ざまぁ展開 ①絶望するシド

クロードが白銀の大盾亭を出た時刻と同じ時刻。シドたち天空の大鷲団のメンバーはオイゲンシュタット城で話し合っていた。


「魔王術?……」

シドが驚く。


「ええ。そうです。おそらくクロードさんのマテリアライズは魔王術の一つだったのでしょう。とてつもなく強力なユニークスキルです」

占い師のエルフのアルディスはそう言った。


シドからは冷や汗が流れる。


まさか……あいつの大した事のないスキルがそんなに凄いスキルだったとは……


「で、どうします? クロードさんに戻ってきてもらいます? この事態を解決するのクロードさんしかいませんよね」

コルネリオはそう言った。


ここはオイゲンシュタット城内の一室。天空の大鷲団のメンバーは全員揃って会議をしていた。重い空気が部屋に流れる。


事態は切迫していた。天空の大鷲団解散の危機が迫っていたからだ。もっと言えばシドたち天空の大鷲団は責任を追求されて全員処刑されるかもしれない。事態はそこまで切迫していた。


ブラックドラゴンのアンシルヴァンドと話した。その際兄を捕えたのはどうやらクロードらしいという確信を深めた。


シドはエリクサーを要求してきたアンシルヴァンドを騙して、ポーションをエリクサーと称して渡した。


だがそれが良くなかった。アンシルヴァンドはそれを一瞬でポーションだと見抜いた。


なぜ、シドがドラゴンにポーションとエリクサーの違いなんて分かるはずがない! そう思っていたのか。


それは過去にこんなことがあったからだ。


過去にシドは国王からブラックドラゴンと同じく古龍であるホワイトドラゴンにエリクサーを献上する任務を命じられたことがあった。


だが、エリクサーはどんなに頑張っても見つからなかった。だからシドはポーションをエリクサーと偽りドラゴンを騙すことにした。


クロードを交渉役として送る。それでホワイトドラゴンにバレて激怒されたら全部クロードがやったことにすればいい。シドはそう考えていた。


だが、クロードはホワイトドラゴンとの交渉を成功させた。エリクサー替わりにポーションを持たせたのに……それでもあいつは成功させたのだ。


俺はそのことを国王に報告し俺は大変評価された。

国王にはポーションを使うという俺のアイデアで成功したのだと伝えた。

ホワイトドラゴンと不可侵条約を結んだことで俺は一目置かれることになった。そしてそれと同時に天空の大鷲団の王国での地位も劇的に向上した。


俺は思った。なるほど。ドラゴンはポーションとエリクサーの違いも分からないアホなのだと。


「いえ、全然違うんですよ」

コルネリオは言う。


「僕、クロードさんとホワイトドラゴンの交渉の場に立ち会いました。けど、クロードさん全て正直に話したんです。これはエリクサーじゃなくてポーションだって」

コルネリオが言う。


「なにっ?」

シドの知らない新事実だ。


「そこでホワイトドラゴンとクロードさんは長時間交渉しました。するとホワイトドラゴンはクロードさんのマテリアライズに大変興味を持ったんです。その能力でなにか作ってくれないかって言ったんです。クロードさんは水晶を触媒にして巨大なクリスタルのドラゴンの彫刻を作ったんです。それをドラゴンがいたく気に入って」

コルネリオは言う。


「ん? なんの話だ」

シドは言う。


「つまり、クロードさんの能力と交渉の結果話はまとまったのです」

コルネリオは言った。


「なに!? つまりドラゴンはクロードの能力が気に入ったから不可侵条約を結んだというのか?」

シドが信じられないといった様子でコルネリオを見る。


「正確にはクロードさんの誠実な対応があったからドラゴンも交渉する気になったみたいですけどね」

コルネリオは言った。


「だっ! だが……そんなこと俺は知らないぞ! なんで俺に報告しなかった!」

シドはコルネリオを責めた。


「僕を責める意味が分からないですけど。クロードさんは報告しましたよ。全部正直に。でもシドはそれを全く聞かなかったですよね。やっぱりドラゴンにエリクサーとポーションの違いは分からないんだ! 全部俺のアイデアのお陰だって謎の解釈をして。全部クロードさんの手柄を横取りしてましたよね」

