仇敵

「嘘が下手だなあのおっさん。絶対何かあるだろ」


 オリーヴは俯いている。彼女もそう確信したらしい。


「………恥ずかしい事です。聖職者として務めている者が……」


 オリーヴの上司に当たる人物達の不正に責任を感じているのだろうか。

 でもそれはオリーヴ自身には何の責もない事だ。


「まあ、オリーヴみたいな聖女がいるって事が救いだよ。クズはどこにでもいるからな」


「そうですよ。私はバカ二人と一緒にやってますから気に病むことはないです」


「ちょっラミア、そのバカってクリフォードとセバスチャンか?」

「いやラミア、そのバカってケインとセバスチャンだよな?」


 どっちにしろセバスチャンは入るらしい。

 その様子にオリーヴはクスッと笑う。

 ああ、笑ってくれたら本望だよ。


 枢機卿はノストラードに探らせるか。

 指示したら報告を少し待とう。




 くそ! 何だ奴らは。ケイン帝国の皇帝だと? ふざけた事を。

 折角枢機卿まで上り詰めたのに、こんな所でつまづいてたまるか!

 信仰など金儲けの道具にすぎない。信徒は思考停止の奴隷だ。

 信徒達に修行だと騙して邪竜の里へ連れていき、邪竜達に引き渡して金にしてきた。

 俺はその金で教皇まで上り詰めてやるのだ。

 その為には奴らは邪魔だ!


 エドアルドは書簡をしたためる。

 宛先は邪竜達の長、リドリー。

 邪魔が入っている事とその排除の為の支援を要請した。




「久しぶりだな旦那。それにしてもホントに皇帝になるとはな」


 ノストラードとの久しぶりの再会だ。

 わざわざ本人が調査結果の報告に来てくれた。

 教会でその報告を受けている。

 聖女オリーヴとラミア達も同席していた。


「ああ、久しぶりだな。わざわざ悪いな。で早速だが何か分かったか?」


「ああ、早速結論から入ると………」


 ノストラードはごほんと一つ咳払いをすると、


「枢機卿のエドアルドは真っ黒だ。この近くに邪竜の里があり、そこに信徒達を騙して奴隷として送り込んでいる」


「「邪竜の里だと!!」」


 ラミアとクリフォードは一斉に反応する。


「………なんて事を」


 オリーヴは俯いていった。


「エドアルドが邪竜達と組んでる目的は?」


「恐らくというか十中八九、金だろう。邪竜の里の鉱山で奴隷労働させられている」


「邪竜の里なんかあるのか。規模は?」


「邪竜自体はそんなに多くない。多分20体ぐらいだろう。まあ人化はしてるがな。頭はリドリーというらしい」


「「リドリーだと!!」」


 またしてもラミアとクリフォードは一斉に反応した。


「どうした知り合いか?」


「奴は我らが妹、イリーナの仇です」


 そうなのか。っていうかラミアとクリフォードには亡くなった妹がいたのか。

 前に見せたラミアの微妙な反応はそれかあ。


「うん!?」


 クリフォードが反応する。


「この気配は!? ご主人様、早速邪竜の奴らが現れました!」


 教会は壊したくないため、俺たちは外に出る。

 外には2人の邪竜と思われる男がいた。


「お前らだな枢機卿のエドアルドが邪魔と言っていた奴は。ってお前とお前、竜族か?」


 竜族は人化していてもお互いが分かるらしい。


「ご主人様、こいつらは我々にやらしてください」


「分かった、任せる」


 妹の仇と言われたら任せるしかない。

 俺は今回はサポートに回ろう。


「テレポート」


 ヒュン!

 近くの荒野にみんなをテレポートさせる。


 ラミアはすでに黒闘気を。

 クリフォードは大剣に白い炎を纏わせている。


「貴様ら、メルギデスの子だな!」


「そうだ! 我らが妹、イリーナの仇。貴様ら滅してやる!」


 そうラミアがいうと、クリフォードと二人とも敵に踊りかかった。




「はあはあ……ば……か……な…」


 そういうと邪竜の一人は崩れ落ち、地面に倒れた。


「ぐおおおおおおお!」


 一方、クリフォードともう一人の敵との戦いはまだ続いている。


「くそ! 我々が負けるわけがない! 憎っくきメルギデスの一団に敗れてから、我々は暗黒エネルギーをずっと蓄えてきた。全ては今日、この日の為に!」


 邪竜達も凄まじい執念だ。


「黙れ! 闇に落しものが光を追うものに勝てるとでも? これで終われせてやる! くらえ! 雷鳴剣!」


 大きな稲妻がクリフォードの大剣に落ちる。

 大剣は凄まじい雷電を携え、その剣で邪竜に切りかかった。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」


 雷鳴剣が直撃した邪竜は断末魔の叫び声を上げ、崩れ落ちた。


「はあ、はあ」


 敵は強かった。ラミアとクリフォードも消耗している。


「よくやったな。それじゃあ一旦、戻るか」

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