バカなのか?

「長期の用心棒のご依頼ですか?」

「ええ。」

 突然ギルドに現れたメイドと赤ちゃん。

 ギルド中から好奇の目が注がれていた。


「おい、ね―ちゃん用心棒だったら俺がやってやるぞ。その代わりしもの世話をよろしく頼むぜ!」

 ギャハハハハハ


 ああ―この感じ懐かしいなあ。粗野な奴らの悪ノリ。


「用心棒のランクに何かご希望はありますか?」

 さすが冒険者ギルドの受付だ。外野の野次はガン無視で進める。


「ランクの指定はないがなるべく強い奴がいい。」

「う――ん…少々お待ちくださいね。」

 書類を確認しているようだ。


「強さという事でしたちょうどあそこ」

 とギルド員が指さす方向に一人の男が座っている。

「の方でした申し分ないかと。Sランクの冒険者です。ただ受けて頂くのは難しいと思いますが…」

 ほう、Sランクの冒険者とは!こんな所にいるのか。


「なんで受けてもらうのが難しいんだ?」

「それは話して頂いたら分かると思います。直接交渉して頂いても大丈夫ですよ。」


「なあ、あんた。」

 ラミアがその男に話しかけるとうるさかった外野がシ―ンとなった。

 なるほど外野からは要注意人物であるようだ。


「用心棒をしてもらえないか?専属契約をできたら結びたい。」

 男はラミアをじ―と見つめている。

 さすがに暗黒竜という事は分からないだろうが何か感じとっているのかも知れない。


「あんたそんななりをしているが相当強いだろう。なんで用心棒なんか必要なんだ?」

 ほう。人化したラミアの強さを戦わずに見抜ける者はほとんどいない。

 やはりこの男相当強いな。

 それに魔力も相当数持っている。試してみるか…


『ラミアの強さを見抜くとはさすがだな。』

 念話で話しかけてみる。


「ん!?」

 と明らかに表情が変わった。

 やはり念話を扱えるみたいだ。


『ラミアの本性は暗黒竜だよ。そして俺は転生前は魔術王と呼ばれた魔術師だった。』

 男は口を開けてアホ面になって驚いている。

 なかなかいい反応だ。


『名はなんと言う?』

『グラ―ド……』

『俺はケインだ。でこっちはさっきも言ったがラミア。俺たちの仲間になって欲しい。』


『なぜ?』

 警戒を崩さずグラ―ドが問うた。

 外野連中は俺たちが突然話さなくなったので(裏で念話で話しているが)訝しんでいるようだった。


『強者を仲間に欲しいから。ラミアが居れば十分だろと思うかも知れないが本性は暗黒竜だから手加減ができない。って言うのが理由だ。』

『……………。』

 口に手を当て考え込んでるようだ。


『強者を仲間にしてどうするんだ?何を目指す?』

 よくぞ聞いてくれた!


 俺はラミアの抱っこから離れ、グラ―ドが座っている席のテ―ブルに立って天高くを指差し

「あうあうあ――!(俺は皇帝になる!)」


 驚いたグラ―ドはあんぐりとまた口を開けてあほ面になっている。

 外野連中は俺がグラ―ドに無礼を働いたと見てヒヤヒヤしているようだった。


『………バカなのか?』

 なんだこいつ!失礼な!

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