最終章
世界征服完了
レンツェが魔術学園の図書室でハーフェンから出題された課題を解いている時の事だった。
図書館の入り口のドアがガシャーンと勢いよく音を立てて開けられたと思ったらストラスがそこから駆け寄ってきた。
「ちょっとストラスうるさいよ! 図書室だよここ!」
レンツェが無作法なストラスを注意するがストラスはそんな事はお構いなしに、
「し……し……し」
慌てすぎて中々言葉にならない。
「ちょっと落ち着きなさい」
「し……師匠が!」
「え!? ケイン君がどうかしたの?」
「世界皇帝になったー!!」
バン!とストラスは持ってきた号外を机の上に置いた。
その見出しはこうだった。
<ケイン帝国、ケイン皇帝。世界中の国を傘下に収め世界皇帝となる!>
「すごい! ケイン君、遂に世界皇帝になったのね!」
「すげーよ! 流石、俺の師匠だよ!」
ストラスの騒ぎを聞きつけ他の生徒たちも号外に群がる。
「ケイン皇帝ってちょっと前までここの魔術学園にいたんだろ」
「あー確か赤ちゃんで入学してきたんだっけ」
「卒業生が世界皇帝ってすごくねー」
それらの声を聞いて、なぜかストラスは我事のように誇らしげにしていた。
「まー俺たちの師匠だからな。当然よ!」
ストラスはすぐに調子に乗るが、今やストラスとレンツェは魔術学園の最優秀生徒。
実力相応とまでは言えないが彼らが頑張っている事を把握している生徒たちの中でその言葉に突っ込むものは誰もいなかった。
「ちょっと記事をもっと見てみようよ。どうやって世界皇帝になったの?」
レンツェが促す。
ケイン帝国が吸血鬼王国に戦争で勝利してから各国から称賛の声が上るそんな中。
吸血鬼王国に単体で挑める人族の国は皆無の為、この時点でケイン帝国が人族の世界最強国家と呼んでいい状況となった。
更に吸血鬼王国との戦争時、竜王国から支援を受けて戦ったという事も人族の国々にとって衝撃的な出来事だった。
世界最強の国家が竜王国からの支援を受けている。
そういった状況下でケイン帝国からそれぞれ人族の国々に対して傘下に入るよう促す文書による知らせが来た。
それは断れば戦争となるような厳密なものではなかったが、人族の国々は一つ残らずケイン帝国の傘下に入るという決定を下した。
「みたいね。無血開城みたいに人族の国々とは争いにもならなかったんだ。」
「あったりめえよ、レンツェ。だって俺たちの師匠だぜ?」
とストラスは理由にもならないことを言う。
「ふーん、ケイン君、頑張ってるんだ。私たちも頑張らないとね。ところでストラス、ハーフェン先生の課題はやった?」
「いやーははー」
ストラスは頭をかいて笑ってる。これはまだやってないな。
「はい、じゃあ図書室なんでこれはここまで! 皆さんもそれぞれに戻ってください」
集まっていた生徒たちは散り散りに元いた場所に戻っていった。
いじめられておどおどしていたかつてのケインと出会ったばかりのレンツェの面影はもうそこにはなかった。
◇
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
「ん? どうした?」
バーストは自宅でパンの試作をしている。
ユウナと話し、お互い好きで思い出深いパン屋さんをやろうという計画になっていた。
幸いな事にバーストにはお金は多少はある。
もし失敗したとしても路頭に迷うことはない。
あの 【丸くて硬くて大きいパン】 のような自分たちの救いにもなったようなパンをいつか作れたらと思っている。
ユウナは何やら一枚の紙切れを持ってきたようだ。
「これ、ごうがいって言ってた。ケイン君が世界皇帝になったって」
「ケインが?」
号外を見てみると確かにそのように記載されてある。
「ほんとだ! あいつ遂に世界皇帝にまで成りやがった!」
「すごいねー」
バーストとユウナ、お互いケインに対しては恩義を感じている。
彼がいなければバーストはまだ闇の中に、ユウナは助かっていなかった可能性が高い。
「人族の世界皇帝か。じゃあ次は全種族を統一した世界統一皇帝か?」
「せかいとういつこうてい?」
「ああ、簡単に言ったら世界で一番偉い人だな」
「えーケイン君、ユウナより小さいのにユウナより偉くなるのー」
ユウナにとってケインは可愛い弟みたいなものらしい。
「まあーあいつもユウナには敵わないだろうがなー」
「そうだよー」
あはははー
未来のパン屋ではそんな幸せそうなバーストとユウナのなごやかな談笑が響き渡っていた。
◇
「それではお集まりの皆さん、皇帝陛下の入場です。」
帝国宰相セバスチャンの司会で式は進行する。
とことことこ
場所はケイン帝国が首都、帝国の城内の皇帝の間。
ここには世界中の国々から王やその国の代表者達が集められ片膝をついて頭を垂れて俺を待ち構えている。
ちょこん
と俺は王座に座る。
その後、皆が面を上げる。
世界皇帝就任の儀である。
「それではケイン様、世界皇帝としての一言をお願いします」
俺はバッ上を指差し宣言する!
「我こそは赤ちゃん皇帝!ケインなり!」
シーーン
皇帝の間には静寂が立ち込める。
「………ごほん! それではそれぞれの国々を代表して来場の皆様に帝国の法規と………」
セバスチャンの説明は続いていくがそれはもう俺の耳には入らない。
国の代表者達を前に大滑りしてそれどころではないのだ。
俺は現実逃避する為に窓の外を眺める。
空はいつも通り青く、大きな雲が幾つか青空を流れていた。
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本作は一旦こちらで完結とさせてもらいます。
最後までご愛読頂きまして大変ありがとうございました!
またレビュー、応援、フォロー等頂けました方もありがとうございました。
作者の大きなモチベになりました。
スピンオフ掲載や作者次回作など発表する事もあるかもしれません。
フォロー頂いている方はそのままにしておいて頂ければ幸いです。
すでに次回作も執筆中で近日中に上げられると思います。
それではまた作者次回作でお会いしましょう!
では。
感謝
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新たに連載を開始しました。
こちらもよければよろしくお願いします!
両親が勇者と魔王だなんて知らない
https://kakuyomu.jp/my/works/16816700428856757578
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