神の炎
「吸血を止めろだと!? 馬鹿な事を言うな! 悠久の時を生きる我ら。吸血という娯楽なくしてなぜ生き続ける事ができる?」
「いや、普通に生き続けられるだろ」
「貴様は悠久の時を生きるような長寿の狂気を知らぬからそのような事が言える。そこのトカゲにでも聞いてみろ」
「誰がトカゲだ!」
ラミアがすぐさま返す。
そういえば吸血鬼族と竜族って仲が悪いんだった。
「ふん、太陽の光が弱点などという虚弱体質の貴様らが我がご主人様に逆らうなど1000年早い。滅せられなくなければ言うことを聞け」
絶対に反抗したくなるであろう説得をラミアが行う。
「貴様らトカゲは図体に対して脳味噌の割合が少なすぎるからな。我らが高尚な考えが分からんのも仕方ない。今すぐ土下座して謝れば許してやらんでもないぞ」
「「ぐぬぬぬぬ」」(ラミア・フレデリック)
このままでは埒が明かない。
「で、どうするんだ?」
「ふん! パトリク、少しの間、此奴ら足止めしておけ。俺はその間に吸血鬼王国に戻る。貴様ももし負けそうであれば撤退して吸血鬼王国に来い」
「逃げるのか!」
「魔術王に暗黒竜。万が一がある。一旦は王国に戻り女王様に報告をしてからだ」
そう言うとフレデリックはその場から高速で姿を消した。
そうするとフレデリックに片膝をついていたパトリクが立ち上がりケインたちと対峙した。
パトリクは腰の剣を抜く。
「なんだその剣飾りじゃないのか?」
「ふん! 俺をただの貴族と思うなよ。元々盗賊からここまで成り上がったんだ。剣も魔術の腕は元々それなりにはある。しかし、この力!」
ブワーーーー
とパトリクは自身の魔力を周囲に発散させた。
「素晴らしい! 少なく見積もってもSランク相当。貴様らでこの力、試してやるわ!」
そう言うとパトリクは魔力波を放ってきた。
屋敷の壁が吹き飛び、俺たちも吹っ飛ばされる。
パトリクは浮遊術を使えるようで宙に浮かんでいた。
それなら都合がいい。俺はパトリクを念力魔法でぐいっと遥か上空に引っ張り上げる。
レイングラードの街の遥か上空。
夜の街の建物、家屋ももはや点在する光の豆粒のようにしか見えない。
夜の空だが今日は満月。
月明かりでその姿はよく見える。
「ここでやろう。思いっきり力を振るいたいんだろ?」
地上部ではラミアがケインの意図を把握してレイングラード全体を結界で囲った。
「ゔゔーーゔぉお゛お゛お゛お゛っ!!」
パトリクはその力を解放し、闇の闘気をまとった。
最初から全開でいくらしい。
「はっ!!」
掛け声と共に横一線、俺目掛けて剣を振るう。
シュン!
俺は避けるが、剣撃が放たれたその先は……
空が……雲が上下真っ二つに割れていた。
流石、凄まじい威力だ。
「はははははははは!! これだ! この力だ! そうだ俺は絶対者になりたかったんだ! 俺を虐げ、虫けらのように扱ってきた物たちが無条件に首を垂れるような!」
『ダークネス・スティール!』
パトリクから始まり辺りが闇に染まっていく。何だ?
力が吸い取られていく? 吸収系魔法か!
『アライネス!』
光系魔法の無効化により闇吸収を無効化。
辺りの闇も晴れた。
少し魔力を持っていかれたか?
パトリクは奪った魔力で闇闘気を更に強化して――
俺に踊りかかってきた!
魔力剣を現出させ応戦する。
くっ早い! 前世で戦った吸血鬼貴族のファイブよりこいつ強い!
このままでは埒が明かない。
俺は普通の身体強化ではなく、無限魔力を底無しに投入した極限強化を使用する。
これはできれば人智を超えるような力なので使いたくなかったが――
シュ!シュ!シュ!!
途端、パトリクは俺の動きについてこれなくなり、剣撃によってダメージを受ける。
しかし、その剣撃による傷は流石上位の吸血鬼貴族、すぐに自然治癒してしまう。
「くくくっ、随分と早くなったようだが、それでは俺を殺せんぞ!」
ならば――
シュ!シュ!シュ!!
一旦、すぐに治癒が追いつかない程、切り刻んでおいて――
『アルティメット・インフェルノ』
別名神の炎。
ブワァーーーーーーー!!
まるで夜の空に太陽が現出したような輝きを放ちながら神の炎はパトリクを焼き尽くす。
パトリクはすぐに消し炭になり、そこから回復しようとするが――
俺はインフェルノに更に魔力を投入して火力を上げる。
消し炭から、塵に離散していき、最後には塵も無くなった。
パトリクはその存在ごと綺麗さっぱりこの世界から消去された。
これが夜は不死身の吸血鬼を殺すケインの方法だった。
闇夜には満月が怪しく輝いている。
神の炎は地上からはどう見えたんだろう。
そんな事を考えながらケインは地上に帰還した。
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