いつの間にか喧嘩祭り?
俺は白銀の大盾亭に向う! あの黒龍団の連中が店を壊そうとしていた!
バキッ! ガシャーーン! 黒龍団が店を壊す音が聞こえる。
それと同時に
「うおおおおおおおおお!!!」
と黒龍団の怒声が聞こえた。
急がなくっちゃ! 俺はダッシュで走り出す。グン! と後ろに下がる光景。俺の素早さは320。この速さなら全員あっと言う間に……あっ……
俺は足がもつれた。
「あっ! あっ! あーー!」
ドカン! バキン!
俺は凄まじい勢いのまま足がもつれて転んだ。そしてその勢いのままバタンバタン! と転がって白銀の大盾亭の外に置いてある酒樽に思い切り
ドゴーーン!!
ぶつかった。
「あーー! たったっ……」
思い切り転んでしまった。やはり素早さが上がりすぎて制御出来ないのか?
「うしっ!」
俺は立ち上がろうとする。だが……
「兄ちゃんはそこで休んでおけ」
と誰かの声が聞こえた。渋めの声だ。ふと見るとそこには俺が給仕してテーブルを真っ二つにした時に笑って許してくれたドワーフがいた。
「兄ちゃん! 大怪我してるぞ! いいからそこで休め。自分を手当てしろ!」
ドワーフの男はそう言う。
「大丈夫ですよ。全然痛くないですし」
俺は立ち上がろうとすると脳震盪を起こしたようにフラーっして……バタン! と倒れた。
え? 俺はいつの間にか地面に這いつくばっている? 立ち上がろうとするが力が入らない。ポタポタ……地面になにかが落ちる。俺は片手で頭を触る。手に血がべったりと付く。あっ! 俺は自分の血を見て気を失いそうになった。
「自分では大丈夫だと思ってるかも知れんが、外から見たら一目瞭然じゃ。だいぶ傷が深いぞ。いいからここで休んで手当てしろ! 大盾亭はワシらが守る!」
ドワーフのおじさんは言う。
「キャーーー!!」
と叫ぶミランダの声。もう黒龍団による大盾亭の破壊は始まっていた。
あっ! クソっ! こんな時に!
だが
「うおおおおおお!! お前ら聞け!! そこにいる野郎ども! 喧嘩じゃ! 大盾亭を守るぞ!」
とドワーフのおじさんが怒鳴った。
すると
「おおおおおおおおおおおおお!!!!」
と辺り一帯から地鳴りのような声が聞こえた!
「えっ?」
驚く俺。
「いくぞ!!!」
ドワーフのおじさんが号令をかけた。
すると辺り一帯にいた人々が
「おおおおおおおおおおお!!!」
と大声を上げて白銀の大盾亭に突入し黒龍団と喧嘩を始めた。
その中には黒龍団が怖くて店から出た大盾亭の常連客もたくさん混じっていた。
◇
「えっ? どうして? クロードが勝ったのに!」
アレクサンドラはクロエに聞いた。
黒龍団が店内で暴れている。
ガシャン! ガシャン! と物を壊している。
「負けたことを認められないのでしょう。さぁミラーカ。一緒にお嬢様をお守りしますよ」
クロエはミラーカに言った。
「えへへ! ねぇちゃんども……」
パキン! クロエが華麗に回し蹴りを男に食らわせる。糸の切れた人形のように男は倒れる。
「どうしよう! お店壊されちゃうよ!」
アレクサンドラは言う。
「まぁそれは人間同士の争い合いですので……我々が積極的にどちらかに加担してしまうと……政治的な問題に発展しかねません。もちろん姫様が怪我をされてもです。ここは静観がベストな選択肢です」
ミラーカが言う。
「んもう! クロードの味方したかったのに!」
アレクサンドラはそう言った。
すると……
「おおおおおおおおおおお!!!」
といきなり、なだれ込む大盾亭の常連客。
「えっ? なに?」
アレクサンドラは驚いた。
「ここの店の常連客みたいですね」
クロエは言った。
「おっ! なんだこいつら!」
黒龍団のメンバーが言う。
ボコン! いきなり常連客のパンチが黒龍団のメンバーに入る。
