魔術学園卒業

 どうやら隠し部屋前はボスがおり、ボス戦についてはラミアの威圧を持ってしても回避できないようだ。


 部屋っと言っても洞窟内の少し広い空間なのだが、そこには2刀を手にした鎧が置いてあった。

 置き物のように動かなかったが我々が近づくと目が妖しく光り、ガチャガチャと音をさせながら動き出した。


 こんな深い階層のボスだ。おそらくただの鎧戦士ではなく、特別な強さを持っているのだろう。

 そのように思っていると―――


 バシィィィィィィィィ!!

 両手に持っている2刀から強烈な剣撃が放たれた。


 キィィィィィーーーン!!

 俺のバリアに阻まれるが……10重に構成されているバリアの3層ほどが破壊されている。

 こんな事は今まで一度もなかった。こいつ相当強い!


「レンツェとストラス、念の為に部屋の外へ退避! ラミアしばらくこいつの相手頼む。攻撃はしないでくれ。ラミアの攻撃にダンジョンが耐えられるか分からん。」

「かしこまりました。」


 ラミアに任せている間、俺はというとスキル無限魔力によって無尽蔵に魔力を引き出し、それを圧縮する。

 キュイィィィィィーーン


 ラミアは腕の人化を一部説いて、鎧戦士の攻撃を防いでいる。


「よし! 準備できた! ラミアちょっと離れて!」


 ギギギ、キーーーン

 ラミアと鎧騎士は鍔迫り合いからお互いに弾き合いながら離れた。


「アルティメットグラビア!」

 重力魔法を発動!


 ブーーーーーーン

 鎧戦士はどんどん圧縮されていき、米粒程の黒い点となった所で――

「ワームホール!」

 次元の狭間にその黒い点を飛ばした。


「すげーーー、なんだ今の魔法……」

「怖かったぁ…」

 ストラスとレンツェは特に怪我などないようだった。


「確かこの辺りで、、」

 俺は部屋の壁の岩肌を触り、一部が動く取っ掛かりを見つけてそれを動かすと――


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 秘密の扉が開き、隠し部屋が現れた。


「すげーーー、あ! 宝箱があるぜ兄貴!」

 ストラスはかけより、カチャっと宝箱を開ける。


「うん? 何かの液体が瓶に入っているけど……これだけ?」

「これが今回の目的のオリハルコンの雫だよ。伝説級で売値がつかないくらいに貴重なもんだ。」

「ひぇーーーーー」

 ストラスの瓶を持つ手が震えている。おいおい、落とすんじゃないぞ。


 とまあなんだかんだでこれで卒業課題はすべて達成だ。これで、晴れて――


「これで俺は卒業だ! 今までありがとな! またなんかあったら顔出すから!」

「……………兄貴…」

「…………まだお別れじゃない。帰り道もあるし…」


 ストラスとレンツェは寂しそうにしてくれている。

 前世は貧乏過ぎて学校にも行けなかったから学園生活も中々楽しかった。

 何よりこうして二人と友達になれた事が嬉しい。


 この時はまだ知る良しもなかったが、この二人、ストラスとレンツェは、魔術国家パラツインにおいて、将来、国家の危機を幾度となく救い、2大英雄と呼ばれるようになるのはまだまだ先の話だ。


 もしかしたら規格外のケインとラミア、二人とこうした経験を経ていた事が彼らの常識的な限界を打ち破るのに役立ったのかも知れない。




 ドン!

 俺は机の上にオリハルコンの雫を置く。


「ほら! 取ってきたぞ!」

「わーほんとに取ってこれたんだ! すごい! ありがとう! これで20年停滞していた研究もはかどるわ!」

 20年も停滞していた研究ってなんだろう? 俺は興味を惹かれ――


「ちなみにどんな研究だ?」

「えっ気になる!?」

 嬉しそうにハーフェンはリアクションしている。

 おそらく普段誰にも彼女の研究に興味を持たれていないのであろう。


「オリハルコンの雫はねー、エルフの涙と組み合わせることでなんと!……背中の痒い所まで手が届くように柔くなるヒーリング液体魔法。肩関節柔らか魔法が出来上がる予定です!」

 そうだ、こいつくだらない魔法ばっかり研究しているんだった。聞くんじゃなかった。


「赤竜の爪はねー………」

 俺はもういいですと言う事も今更できず、その後、数時間、ハーフェンの研究内容について聞かされる事になった。

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