下級生vs上級生対抗戦

「きゃー何この子!?かわいい!」

「どこから来たのー?迷子でちゅかー?」

 俺が上級生たちの教室を訪れると、きゃっきゃっと女子生徒たちに囲まれていた。

 俺と同じ学年は俺が普通に喋れて生活できる大人びた赤ちゃんだと知られてしまっているが上級生の方ではそうではない。

 良し!狙い通りだ。


「あうーー、だっこーー。」

「えーーかわいんですけど。抱っこしてほちぃのー。はい!」

 ふぁーーーいい匂いがするー。


「えーずるい私も抱っこしたい!」

「えー私もーー!」

 まあ、待ちなさい。おれぁ逃げやしないからさあ。(デレーー)

 次から次へと俺は抱きかえられ、俺はその度に胸の感触を確かめる為にぎゅっとする。

 その仕草が更に俺の可愛さを増してるらしい。


「えー何この子ーぎゅっとしてくるー!めっちゃ可愛んだけどー!」

「えーいいなー私もー。」

 何だここは天国か?この時間がずっと続いてくれと願っていたその時―――


「ケイン君よかったねー。お姉さん方に可愛がってもらえて。」

 レンツェ!?なぜここに?


「お世話ありがとうございました!それじゃあケイン君帰ろうか。」

 レンツェは上級生のお姉さんから俺を受け取る。

 抱っこして、俺のお尻を支えているその手は……

 痛えーーーー!お尻つねってるーーー!


「それじゃあケイン君帰りましょう。ありがとうございましたー。」

 去り際、レンツェは顔は笑っているが心は……

 俺は無理に顔は笑っているが心は……泣いていた。ぴえん。




 下級生 vs 上級生対抗戦当日


「兄貴頑張ってくださいね!」

 今の所、3戦されているが全て下級生が負けていた。

 今が4戦目で次のトリに自分が出る番となっていた。


「ケイン君は大丈夫よ。だって偵察も行ってたもんね!」

 うゔっ………まだ根に持ってるみたいだ。

 ちょっと上級生のお姉様方とバブっただけじゃないか。


 ワーーーーーーー!!

 どうやら決着がついたようでまた下級生が負けたようだった。


「次は下級生、平民ケイン、とそれに対するは上級生、侯爵、ラクルス=ザグレブです。」

 ワーーーーーーー!!

 一斉に歓声が上がる。


「あ、あああ兄貴、ががが、頑張ってください!」

 お前が緊張してどうする。


「ケイン君頑張ってね!」

 俺はその声に片手を上げて応えて戦いの場へと向かった。


 ざわざわ

「何あれ赤ちゃんじゃない?」

「えーふざけてんの?下級生たち?」


 観客がざわついている。まあ知らないものは当然の反応だろう。


「今日でお前は俺の奴隷だ!」

「お前が俺に勝ったらな!」

 うん!? ラクルスが手につけてるあれ―――

 確か魔力が増幅される装備だ。

 この野郎、不正するつもりか?


「おい、お前その手に付けてるやつ、魔力増幅するやつだろう!」

「(ギクッ)う、うるさい!開始、開始だ!」


 そう言うとラクルスは魔法の詠唱にかかった。

 ったくクソ野郎が。


「ファイヤストーム!」

 炎が竜巻となって襲いかかってくる。


 が「アイスストーム!」

 俺は更に威力の強い氷魔法で相殺させた。


「なに!? 下級生ごときが生意気な! ではさらに強力な魔法だ!」

 ぶつぶつぶつ


「ギガエアロ!」

 上空からケイン目掛けて風の塊が―――

 ドーーーーーン!!

 と落ちてきた。


 俺は何もしない。この程度、身体強化だけで十分だ。

 ラミアに寝返りを打たれた時の方が痛いくらいだ。


「な?無傷だと!?」

「これがお前が打てる最も強い魔法か?」

 後から言い訳ができないようラクルスの最強の魔法を全て出させるつもりでいた。


「う、うるさい!くそーー!」

 この感じだとさっきのがラクルスが扱える中で最も強い魔法だったらしい。

 じゃあ終わらせるか。


「ライトニングボール!」

 威力の抑えた雷撃魔法を放つ。


 電撃の球がラクルスに向かい―――

 バリバリバリバリーーー


 ラクルスはプシューーと気絶して倒れる。


「しょ、勝者はケイン君でーす!」

 ワーーーーーーーー!!

 下級生たちは対抗戦でのたった一つの勝利に大きく沸いた。

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