親戚との邂逅
「うるせえーー!この野郎!てめえなんか兄貴にかかったらイチコロだぞ!」
廊下を歩いていると聞き覚えのある声がしてきた。
どうやら揉めてるみたいだ。
「兄貴!」
ストラスは俺の顔を見るなり、そう呼んできた。
知らんぷりして通り過ぎたかったんだけど。
どうせろくでもない事だろう。
「兄貴?こいつが?」
揉めている相手はおそらく上級生だろうか。
赤ちゃんのなりをしている俺に困惑している。
「最近入学してきたってあの有名な…。」
仲間と思われる男から俺の事を伝えられていた。
「ああお前が最近有名な赤ちゃん新入生か。でこんなのに兄貴ってお前ストラス正気か!?(笑)」
「うるせー!兄貴の実力も知らずに!お前らなんか瞬殺だぞ!」
「何を!うちの領地の下級貴族の癖しやがって!お前ちょっとこっちこい!」
ピューーとストラスは俺の後ろに隠れる。
って俺は赤ちゃんだから隠れられてないけど。
「兄貴、俺子供の頃からずっとあいつにイジメられてて。今日も廊下ですれ違ってちゃんと挨拶したのに図が高いって。」
ふーん、貴族の間でも色々あるんだなぁ。
「おい、赤ん坊!」
「俺はケインだよ。」
「ケイン、お前も俺には逆らわない方が身のためだぞ。俺の名はラクルス=ザグレブ。ザグレブ家は侯爵だ。(ドヤ)」
ふん、貴族の世界じゃ偉いんかもしれんが侯爵なんか知らねえよ。
それにしてもザクレブ……ザクレブ家!?
「お前んちの家紋は?」
「家紋?これだよ!」
ラクルスは胸に刺繍されている物を俺に示した。
本に獅子が描かれている家紋。あー俺の生家と同じだ。
こいつ親戚かあ。
「ふん、ザクレブ家ってくそみたいな家系じゃないか!大した実力もないのに威張りやがって。文句あるならかかってこい!」
「何おうこいつ!」
「ラクルス様、ゴニョゴニョ――」
隣にいる手下であろう人物から耳打ちされている。
「そうだな―――おい、ケインお前今度の対抗戦に出てこい!そこで決着をつけてやる。」
「対抗戦?なんだそりゃ?」
「兄貴、年に一度の上級生と下級生の対抗戦が3日後にあるんです。俺出る予定だったけど兄貴変わりに出てくれたら……。」
なるほど、合法的にやっつける事ができるという訳か。
公式の場で戦う事を希望するとはラクルスもある程度、腕に自信があるのだろう。
「よし、じゃあ決着は対抗戦でやってやる。」
「逃げんじゃねえぞカス!」
後ろでストラスは拳を振り上げている。
「黙れストラス!お前が得たと思ってる後ろ盾は何の意味もない事を示してやる!!ケインお前は負けたら俺の奴隷になれ!」
「奴隷!?ザクレブ家はそんなもん扱っているのか?」
「何言ってやがる、奴隷を持てるのは上級貴族の特権だろう。」
俺の生家だけじゃなく親戚もクソ野郎だったみたいだ。
「いいだろう、こちらからも条件が一つ。俺が勝ったらお馬さんしてもらってもいいか?」
「お馬さん?」
ラクルスは手下に耳打ちされて理解したのかニヤニヤとしながら同意した。
俺の事を所詮は幼子だと判断したらしい。
お馬さんの事実を知っている隣のストラスは震えていた。
「ケイン君大丈夫?」
「ん?どうして?」
「だって上級生と揉めて対抗戦にまで出る事になったって聞いたよ。」
何でレンツェの耳に。ほんの1、2時間前の事なのに随分と噂が広まるのが早い。
「ああ、でも大丈夫だろ。1年や2年先に学んだだけだろうから大した事ないない。」
「えーでも上級生の人たちは上級魔法まで扱えるらしいよ。ほんとに大丈夫ケイン君。」
ここで俺はピーンときた。
「確かに俺は上級生たちの事を知らないな。うん、ちょっと情報収集で偵察に行ってくる!」
「えーー!?」
善は急げで、ダッっと俺は上級生たちの教室に向かって駆け出した。
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