主人公!最強伝説の始まり!

「嘘だろ……筋力210……!」

「ハッタリだ。ハッタリに決まってる!」


フッっとガイウスは笑った。


「いるんだよなぁ。こういうやつ。筋力210。口で言うだけなら誰でも言えるからな。ほら俺だって筋力210。筋力210 」

とガイウスが言うと取り巻きたちがギャハハハハハハと笑った。


「ビビらせやがってこいつ」

「嘘つき野郎!」


散々俺を罵る黒龍団のメンバー


「おい、エリック! お前鑑定のスキル持ちだったな。よしいい余興だ! こいつの嘘を暴いてやれ!」

ガイウスがそう言う。


するとエリックと呼ばれるヒョロヒョロの男が歩み出た。

「ガイウス兄貴! 鑑定スキルは凄まじくMPを使うので今日はもう……」

エリックはそう言う。


「良いからやれ! 俺に逆らうんじゃねぇよ!」

ガイウスはエリックに脅しをかける。嫌だなこの感覚。昔を思い出す。


「はっはい!」

エリックは水晶玉を取り出してそこに魔力を込める。すると水晶玉は光り輝き宙に浮いた。


「なぁ! やっぱり出来んじゃねぇか! 嘘つくんじゃねぇよ! 出し惜しみすんな!」

黒龍団のリーダーのガイウスはそう言った。可哀想に。こんなリーダーだと身も心もズタボロだろう。


「えっ! レベルは……」


「おっなんだ正直に言ってみろ」


「レベル32筋力210。間違いありません」

エリックが震える声で言った。


一瞬シーーンと静まり返る黒龍団。するとガイウスが


「ギャハハハハハハ」と笑いだした。


「お前ここでボケてくるとか。マジかお前! 真面目な奴だと思ってたが、お前なかなか笑いのセンスあるじゃねぇか!」

ガイウスはエリックに言う。

すると取り巻きも再び笑いだした。


「エリックお前センスあるなぁ」

「ネタに走ってんじゃねぇぞ! 全く」

周囲の取り巻きたちが笑いながら言う。


「で、本当の数値は?」

ガイウスは詰め寄った。


「全部本当です。レベル32筋力210……です」

エリックは正直に言った。


再び静まり返る黒龍団。


「そっそれにクラスは魔王になってます」

エリックは言った。


更に静まり返る黒龍団たち。


「……エリックお前はクビだ」

ガイウスが静かに言い放った。


「えっ? どうしてですか! MPも残り少ない中頑張って鑑定したのに!」

エリックは言う。


「嘘つくんじゃねぇ! お前の言ってることは嘘だ。おい。あれを持ってこい!」

ガイウスは言った。


「おい、エリックお前ダメダメだな」

「出たよ。ガイウス兄貴の原始的筋力測定法」

ニヤニヤしながら取り巻きの連中は笑う。


俺はなんだかエリックさんが可哀想になった。


「よし来たな!」

ガイウスはそう言うとリンゴを手に取った。


「これを知ってるか。ただのリンゴじゃないぞ! エルダーアップルだ! 非常に固くミスリルの刃じゃないと切れないリンゴだ。それを! うおおおおおお!!!」

ガイウスはエルダーアップルを片手で握りだした。


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

ガイウスはこめかみの血管がキレそうな程に力を込める。


「流石っすアニキ! エルダーアップルの野郎苦しんでますよ!」

「もう勘弁してよぉー! って泣き入れてますよ! そのリンゴ!」

取り巻きたちが叫ぶ。


「おおおおおおおおおおおおお!!!!」

ガイウスは力を込める。するとリンゴからガイウスの手を伝って果汁が一滴、また一滴、垂れた。素早くその二滴を取り巻きたちがグラスでキャッチする。


「ハァッ……ハァッ……今日は二滴か。お前にこれが出来るか! 一滴垂らすだけでトロール級! 二滴垂らすとオーガ級! 三滴垂らすとミノタウロス級の筋力だ! さぁやってみろ!」


