾロゾロと転移門から帰ろうとする。


「ちょっと待ってくれ! 俺もっ! あっ!」

新米冒険者が転移門に入ろうとすると大鷲団のタンク役であるサムソンに切りつけられた。


「済まんな。この転移門は心のキレイな人しか入れないんだ」

サムソンはそう言う。


ギャハハハと笑うシドたち。


「あああ……」

サムソンに切りつけられ倒れ込む冒険者。


そして次々に転移門に入っていく天空の大鷲団のメンバーたち。


「クソっ」

俺は体内の魔力を手に集中させ槍を出現させた。これが俺の能力。マテリアライズ。


「サムソン! そこを通せ!」

俺はサムソンに槍を投げつける。だがサムソンの斧の一振りでその槍は粉々に砕け散った。


バサッ! 俺たちの周囲が黒い影に染まる。ブラックドラゴンが俺たちの頭上まで来ていた。


「マテリアライズか……所詮元からある武具には叶わない。そんなスキルに産まれついた時点でお前の人生は詰んでたな。クロード」

サムソンはそう言い残し転移門に入り、そして転移門は消えた。


「もう終わりだーー」

「ひいっ! ど、ドラゴン!」

怯える冒険者たち。


するとドラゴンが

「ギヒャアアアアアアア!!!!!!」

と奇妙な叫び声を上げて襲いかかってきた


新作書きました。


セクハラ冤罪をかけられ追放された魔法教師。元教え子の【聖女】と再び出会い、最強スキル【魔王術】に覚醒し無双する。聖女から溺愛されながら幸せな日々を送ります


https://kakuyomu.jp/works/16816700428241467918/episodes/16816700428241495867


フォロー。評価。お願いします!!


こっち側の主人公も魔王術を使います。

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