第2章 魔術王国編
童貞魔術王
元ヴェラクルス国であった王都を一旦、ケイン帝国の首都とし、元々あった城を本拠地とした。
元の邸宅から使用人一同、お城に引っ越し済みである。
『帝国を宣言した以上、今後は周辺諸国との争いになります。次はどこを征服しましょう?』
城内の会議場には、宰相となったセバスチャンを筆頭にいつもの側近の幹部連中の面々が勢揃いしていた。
会議室のボードには周辺諸国が分かりやすいよう世界地図が拡げられている。
『ヴェラクルスは一国ではあったけど、辺境の小国にすぎないから。どこと争うにも国の軍事力と経済力は敵わないから慎重さが必要ね。』
新たに内務大臣となったエリーゼが意見する。
他にもグラードは防衛大臣、ラミアは俺のお目付け役となっている。
『そう言えば……魔術学園都市ってどうなってんだ、ラミア?』
『前世だけじゃなくて今もありますよ。確か魔術国家パラツインの一都市となってます。』
『あそこなら魔術王の権勢も効くんじゃない?』
『いや、それは……』
はっきり物事を言うラミアが珍しくものを言いにくそうにしている。
『なんだ?ラミアお前ちょこちょこ人化して人間世界回ってたんだろ。俺が死んだ後に何かあったのか?』
『いえ、その……』
なんだ?ラミアが言い淀むなど……
『あら私、魔術学園の卒業生よ。随分昔にはなるけどね。ケインちゃん前世魔術王なのよね?』
『ああ、そうだけど?』
『あらーラミアちゃん言いにくそうにしてるのはそういうことね。』
とエリーゼはラミアにウィンクをしている。
『どういうことだよ?分かるように説明してくれ。』
『あのねケインちゃん、落ち着いて聞いてね。現代には魔術王はね……【童貞魔術王】として伝わってるの。』
『…………なんだそりゃ!!! いや事実ではあるが!俺が童貞だったなんて生前はそんなにポピュラーでもなかっただろ!なんでそんな事になってる!!』
『なんだ童貞だったのかお前。』
グラードが掘り下げなくていい所をいじり、我慢できなくなった者達がくすくすと笑っている。ぐぬぬぬ。
『……おい、ラミアなんでこんな事になった?』
『ご主人様が死後、魔術学園都市はエルフのハーフェンによって実質的に統治されました。どうやらあのハーフェンがそのように後世に伝えたようです。』
『あーあのエルフの女かあ。あの野郎!なんでそんな事したんだ!?』
『わかりません、がまだ存命で魔術学園都市の統治者、魔術学園の理事長をしてるはずです。』
『よし決めた!』
俺はボードの地図上の魔術国家パラツインを指差し、
『次の征服対象は魔術国家パラツインにする!』
と宣言した。
『…………………。』
誰も無言で同意しない。えーーという感じだろうか。
『な、なんだよ!パラツインの首都は魔術学園都市だろ。あそこは確か魔術至上主義だ。まあ貴族階級もあるけど魔術が優れたものが偉かったはず。と言うことは俺があそこに行けばすぐにでもTOPに立って、労せずパラツインが手に入るだろう!!』
みんな顔を見合わせている。
『まあいいけどすでに作られた歴史は修正できないぜ。童貞魔術王。』
『童貞魔術王って呼ぶな!!』
くそうグラードの野郎め。みんなも笑いを堪えてやがる。
ぐぬぬぬ。許せぬハーフェン!待ってやがれ!!!
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