ざまぁ展開 主人公を追放したシド目線
「オイゲン国王陛下。例の件の手はずは上々でございます」
ここは王宮。王の部屋。主人公にクビを言い渡したシドと王が話をしていた。
「そうか。一体何人の冒険者が死んだ?」
国王は冷酷に言う。
「天空の大鷲団以外全滅でございます。死者はざっと六百名ほどかと」
シドが言う。
「六百名か。そのゴミどもの遺体には利用価値がある。英雄として大々的に国葬するのだ。こうしてブラックドラゴン、ガヴォイセンとの密約は果たされる」
国王が言う。
「まぁ生きていても社会の役に立てない人間ですからね。あいつらは。これでドラゴンの腹も膨れる。一石二鳥。これがゴミどもの正しい使い方ですよ」
シドが言う。
「シド。お前のことが気に入ったぞ。なんでも希望を言うがよい。ワシが叶えてやろう」
「それでは……王家に伝わる伝説のアーティファクト。メリディアの地図をいただきたく思います」
シドがそう言う。
「なにっ! メリディアの地図? ふざけるな! あの地図は先祖代々伝わる神聖にして不可侵のアーティファクトだぞ!」
と国王が怒鳴る。
シドはキレそうになった。チッ! このクソジジイが。なんでも希望を叶えてやろうって言ったのそっちじゃねぇか! あぁマジでゴミだなこの国王。マジで殺してぇ。
「申し訳ありません。国王陛下。ただあのアーティファクトの正しい使い方を国王陛下はご存知ないようでしたので」
シドは平伏する。
ふと国王の動きが止まる。ニヤリとシドは平伏したまま笑った。
「どういうことだ! ワシがあの家宝の使い方を知らんとは! ハッキリ申せ!」
国王は激怒している。
「それでは説明いたします。あのメリディアの地図。国王陛下もご存知の通り、この国の大地は初めの国王であるオルファン・グランヴィル様がメリディアの地図を使い産み出したものでございます」
シドがそう言うと国王陛下はコクリとうなずいた。
「今から1500年前。オルファン様が食料も尽きた難破船で一人ただ死を待っていました。その時オルファン様は神に祈った。どうぞ! 神よ! 我々にその資格があるならば新しい大陸をお与えください! するとその祈りが神に届き空から一枚の紙がヒラリひらりと舞い落ちました。すると声がした。オルファンよ。お前の願いを叶えてやろう。その地図に血を垂らせ。その血が新しい大地となるだろう。と。オルファン様はその声のとおりにしました。手首を切り血を垂らした。すると地図の上に鮮血は広がっていく。すると海から大地が出現した。オルファン様はそこに国を作りその大陸の名をグランヴィルと名付けた。その大地の形はオルファン様が地図に流した血と同じ形の大地。つまりこの大陸は国王の血から出来たものであり、国王の肉体そのものなのです」
シドはそう言った。
「そんなことは知っておる。要点を話せ要点を」
国王が言う。
「オイゲン国王には新しい大陸を作っていただきたい。資源豊かな大地を。そして戦争をしていただく。そこで侵略した国民を奴隷にして、その新しい大地で強制労働させる。そこで得られた取り分を国王殿下と山分けしたいと考えています」
シドがニヤリと笑って言う。
「なるほどな。お前は悪いやつだな」
ニヤリと国王がシドを見て笑う。
「そして取り分は」
国王が言う。
「国王様が1、私めが9 の1.9でよろしいかと」
シドが言う。
「なにっ! ふざけるな! お前ワシを舐めているのか!」
国王が怒鳴る。
「いえ舐めてません。では陛下。陛下が3。私が7の3.7では」
「ふざけるな! そんなもののために我が国宝のメリディアの地図を渡せるか!」
国王が怒鳴る。
そんなやり取りが続き、国王6、シド4の6.4に話は落ち着いた。
「むぅ……しかし、メリディアの地図を乱暴に扱うとどのようなことになるか。神罰が下るかもしれない」
国王は二の足を踏んだ。
クソっ! 今更グダグダ抜かしてんじゃねぇよ! お前は地図を出すだけで儲かるんだろうが! あぁ! もうクソっ! シドは心の中で悪態をつく。
「大丈夫です。新しい国の名前は王都メリディアにしましょう。神殿を作り、メリディア教を国教にしましょう。これでメリディア様の怒りも和らぐハズです」
「むむ……なるほど……」
国王は考え込む。
ガンガンっ!
すると突然国王のドアがノックされた。
「何だ一体」
国王が怒鳴る。
「国王様! 失礼ながら火急の用でございます。ブラックドラゴン一体が討伐されたとのことです」
使いのものが国王の部屋に入りそう告げた。
「なにぃ!」
国王はシドを睨みつけた。
「!」
シドは驚く。ありえない! そんなことは。
「どういうことだ!」
国王は怒鳴る。
シドは呆然としている。
「しかももう一匹のドラゴンも大怪我を負っているとのこと。約束が違うと説明を求めています!」
と使いの男が言う。
「オイ! シドどういうことだ! 誰が倒せと言った!」
激怒する国王。
シドはパニックになって考える。誰だ! 誰が一体……あの役立たずのおじさんばかりの新米冒険者たちに倒せるハズは……まさか別のモンスターが乱入した? だがあのブラックドラゴン。神話級のモンスターだったハズ。まさか弱点が? いやしかし……シドは考え込む。
「シド。クエスト報酬を返せ!」
国王がそう言った。
「えっ? 国王殿下そんな! 酷い!」
シドが言う。
「酷いものか! クエストを達成しなかったのはお前だろう! 口答えするな! お前のせいで罪もない冒険者たちが何百人死んだと思ってるんだ!」
国王が怒鳴る。
えっ!
シドは驚く。
この国王。全て俺に全責任を押し付けるつもりなのかよ! このクズっ!
「ブラックドラゴンとの交渉をまとめよ! それが出来なかったら貴様はドラゴンのエサだ!」
国王がシドに怒鳴る。
シドは絶望する。これから登り詰めようとしていたのに。ありとあらゆるものを利用してこの国王に取り入ろうとしてたのに。
全てはこれからだったのに。シドの体に冷や汗が流れる。
シドは考えた。
大丈夫だ。今までもピンチを乗り越えてこれた。これからも……
シドはそう考えていた。だがシドたちに残された未来は破滅だけだった。
◇
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