人間界の創造
「それじゃあ頼んだぞ」
クリフォードは竜王メルギデスへの使いを近場にいた竜族に任せた。
竜族は人化して、結構人間世界に紛れ込んでいるらしい。
報告内容はもちろん、邪竜達とリドリーが生き残っていた事だった。
「父上が人間界でリドリーと戦えば人間界は恐らく持たない。よって俺たちが邪竜達を倒さなければ人間界は終わりだ」
クリフォードがそう言った。
いきなり退路を絶たれた形だ。
どちらにせよ邪竜をこのまま放置しても人間界は終わりだろう。
やるしかない。
「それじゃあ行きますか。邪竜の里に」
俺はあえて軽く言った。こういう時に深刻になってもしょうがない。
邪竜の里は聖都アリットセンの西方10キロくらい行った所の峡谷に隠匿魔法が張られてあるらしい。
すでに奴らも俺らに放った刺客の第一陣は敗れている事には気づいているだろう。
臨戦態勢で俺たちを待ち構えているはずだった。
それらしい渓谷を見つけて――
「リリース!」
俺は邪竜の里の渓谷の隠匿魔法について効力を無効化する。
邪竜達はそれに気づいていない。
内からは隠匿されておらず見た目等は変わっていないのであろう。
「気がかりなのが邪竜の里で働かされているという人間達だ。彼らがいると最悪、戦闘になった時に人質にされる。最初は俺が透明魔法で潜入して人間を一気にテレポートできるようにする。テレポートさせる時は閃光弾を空に向かって撃つからそれを合図にラミアとクリフォードも参戦してくれ」
「了解!」
「かしこまりました!」
ラミアとクリフォードの同意を確認すると、俺は透明化魔法によって透明化して邪竜の里に潜入する。
渓谷内の谷部分にいくつか横穴が掘られており、そこから人間を使って鉱石を採掘しているらしかった。
谷底はそれなりに広く、家が30〜40件程、建てられている。
奥に大きな屋敷があり、恐らくそこが長の住まいらしかった。
臨戦態勢だからであろうか多くの者たちがそこを出入りしている。
人間と邪竜の判別だが気配探知で行うと判断がつく事が分かってきた。
明らかに一般の人間より邪竜の方が魔力の総量が多いからだ。
俺は一気に人間をテレポートできるように見えない魔力線を引っ付けていく。
最終的にテレポートを発動するとこの魔力線で繋がれている人間は一斉にテレポートするという算段だ。
ピッ ピッ ピッ
と多くの人間を繋げていく。
ピッ ピッ ピッ
よし、もう大丈夫か。
気配探知でもうこれ以上の人間はいないはずだ。
しかし人間だけで50人くらいいる。
邪竜達より全然多いこの人数をよくここまで今までバレずに集められたものだ。
俺は空中に閃光弾を放った後に、
「テレポート!」
と人間達を一斉に安全な場所。
聖都アリットセンの教会へ送った。
後は聖女がなんとかしてくれるだろう。
事前に言ってなかったから今はてんやわんやしているだろうが……
ダン!!
渓谷の谷底に降り立ったラミアとクリフォードは、
「「グワァーーーーー!」」
と開戦の雄叫びを上げる。
それに気づいた邪竜達が二人に襲いかかった。
「ケイン、リドリーは強敵だ。恐らく竜族の中で勝てるのは父上、竜王メルギデスのみ。暗黒エネルギーを蓄え、さらに強くなったのなら悔しいが俺たちでは勝負にならない。雑魚どもは引き受けるからケイン、リドリーを頼む」
俺はクリフォードに戦闘前にこう頼まれていた。ラミアも同意している。
雑魚共と言っても腐っても邪竜、一匹一匹はかなり強い。
俺はラミアとクリフォードに何重もの身体強化と行動速度向上をかけた。
多勢に無勢だがこれで対等以上に戦えるだろう。
明らかに他の邪竜達と雰囲気が違う男が奥の屋敷から現れた。
溢れ出る暗黒エネルギーがオーラのようにほとばしっている。
奴がリドリーで間違いないだろう。
俺は奴の前に歩みでた。
「転生前は魔術王という、危篤な赤子が帝国を建国したというのは耳にしておった。人間界では敵無しだったのであろう。しかし、竜族の争いに加わるとは愚か……人間など我にとっては塵芥にすぎんわ!」
そういうとリドリーは竜形態に戻った。
おおでかい。大きさは竜王メルギデスと変わらないな。
俺は身体強化を極限まで高めていく。
それと同時に無限魔力から魔力を圧縮して蓄えていく。
「裏切り者のメルギデスに与しよって。そもそも人間界など我らが創造せしもの」
「裏切り者? 人間界の創造?」
「そうだ、それは今より数万年前の事」
リドリーはこれまでの竜族と人間界の歴史について語り始めた。
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