力を望む者

 その後、バーストは逃げ出した少女を奴隷商に引き渡し、任務完了したとノストラードに報告した後、ケインと対峙している。


「少女を奴隷商に引き渡したって? お前には人の心はないのか?」

 ケインという赤ちゃん皇帝が話しかけてくる。

 噂通り本当に赤ん坊の形をしてやがる。

 ふざけた話だ。


「人の心だと? レイングラードの貧民街でそんな物を持っていたらすぐに食われて終わりだ。とうに捨てたよ」

「外道が」


 ケインが膨大な魔力を保持しているのは分かった。

 体は小さいがその魔力のオーラによってその姿はバーストにとって巨大に感じられた。

 バーストは戦闘体制に入る。



 SSSランク

 今まで戦った事があるのはSランカーまで

 どれほどのものなのか

 両手短剣を抜き、前方でクロスさせる

 そしていつもの歪んだ笑みが自然と浮かぶ

 これは自分が興奮状態が高くなった時になる癖だった


 バーストは空間支配系能力の

 ショートカットをいくつか配置した

 このショートカットはバースト以外には認識できない


 ショートカットは指定地点AからBへのショートカットを作った場合地点Aに到達すると瞬時に地点Bにワープするというものだ。もちろん地点Bに相当するものはケインの近くに散乱させてある。




 さあ踊ろうぜ!!!

 バーストはケインに踊りかかった


 バーストは地点Aまで到達

 瞬時に地点Bのケインの背後に移動

 そして切りかかる…………が!!


 避けた!?

 勘か?



 ケインは何でもないような顔をしている

 流石にやるな……

 だがここまでの攻撃なら今まで避けた人間はいる

 次を避けられるか!?


 バーストはお手玉の王にように二つの短剣を空中で投げ回す

 その内の一本をケインに投げつける

 投げつける探検はケインに投げつけたと見せかけてショートカットに投げている

 そしてそれと同時に自分もショートカットに移動する

 

 短剣がショートカットで

 ケイン左方近くに瞬時に移動したと

 同時に自身はショートカットでケイン右方向近くへ移動し

 攻撃を繰り出す


 これでどうだ!!


 しかしケインは

 短剣はかわし

 自身の攻撃も魔法剣を現出させ防ぐ!


 今のを防げるのか!?

 今までバーストのこのコンビネーションを

 かわせた奴はいなかった



 ケインは自身の周りに魔力の膜のようなものを作った

 身体強化の強化版だろうか

 上等だ!




 バーストは更にギアを上げていく

 短剣を現物二つだけでなく魔法短剣を複数個現出させた


 ここから先の戦闘はバースト自身も未知の領域

 今まで戦いで自分の力を出し切った事はなかったからだ


 スキル:クロックアップを使用する

 普段このスキルを使用する事はない

 このスキルを使用しない理由は思考が早くなりすぎ

 一種の狂気的な状態になり

 平常な状態になかなか戻って来られなくなるからだった


 ただ今回は戻れなくなってもいい!

 いけるところまでやれるところまでやってやる!




 またバーストはケインに躍りかかった


 複数のショートカットに複数の短剣

 それらを全てを用いながら

 瞬間的に絶え間なく次々と攻撃を加えていく

 目にも止まらぬ攻撃

 というのを正に体現したような攻撃スピードだった




 ノストラードはその戦いは最早人間同士が戦っているとは思えなかった。

 キン! キン! という剣同士がはじかれる音と、

 時折、鍔迫り合いで一瞬だけ、二人の姿が目視で確認できるだけで、基本的には音が聞こえるだけで目でその動きを追う事はもはや不可能だった。




「ゴボゥヴーー!」

 ケインの拳がバーストの脇腹に突き刺さる。

 バーストはまずい次は左フックが来る! と予想はできたが脇腹のダメージですでに動けず――

 ゴシャア!!

 と左フックが決まり地面に崩れ落ちた。




 最後は肉弾戦で決着がついた。

 ケインは大の字に倒れているバーストに歩いて近づく。


「……奴隷商の貴族は誰だ」

「…………パトリク = = マクニース卿だ」


 ケイン達はそれを聞くとその場から立ち去っていった。





(負けてはダメだ! 絶対に負けてはダメだ! 強くならなければ! 強くならなければ!!)

 焼き付くような熱情がバーストの心の底から湧き起こってくる。

 バーストは自身でも理由がわからなかったが異常とも言えるような強さへの執着があった。

 その時――


 誰かがそばにいる?

 気配を感じる。先程のケイン一派の連中ではなさそうだ。

 起きあがろうとするが先程のダメージがまだ残っており、すぐには起き上がれない。


「力が欲しいか?」


 声の主を見てみるとそれはパトリクの所の執事だった。

 なぜこんな所に? 依頼主をバラした俺を消しにきた?

 そのバースト表情から執事は考えを読み取ったのか――


「…………お前を消しに来たわけではない。力が欲しいか? と聞いている」

「……欲しい……力が欲しいッ! 誰にも負けないような力がッ!!」


 この返答によってバーストはある場所へと導かれる事になる。

 それにより停滞していたバーストの運命の歯車が一気に回り出す事になるのであった。

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