そうやって俺にエルダーアップルを渡す。何なんだこれは。


「えいっ!」

俺はエルダーアップルを握りしめるとパァンと粉々に吹き飛んだ。まるで水風船が破裂するようにパァンと弾け飛ぶエルダーアップル。


「えっ? これは何滴……?」

俺は聞いた。


ザワつく周囲の取り巻きたち。


俺はぺろりと手についたエルダーアップルの果汁を舐めた。

「あっ! 結構美味いなこれ」

俺は言った。


「おい! クロード! ふざけ過ぎだ! 服にかかったぞ!」

ミラーカは怒る。

「あーゴメンゴメン」

俺は謝った。


「ヤバイヤバイ……なんだこいつ」

「一滴二滴ってレベルじゃねぇ! 無敵じゃねぇか!」

「あのエルダーアップルが! 吹き飛んだ!?」

「嘘だろ! ガイウス兄貴って実は大したことないんじゃ……」


ザワつくガイウスの取り巻きたち。


ガイウスは冷や汗をかいていた。


不味い……このままじゃ俺が無能扱いされる。俺の威厳が無くなる……取り巻きたちの目の前で恥をかくわけには……どうしよう……なんとかこの場を収める方法は……


冷や汗をかきながらガイウスは足りない頭で考える。


「いやー今日さぁ。ポイズンビーの毒にやられてちょっと体力ヤバめなんだわ」

ガイウスが足りない頭で考えた結論がそれだった。


「アニキ! 本当ですか!」

取り巻きが言う。


「いやぁ! 右腕のとこ痺れちゃってさ! 刺された場所がさぁメチャクチャ痛くてさぁ! いや、マジ手が力入んねー。うわぁーこれ実質俺の勝ちだわー!」

ガイウスが言った。


「アニキ! 本当ですか! ポイズンビーの毒って相当ヤバイですよ! 毒の針がまだ残ってたらホントに死んじゃうので刺された場所を教えて下さい! 俺が毒を吸い出します!」

「アニキ大丈夫ですか! 俺も手伝いますよ!」

取り巻きたちが言う。


「いや、そういうことじゃなくて……わざとやってんのか。お前ら」

ガイウスは小声で呟く。


「いや! アニキのことが本気で心配なんです!」


「うおおおおおおおおおおお!!! うるせぇ! お前ら!」

と取り巻きに怒鳴った。


「悪かったな。騒いで」

そう言うとガイウスは俺の耳元に口を近づけ耳打ちした。


「すいません……本当にすいません……これで見逃してください……子分たちにバカにされたら俺終わりなんです……」

小声で俺に耳打ちする。今までの威勢はどこ行ったのかと思うぐらい弱気になっている。さっきまでのガイウスのデカかった体がもう縮こまって見えていた。


「おい。帰るぞ」

ガイウスが小声で言うとゾロゾロと黒龍団は帰っていった。なんだったんだ一体。


「大丈夫ですか? お客様」


どうやら店の店主と思われる女主人が声をかけてきた。


「リナも怖かったでしょう。大丈夫だった?」

女主人が聞いた。


「はい。ありがとうございます。ミランダさん」

リナは女主人のミランダにお礼を言う。


「あの……ありがとうございます……守ってくれて」

お尻を触られていたリナと呼ばれた少女はそう言った。


「あぁ。君も大丈夫だった? 本当酷いよね。あいつら。辛かっただろ。体を勝手に触られて」

俺が言う。


「はい。ありがとうございます。あの男の人達怖くてなにも言えなかったんです。私我慢しなくちゃダメだって思ってて。あの人たちを怒らせたらお店が壊されちゃうんじゃないかって思って、でも我慢出来なくて」

