今更もう遅い!

「ただいまー。」

 ラミア達が居る、自身の拠点に帰ってきた。


「お帰りなさい、ご主人様。留守中にセシウス=ザグレブという者から書簡が届いております。」

 そう言って、一通の封筒を手渡される。


「…………………。」

 親父からだ。今更なんで、というかどうして俺に気づいた?

 ―――もしかして対抗戦か?ラクルスが出るから観戦していた。

 或いは、対戦相手の俺の事を聞いて勘づいた?


「セシウス=ザグレブというのは俺を追放した両親だよ。」

「あら!そうでしたか。今更どういうつもりでしょう。」

「読んでみるか……。」



 ◇◆◇


 拝啓


 我が息子ケインへ


 我が名はセシウス=ザグレブ。

 ザグレブ家は伯爵で私はそこの当主である。

 300年以上、魔術師として隆盛をなし存続してきた由緒ある大貴族の家系だ。


 こうして今回、筆をしたためているのは我が息子ケイン、お前を取り戻すためだ。

 お前を盗まれ、我々はその捜索をずっと行っていた。

 たまたま甥ラクルスが出場した魔術学園の対抗戦を観戦する事によってお前を発見する事ができたのだ!


 ケインよザグレブ家へ戻ってこい!

 母、ルファスもお前の事を心待ちにしておる!


 末筆とはなるがケインの健康と活躍、そして帰還を心より願っている。


 ◇◆◇



「……盗まれたか。盗人猛々しいとはこの事だな。」

「こいつら多分ご主人様を追放したのをご主人様が分かっていなかったと思ってるんでしょうね。」

 おそらくそうだろう。俺が亡くなったと周囲に伝えていたのも適当な理由をつけて取り繕うつもりなんだろう。


「ふん、今更戻ってきて欲しいと言われてももう遅い!! ラミア、セバスチャンに言ってザグレブ家について調査してもらってくれ。今後もまとわりつかれるとうっとうしいからなんらかの対策をたてないとな。」

「かしこまりました。」

 それはそれで一旦いいとして。


「後、ハーフェンに会ってきたぞ。」

 俺は魔術王国パラツインが魔族に静かなる侵略を受けている事などをラミアに話した。


「なるほど、魔族に対してはこちらの拠点の方は私が警戒していきますのでご安心下さい。」

「よろしく頼む。それじゃあ、飯食って(哺乳瓶をチューチューして)、寝る。」

「かしこまりました。ユミルに用意させますね。」

 俺は今日はさすがにもう疲れたので休む事にした。

 時空間を行き来するとなぜか疲れるんだよなー。



「よう!」

 学園の中庭で筆頭魔術師ハイリゲンを見かけて声をかける。


「な!?お前どうして?」

「あんな時空間魔法で俺とハーフェンを縛られる訳ないだろ。お前らどこまで魔術国家パラツインに侵食してるんだ?」


 ヒュン

 俺はテレポート魔法で一瞬でハイリゲンを荒野に連れてきた。


「どうだ、ここなら喋るのにも何も遠慮する事はないぞ。」

「はーーはっはっはっは。馬鹿め。わざわざ自分から死に場所に移動させてくるとは!」

 ハイリゲンは擬態を解き、魔族本来の姿に戻る。


「冥途の土産に教えてやろう!指示系統は俺と後、パラツイン王国の宮廷筆頭魔術師がもう一人。後は使い魔を配置している。」

「誰に命じられてそんな事をしている?」

「はっ!貴様なんぞに言っても分からんだろう!あの方の事など。」

 なんとなく検討はついてるんだけどな。まあいい。


「じゃあやるか。」


 俺がそういうとハイリゲンは戦闘態勢に入り、すぐさま無詠唱で攻撃魔法を放ってきた。


「ブラッドスティール!」

 闇魔法だ。漆黒の先が尖った植物の根のような物がいくつか俺の血を吸い取ろうと迫ってくる。


「ホーリーレイ!」

 俺が聖魔法を当てるとそれらは力なく地面に落ちていった。


「おのれ小癪な、ならばこれを喰らえ!」

 ハイリゲンはそう言って、次の魔法を発動させようとするが……

 ――「遅い!」俺はそう言って


「レイジングブラスト!」

 何個もの光珠を出現させ、それを一気にハイリゲンに向かって放つ。


「うわーーーーーーー!!」

 シュワーーーーッ


 ダメージを負い、戦闘不能となったハイリゲンは倒れた。


 よし!つぎは宮廷筆頭魔術師だ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る