そして、無理矢理、大盾亭から引きずり出される黒龍団のメンバー。
多勢に無勢。常連客の方が多いため数の暴力で黒龍団はタコ殴りにされていく。
「おい! 店に迷惑かけるな! ワシらが相手じゃ!」
「なにを!」
バコン! 常連客はいきなり黒龍団のメンバーにパンチをお見舞いした。
「バカどもを外に連れ出すぞ!」
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
と言いながら黒龍団のメンバーをバコン! と殴り店の外に連れ出す常連客。
「うおおおおぉ!!! なんだお前ら! こんな大勢で卑怯だぞ!」
と叫ぶガイウス。
「お前らに言われたらお終いじゃわい!」
容赦なくタコ殴りにされて店の外連れて行かれるガイウス。
ミランダは恐怖のあまりへたり込んでいたがその様子を見て
「みんな……みんな……」
と感極まったように泣いていた。
◇
俺は自分の怪我が一向に回復しないのを不思議に思っていた。
「あれ? 自動回復スキルあるんだけどな……」
俺は一人つぶやくと
脳内で
「パッシブスキル自動回復レベル2を使いますか?」
と女性の声が聞こえた。
「うぉ……いまごろ。自動回復スキルなのになんで手動なんだよ」
俺は突っ込む。
「ただいま魔力回路が著しく損傷しています。そのため自動回復スキルを使うとオーバーロードを引き起こし魔王化する恐れがあります」
と脳内で声が響いた。
俺はベルトのように腰に回している自分の尻尾を見た。ミラーカから言われていた。魔王術は使うなと。この自動回復スキルも魔王術の一つだということか。
「そうか。それでは使わなくていい」
俺は言った。
「承知いたしました。自動回復レベル2をオフにします。他のパッシブスキルもオフにしますか?」
「あぁ頼む」
勝手にパッシブスキルを使ってしまい魔王化したら取り返しがつかない。俺はそう考えて言った。
「それではパッシブスキル、マジカライズ。夜目。光・火炎耐性をオフにします」
脳内から声が響いた。
「どうも」
俺はそう言うと急に体が軽くなった気がした。パッシブスキルが微妙に作用してたのだろうか。
「さてと、自分で頭の血を止めないとな」
俺は頭部の裂傷の近くを触って言った。
「凄いスピードで突っ込んでいったにゃ。まるで樽に飛び込んだみたいだったにゃ」
いつの間にか俺の近くには猫耳娘、ミュゼルがいた。しゃがみ込んで俺を見つめている。
「ミュゼル……だったか。……どうしてこんなところに」
俺は言う。
「それはナイショだにゃ。ほら。ミュゼルは魔王様に恩を売るにゃ。布を巻いて止血するにゃ。近くに手頃な布があるのに、アピールのためにわざわざ自分の服を破くミュゼルだにゃ」
ミュゼルはそう言って自分の服をビリビリに破いた。服が破かれミュゼルのお腹が見える。
「ほら頭出すにゃ」
ミュゼルは俺にそう言う。
「ありがとう。ミュゼル」
俺はミュゼルに任せた。
「まきまきするにゃ」
ミュゼルはそう言って俺の頭に布を巻いた。
するとピーーーーーーー!!!
と笛の音が響いた。喧嘩中の街の人と黒龍団は喧嘩を止めてその一斉に笛を吹いた主を見た。
エリックさんだった。あの俺の鑑定をしてくれた。黒龍団のメンバー。
するとその笛を合図に一斉に衛兵たちが現れた!
「黒龍団を一掃せよ!」
兵士たちに命じるエリックさん。
え? なんだ? 一体なにが起こってるんだ。俺は地面に倒れながら続々と逮捕されて縄で縛られていく黒龍団を見ていた。
「まぁこれだけ人がいたら俺の出る幕は……出る幕は……ないかな」
俺はそう言いながら気が遠くなり気絶した。
◇
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