邪竜

 敵のボスと思われる奴は部下から状況について説明を受けている。


 傍目からも魔力は高く、肉体強度も強そうで相当に強そうに見える。

 だが何か禍々しさを奴から感じるのは何故だろう……


「奴は!?……」

 ラミアは何か敵のボスに心当たりがありそうだ。


「どうした? 知り合いか?」

「いえ、面識はありません。が、奴は竜族です。そしてこの禍々しい気。奴は邪竜です」

「邪竜?」

 そこまで俺たちがやり取りをしていた所で、


「おい、お前ら! ん? なんだ竜族の姫までいるじゃないか? どういう事だこれは?」

 敵のボスはラミアに気づいたようだ。


「お前は何者だ?」

 ラミアが問う。


「我は邪竜、ジルベルトなり。ラミアだったな。竜騎士を助けに来たのか。だがこいつはこちらの手の内。いくらお前でも我らには敵わんぞ!」

「ご主人様、我々とジルベルトとイネスをテレポートで荒野に飛ばせませんか? ここでは全力で戦えません」

「分かった!」

 俺はそう言うと俺たち、そしてジルベルトとイネスを近場の荒野にテレポート魔法で飛ばした。


 ヒュン!


「………ここに連れてきたと言う事は我らとやり合うという事だな。後悔するなよ」


「グラードはちょっと下がっててくれ」

 グラードもここには連れてきたがちょっと荷が重いだろう。


「中々面白い見せ物だな」と軽口を叩きながらグラードは後方に下がる。


「久々に本気を出します」

 そういうとラミアは黒闘気を身に纏い出した。

 黒闘気とは暗黒竜の固有スキルでその闘気を纏うと爆発的に攻撃力と防御力が増す。

 暗黒竜を最強の竜種としている固有スキルだ。

 俺も見るのはラミアと戦った時以来だった。


 黒闘気を纏ったラミアは目も白目部分が真っ黒に変色する。


「ご主人様、私がジルベルトとやります。ご主人様にはイネスの催眠の解除をお願いしてもいいでしょうか」

「任せろ! そちらは任せた!」


 俺がそういうとラミアはジルベルトに踊りかかっていった。


 イネスに対しては即座に拘束魔法をかける。

 魔力でできた四柱がイネスの周りに現れ、そこからイネスを拘束する為の魔力線が発せられる。


 これで動けないはずなのだが……

 ――イネスは僅かだが俺に向かってこようと動けている……なんてやつだ。


 俺は無限魔力のスキルで無尽蔵に四柱に魔力を注ぎ込むとやっとイネスの動きが止まった。

 良し! それではこの状態でイネスの催眠を解く。


「フェアリィソング!」

 全状態異常を回復の光魔法を発動

 イネスを光が包み込む。イネスはというと……


「うゔーーあーぐあぁーーーー!!!」

 闇属性の催眠魔法が相当イネスの奥深くまで入り込んでしまっているのだろう。

 イネスはひどく苦しんでいる。耐えろイネス。もう少しの辛抱だ!

 俺は魔法をイネスにかけ続ける。


 シューー

 と音を立て、イネス背中から黒煙のようなモヤが抜け出た。

 良し! これで大丈夫なはず。


「イネス、大丈夫か?」

「うあ、僕は? ああ、憎しみに駆られて、ああ、どうしようななかった……」

「そうか、もう大丈夫だイネス」

「ありがとう! あなたは?」


 ドーン!

 ラミアと空中でやりあっていたジルベルトが降りてきた。


「イネス! ちくしょう催眠魔法が解けてやがる! こんなに短期間にしかもイネスを拘束して! お前何者だ!?」


 俺は天高くを指差し、

「我こそは赤ちゃん皇帝、ケインなり!」

 と高々に宣言した。


 ヒューーーーー

 隙間風が吹いている。


「イネス、元に戻ったのね!」

「!? ラミア姉ちゃん!」

 イネスはラミアに抱きつく。

 うん、なんだこの気持ちは?……まあ、いいや。


「くそう! こうなったら予定外だが奥の手だ!」 

 ジルベルトはそういうと異空間から何かを取り出す。

 その何かは老人のように見える?……


 ――「じいちゃん!」

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