帝国建国宣言

<ケイン帝国建国宣言>

 ここにケイン帝国の建国を宣言する。

 皇帝はケイン(齢い0歳)とし、帝国法規については後日公示する。

 周辺諸国は直ちにケイン帝国に従う事。

 逆らう場合は逆賊として討伐を行う。



「なんじゃこの書簡は!ケイン帝国?皇帝が0歳だと!?ふざけておるのか!!」

 ヴェラクルス国の国王ことヴェラクルス4世。

 送られてきた書簡をワナワナと怒りながら国王は眺めている。


「逆らう場合は逆賊として討伐するじゃと!逆賊は貴様らであろうが!!」

 書簡を読み終えると怒りを爆発させて破り捨てた。


「カルロ!反乱地域は!?」

 ヴェラクルス国の宰相ことカルロ。

 国の統治実務は実質的にカルロが行っていた。


「反乱地域はカイゼル地方、及び、ヨ―デル地方とエリ―ゼ地方になります。」

「カイゼル地方はまだ分からんでもないが、ヨ―デル地方とエリ―ゼ地方もじゃと!?あそこは侯爵貴族が統治しておったであろう。全く嘆かわしい。」


「すぐに討伐しましょう!」

「いや反乱勢力を明らかにしてからだ!」

 会議の場に集まっている大臣連中が各々意見を述べる。


 ヴェラクルス国の一地方からの突然の建国宣言により、国王と大臣一同、閣僚が集まり緊急会議が行われている。


「実は反乱勢力の中核にあのセバスチャンが居ることが明らかになっています。」

「………………。」

 シーンと静まり返る会議室。


「あのセバスチャンが……復讐か………。」

「まあ逆恨みでしょう。追放されたのは自業自得ですから。」

 セバスチャン追放の謀略を張り巡らせた本人、カルロは意見したものに答えた。


「セバスチャンが敵となると……」

「敵も勝算を持って挑んでいると見るべきで……」

 大臣連中もそれぞれ意見を出すが…

 セバスチャンの有能さを熟知している大臣連中は先程までの勢いが若干消沈している。


「セバスチャンは爵位も取り上げられ今は平民の身じゃ。たかだか平民の分際で我に逆らうとは!」

 人材の能力ではなく、貴族の階級でのみ物事を判断する国王は怒りをあらわにした。


「反乱地方で爵位を持っている物はすべて取り上げ!見せしめとして奴隷地方としろ!それ以外をどう対処するかはお前らで考えて実行しろ!」

 国王はその剣幕のまま会議室を後にした。


「それでは反乱勢力をどう対処するかだが…何か案があるものがいるか?」

 カルロは仕切り直すため、議論の音頭を取る。


「兵を送り、制圧で。」

「兵糧攻めも可能かと。」

 大臣達から次々と案が上げられた。


 1時間ほどかかった議論だが最終的には…


「それではとりまとめると、ヴェラクルス国は戦時の有事体制に移行、いつでも派兵できるように臨戦態勢とし、商業および兵糧攻めを開始。いつ攻め込むかは敵勢力の分析が終わってからでいいな。」


 カルロが取りまとめた内容に大臣達はそれぞれ同意した。



 会議後のカルロの宰相室にて。

 窓から外を眺めるが今日はあいにくの雨だった。


 かつてのセバスチャンの姿を思い浮かべる。

 自身の上司だった頃の奴の姿を。


 カルロは内心燃えていた。

 正攻法では難しかっため、謀略を張り巡らせセバスチャンを追放してやっと手に入れた現在の地位。

 宰相としての名声に権力。

 決して手放すつもりはない!


 一方その頃、ケイン達も同様に。




『まずは私が行ってヴェラクルス国の王都を火の海にしてやりましょう!」』

『まてそれなら俺が王都の城に乗り込んで全員ぶちのめしてやるよ!』

『ラミアとグラードはちょっと黙っておこうか。』

 ケインたちも同様にヴェラクルス国に対する戦略会議を主要メンバーを集めて行っていた。

 いつものようにラミアとグラードは脳筋思考を披露している。


『現実的なのは俺がラミアに乗って乗り込むかなと思うがどうだろう。』

『えっケインちゃんもそういう思考なの?』

 エリーゼが驚き尋ねてくる。

 いやあの二人と同類にされるのはちょっと心外なんだけど。


『そうですね!ご主人様と共に向かってすべてを滅しましょう!』

『いやすべては滅さないから。ラミアはあくまで威嚇。戦っても勝てませんよっていうね。』

 単純に暴れたいのだろう、ラミアはぶーたれている。


『暗黒竜のラミアと俺の魔力を示せば戦わずしても勝てるかなって。セバスチャン、ヴェラクルス国の戦力ってどうなの?』

『曲がりなりにも一国でありますので兵数、兵力では我々より上です。ただ個の力で言うと注意すべきは一人だけかと。』

『やつか。』

 グラードも知っている人物のようだ。


『ええ、魔法剣士ハイリゲン。ヴェラクルス国最強の男です。』

『俺もあいつには勝てないな。』

 ほう、グラードよりも上かあ。それは大したもんだ。


『プププッ。』

『何笑ってやがる腐れ竜。剣だけならなんとかなるがそれに加えて魔法も使われたらきついんだよ。』

『誰が腐れ竜ですか!この脳筋剣だけ男!!』

 という事は剣だけならグラードと同等くらい。

 魔法の腕もなかなかといった所なのだろうか。


『じゃあ俺とラミアが乗り込んだ時に対処できるとしたらそいつだけって事か。セバスチャン、暗黒竜と一緒に俺が乗り込むって先方に伝えてくれるか。』

『かしこまりました。何日後に乗り込まれますか?』

『うーん、伝達に時間かかるかもだから3日後にしとこうか。』

『はうあ!!』


 セバスチャンがいきなり素っ頓狂な声を出した…

 ーーと思ったらエリーゼにお尻を触られたらしい。


『ちょっ、いきなりやめて頂きたい。』

『あら、じゃあいきなりじゃなかったらOKって事?まさか本当に乗り込むなんて……私、も・え・ちゃ・う。』


 これから先、俺達のPTはずっとこんな感じなのだろうか…

 ちょっと頭が痛くなるが、まあなるようになれだ!

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