コルネリオは言う。


あっ! 確かにクロードはそんなこと言ってた気がする。エリクサーの件は正直に話したって。だが、俺は自分のアイデアでドラゴンとの交渉がまとまったのでテンションが上がっていた。国王には交渉役の俺が巧みな話術で話をまとめたとデタラメを言った気がする。


シドは自分の足元が崩壊しそうな感覚を味わっていた。


今まで正しいと思っていたことが覆され、今まで馬鹿にしてきたものが実は自分より優れていた。自分の感覚が全て間違っていた。自分の価値判断が全て間違っていた。その感覚がシドには堪らなく恐怖だった。


シドは常に自分が正しく周りが悪いと言い続けていた。それで状況が改善することがよくあったからだ。だが、間違っていたのは実は俺の方だったら? みんな俺を優しくフォローしてくれていただけなのでは? シドはそう思った。


「はーーい! あたし話すね。てかさ、そもそもなんでクロードを追放したの? 結構頑張ってたよね。クロード」

天空の大鷲団の武闘家マオが話した。マオはボーイッシュな女性だ。


「うん……そうだよね……クロードくん。ギルドのメンバーのために頑張ってたよね。あたしもクロードくんが外されたって聞いて……ビックリしちゃって」

ゆっくりとした口調で話すのはユイだ。ユイは呪術師の女の子だった。


「それは私からも聞きたいな。クロードが追放されたブラックドラゴン戦に私とユイ、そしてマオは居なかったからな。状況が分からん」

女戦士のエルザが話す。


会議がざわつき出した。みんな口々に喋りだす。


駄目だ! 問題が多すぎる! シドは思った。

頭が混乱する。


「まず、問題点を洗い出すぞ!」

シドが言う。


「まず問題その1はブラックドラゴン、アンシルヴァンドの件だ。今国王がアンシルヴァンドと直接交渉している。交渉次第では俺たちがスケープゴートにされて全員食われるかもな」

シドが言った。

すると周囲がざわつく。


「ええええええええええ!!!!」

と叫ぶメンバーたち。


「ちょっとなに言ってんのよ! 私嫌だよ! こんなところで死ぬなんて! シドあんたのせいじゃないの!」

女武闘家のマオが言う。


「意味分かんない……なんでシドが適当な嘘をついたせいで……私たち死なないといけないの?」

呪術師のユイが言う。


「黙れ! この大鷲団の団長は俺だ! シド様だ! 黙って俺の言うことに従え!」

シドは言う。


「ばっかじゃないの? シド。今まで黙って従ってたから今こんな状況になってるんじゃないの!」

とマオが言うとドッっと笑いが起こった。シドは顔面蒼白になってプルプル震える。


「占いによると私達がここにいると処刑される確率が80%ですね。早く逃げ出せば逃げ出すほど生存率が上がります」

女占い師のアルディスがそう言った。


するともっと周囲がざわついた。


「もう駄目だな。このギルド。私はこのギルドと心中するつもりはないぞ。シド私はこのギルドから抜けさせてもらう。シド。今までの未払いの給料を払ってもらおう」

女戦士のエルザが言う。


「そうですね。シドさん。最後ぐらいちゃんとしましょうよ」

コルネリオは言う。


「そんな金なんてないぞ」

シドが言う。


するとメンバーから

「えええええええええええええ!!!」

と声が上がった。


「ちょっとどういうこと! シド!」マオが叫ぶ。


「呪うっ! シドを呪ううっ!」

呪術師のユイが言う。


「お前どういうことだよ。俺らのクエスト代お前が管理してたはずだろ。まさか使ったのか?」

サムソンがシドに聞いた。


使ったに決まってんじゃねーか! シドは心の中でキレた。だがそれを正直に言えば……あぁ! もうクソっ! シドは焦る。


すると部屋のドアがノックされた。コンコン。そしてコンスタンツ卿が部屋の中に入ってくる。


「今国王とドラゴンの話し合いが終わった」

コンスタンツ男がは大鷲団のメンバーに言う。

運命の瞬間。ゴクリと唾を飲み込むシド。


「話し合いの結果。シドお前の処刑が決まった。お前はドラゴンに生きたまま食い殺されるのだ」

コンスタンツ卿はそう言った。


シドは頭が真っ白になる。そしてシドは白目を剥いてドサッと倒れた。



まだまだざまぁ展開が続きます。

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