泣きそうになりながらリナは言う。


「我慢する必要なんてないよ。あぁいう奴らはこっちが我慢してるとつけあがるからね。ちゃんとキャーって叫んでくれて良かったよ」

俺は言った。


「クロード。ボクはもう眠いぞ。宿屋に帰ろう」

ミラーカはそう言う。


「あぁそうだね。店にも迷惑かけちゃったみたいだし、美味しかったよ。じゃあお会計を」

俺は言った。


「はい。銀貨60枚いただきます」

女主人のミランダは言う。俺はポケットから財布を取り出そうとする。? おかしい。あれ? 金貨があったはずなのに。


あれ? これなんだ。ポケットの中身を触るとなんだか変形した金属のようなものがあった。


俺はポケットからそれを取り出す。なんだこれ。溶けたような金。

あっ! そうか! ブラックドラゴンに燃やされた時に溶けてしまったんだ!


「あの……これでお支払いできますか?」

俺は変形した金貨を手に取り言った。



俺たちは店を出て宿屋に向かっていた。

「良いのか。クロード。あんな安請け合いして」

ミラーカはそう言う。


「しょうがないよ。お金が無かったんだから。冒険者ギルドに俺名義でお金預けてたんだけどちょっと引き出すのは危険かなぁ。生きてることがバレるし」

俺は言った。


「しかし、黒龍団にあの店のツケを全額払わせるなんてキミに出来るのかね」

ミラーカは聞いてきた。


「ま、なんとかなるでしょ。あいつらも話せば分かる奴らみたいだったし」


「まぁあぁいう奴らの共通言語は言葉じゃなくて力だからな。実はキミに適任なのかも知れないが……面倒くさいからあいつら全員殺そうかなぁ」

ミラーカは普通のテンションで言った。


「いや、それは流石に……」

俺は苦笑いする。ミラーカの殺すは本気の殺すだった。あの躊躇ない殺人を見て俺は確信した。


「これで姫君にキミを会わせるのが遅れてしまうな」

ミラーカは言う。


「遅れたらなにかマズイことでもあるの?」


「あぁ。多くの斥候が魔王を見つけるためにこの大陸に降り立っている。一番最初にボクが見つけたんだ。横取りされてたまるか!」

ミラーカは言った。


なんなんだ。そりゃ。俺の知らないところで争奪戦でも繰り広げられてるのだろうか。


俺たちは宿屋に着いた。


「で、なんで一緒の部屋なんだよ。しかもベット一つしかないし!」

俺は赤面しながら言う。


「仕方ないだろ。ボクが持ってるお金じゃこれが精一杯だったんだから」

ミラーカは言う。


「男と女なんだから抱き合って寝ればいいだろ?」

ミラーカは言う。


コンコン! ノックが鳴り響いた。

「はい!」

俺がドアを開ける。


「あーいらっしゃいませ。お二人さんね。狭いベッドですいませんねぇ」

と宿屋の女将らしき人が俺に言う。


「あと、お風呂のことなんですが。もう時間も遅くて誰も入ってないんです。ですから、お客さんお二人で貸し切りでいいですよ。どうぞ。お二人で楽しんでくださいね。では!」

そう言って女将はその場から離れた。


「……」

なんだったんだ。今の会話……


「なぁクロードお二人でお風呂で楽しめってどういうことだと思う?」

ミラーカが聞いてきた。

「いやぁ! 分かんないなぁ! いやっ! でもっ! ミラーカ入っていいよ。俺は今日風呂入んなくていいや」

俺は言う。


「どうしてだ? その気の使い方は逆にこっちが気を使う。気にするな。風呂に入れ」

ミラーカは言う。

「いやでも……流石に……」

「気にするな。恋人同士じゃないんだろう? だったら一緒に入れるハズだ。よしっ! じゃあ、風呂はどこかな」

ミラーカはそう言って部屋から出ていった。

「あっ! 待ってミラーカ!」

俺はミラーカを追いかけた。


次回お風呂回?

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