奥の手
「あれ? ブリストルって亡くなったんじゃ……」
「はい、亡くなっています。竜族は死んでも肉体は数百年は腐敗しないので。おい! ジルベルト! 貴様、死者への冒涜だぞ!」
「は! なんとでも言え! イネス! 貴様から集めたダークエネルギーでじじいを復活させてやる!」
ジルベルトはおそらく自身がダークエネルギーといった黒くみえる何かをブリストルに注ぎ込んでいる。
しばらくするとブリストルの眼が開き、黒く怪しく光った。
「じいちゃん!?」
「喜べ、イネス。お前のじじいは闇の戦士として復活したぞ!」
「くっ外道が!」
「どういう事だ? ラミア」
ジルベルトがブリストルの亡骸にかけたのは禁忌の闇魔法らしい。
死者を思いのままに操る事ができる。竜族は死後の肉体の強度は当面は変わらないので元八竜のブリストルは最強の闇の戦士足りうるとのことだった。
「じい……ちゃん…………」
「イネス……君はちょっと下がっててくれ」
イネスに今、ブリストルと戦わせるのは酷だろう。
「ラミア、ジルベルトを倒せばブリストルにかかった魔法は解除されるか?」
「はい! 術者を倒せば無効化されるはずです」
「じゃあ、ラミアはちょっとブリストルを抑えててくれ。俺がさっさとジルベルトをぶっ倒す!」
俺はジルベルトにラミアはブリストルと向き合う。
「は! 俺を倒すだと!? 赤子風情が図にのるなよ! 暗黒強化だ!」
ジルベルトは先程、ブリストルに注ぎ込んでいたダークエネルギーと呼ばれるものを今度は自身に注ぎこんでいた。
ジルベルトの魔力、そして、肉体強度が跳ね上がっていく。
「はあぁーーーーーー!!!」
ジルベルトの人化していたその姿はもはや人間の姿ではなくどちらかと言えば魔族に近い。
漆黒の甲冑ような外皮に、黒い眼。昆虫を人化したようにも見えた。
「素晴らしい! さすがは竜騎士のダークエネルギー桁違いだ! 今、俺に勝てるものはこの地上にいない! 貴様ら皆殺しにしてやる!」
キュィーーーーーン
俺の方はというと無限魔力の圧縮が終わった所だった。
「よかったなあ、じゃあこれでも食らえ!」
俺はそう言って圧縮した魔力弾をジルベルトに投げつけ………直撃した。
バリバリバリバリバリバリーーーー!!
「あばばばばばばばばっーー!!!」
魔力弾はそれ自体が雷撃のようにジルベルトの形体を物理的にありえないような形体に時には変えながら上、下、左、右と一瞬のうちにジルベルトを飲み込みながら移動して、そして最後は地面に激突して大爆発を起こした。
ドカーーーーーーーン!!!
俺は爆発が広範囲におよばないように障壁魔法で爆発範囲を覆う。
爆煙が空高く駆け上がっていった。
シューーーー
爆煙がしばらくして晴れ、障壁魔法を解除すると――
「邪神、グンナル様………」
ジルベルトが最後の断末魔を残し、息絶えていった。
邪神?
「やったみたいだな」
すると別でやりあっていたラミアとブリストルも、
「ここは?」
とブリストルが自身を取り戻し、対面するラミア、そしてジルベルトの亡骸を見て、
「ああ、そういう事か」
と状況判断したようだった。
ブリストルはイネスの方へ移動する。
「じいちゃん……」
「元気そうでなによりじゃの。すまんのどうやら迷惑をかけたようで。姫まで来てもうろうて」
そう言うとブリストルはイネスの頭をやさしく撫でる。
「あの世でみとるからの。元気でな。我が愛おしの息子よ………」
そういうとブリストルの魂は―――
「どうもありがとうございました!」
イネスはペコリと頭を下げる。
もう大丈夫みたいだった。
「ブリストルの亡骸はアデレードで引き取ってもらうように父に伝えとく。竜王の庇護下にあれば誰も手を出せないだろうからな。葬儀も元八竜だ盛大に送ってもらおう」
「姉ちゃん! ありがとう!」
これにて一件落着かな、と思っていると。
「ケイン………兄ちゃんでいいの?」
「ああ、ご主人様は転生されているからな。お前より実年齢は全然高い」
「俺、ケインの所で働きたい!」
「え!?」(俺・ラミア)
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