カチコミ

『ちょっとなんでユミルなんですか?』

 予想通りラミアから追及が来た。


『グラ―ドがいるから念話は大丈夫だろ!後は毎回ラミアだとあれだから…』

『あれってなんですか?脳筋とへなちょこな小娘で大丈夫なわけないでしょう。ねえセバスチャン?』

 セバスチャンに聞くか!?よし!セバスチャンフォロ―を頼む!


『確かに戦場になる可能性がある所にユミルを連れて行くのは不安がありますねえ…』

 おい!フォロ―しねえのかよ!うん?こいつ俺だけいい思いさせないつもりか…


『そ、それは…結界と身体強化でユミルが傷を負う可能性はほぼゼロだし、まだユミルのおっぱ…いや、ユミルもずっと留守番は嫌だろう!』

『おっぱ…?』(ラミア・セバスチャン)


『これは当主命令だ!!異論は認めない!』

 負けそうだったので最終手段を使って押し切った。

 ラミアとセバスチャンは口を尖らせていたがこれぐらい許してくれ。



 ヨ―デル家領地の内、領主の邸宅があり、またノストラ―ドファミリ―の本拠地でもある街プリストル。

 おそらく我々が本拠地としている街の10倍程度の規模があるのではないかと思われる。

 街の中心部の広場は露天が並び、人通りも非常に多い。


「さて敵の本拠地には来たがこれからどうしますかね…」

 グラ―ドが問う。


 グゥ―――

 ユミルのお腹が盛大になった。


「おっ腹の音で返事か(笑)。じゃあ当主、飯でいいですね。」

「ばぶ―――!(いいぞ!)」

「い、いや、これは別に返事をした訳では(汗)。お食事にすると言うなら構いませんが…」


 適当なレストランを選び、各々食事を済ませると店内入り口の清算箇所付近で何か揉めていた。


「ですからそのようなお金を払う事はできません!」

「ああ!?俺らがノストラ―ドファミリ―の者だと知って言ってんのか!?こんなチンケな店すぐにでも潰せるんだぞ!!」

 おそらくみかじめ料を要求されてそれを店主が拒否しているようだった。


『ちょうどいい助けにいくか。』


「おい!何してるお前ら!」

「ああん、てめえらこそなんだ!すっこんでろ!」

 輩どもがそう言った瞬間にグラ―ドはそいつらをボコボコにした。

 手が早すぎるだろ。


 会計を済ませて輩どもを外につまみ出した。



「おい、お前らノストラ―ド組の者だって。事務所はどこだ。」

「ぐぐぐ、いててて……街の南西の方向の端ら辺だよ。」

『ん?本部の場所とは違うのか?』


「本家は中心部にあるんだろう。支部がいくつかあるのか?」

「この街には2つの支部がある。」

『じゃあとりあえずこいつらの支部を潰そうか。』


 ぐえ!

 グラ―ドはトドメの一撃を入れて気絶させた。





 近所で聞いたところ、この建物がノストラ―ドの支部で間違いなさそうだ。

 3階建てで細長い形状をしている。

 入り口は頑丈な鉄製で一つしかなさそうだった。


 その鉄製の両扉を見て、グラ―ドがニヤリとする。

 嫌な予感がした為、『おい!』と声をかけるが…


 ドゴ―――――――――ン!!!

 とグラ―ドはなんとその扉を蹴破った。

 鉄製にも関わらず蹴破られた後の扉は粘土細工のようなひん曲がり方をしていた。


『好奇心で聞くんだがなんでわざわざ扉を蹴破った?』

『鉄製両扉と俺、対峙すればこれ勝負なり。』

 うん、聞くんじゃなかったな。訳分からん。


 だ、誰だ―!?カチコミか―!?

 音を聞きつけた組員たちが降りてくる。


 チ――――ン

 支部にいた組員たちは雑魚ばかりでグラ―ドは剣を抜くことなく体術のみで全ての組員を戦闘不能にした。


「ちっ雑魚ばっかだなあ。おいお前らこの街にまともな奴はいるのか?」

「くっ、ちきしょう……今のうちに調子に乗っとけ!コインブラさんがいればお前みたいな…」

 ドカッ

 グラ―ドはトドメをさした。


「ふん、面白そうなのはいるみたいだな。当主どうする?この後。」

 空は夕方で赤く染まりつつあった。


「あうあ――あうあう。(もう遅いからそろそろ宿を取ろう。)」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る