おかまちゃん

「どうもお疲れ様でした。これで近隣では残す所、エリーゼ家のみとなりましたね。」

 ヨーデル家の制圧が終わり、次なる一手について邸宅にてセバスチャンと相談している。


「そうだな。エリーゼ家の方だが領主との会談を段取り頼めるか。後、会談前までに領主の人となりを把握しておきたい。」

 エリーゼが前評判通り、優秀であるならば彼らと戦闘にはならないはずだと睨んでいた。

 エリーゼ家とヨーデル家の軍事力は拮抗している。

 事前に戦力分析をかければヨーデル家をたった2日で落とした我々には敵わないと判断するはずだった。


「かしこまりました。早速調査にかかります。」

 セバスチャンが有能でありがたい。


 ふーー

 チューっと俺は哺乳瓶で一服した。




 それから数日後

 エリーゼ家の邸宅にて


「この度はわざわざ遠くからご足労頂きましてありがとうございました。」

 領主エリーゼ

 金髪に精悍な顔立ちと柔らかな物腰。

 40代のはずだか実際の年齢より若く見えた。


「ささどうぞこちらへケイン様。」

 長机の両サイドにエリーゼと俺が向かい合って座る。

 長机は5メートルはあるのではないかというくらい長かった。


『この度は招待ありがとう。こちらも丁度あなたと会談をしたいと思っていた所です。』

『それはタイミングがようございました。』

 俺は念話で話しかけたのだが、エリーゼはそれを当然の事のように受け答えをしている。

 俺がただの赤ん坊ではないということはすでに把握しているようだ。

 事前に優秀だと聞いていた通り、こちらの情報収集も抜かりないようだった。


 机にはナプキンとナイフやフォークなどが添えられている。

 会食をしながらの会談という趣向であろうか。

 悪くはないが決めるべきことはさっさと決めてしまいたい。

 という事で早速……


『それでは単刀直入に言おう。俺はこの世界の皇帝になるつもりだ。あなたには俺の仲間になって欲しい。』

『…………。』

 いきなり本題から入られるとは思っていなかったのだろう。

 悪いがこちらは元々は平民の出なんでね。作法よりは実務を優先する。

 エリーゼはすぐには返事を返せず考え込んでいる。


 エリーゼがとりえる選択肢として

 1. ヴェラクルス国に報告し、俺と敵対する

 2. 俺に従い仲間になる

 3. 俺と単独で敵対する

 の3つあるが、3の単独で敵対の可能性はほぼない。

 優秀なのでエリーゼに単独では勝ち目がないという状況把握できているはずだ。

 よってとりうるのは1または2の選択肢であるが……


『あなた方が少なくとも我々よりは強いというのは把握しております。ですが果たして、一国、そして、世界を敵に回すほどの強者なのでしょうか?』

 うん、最もな疑問だ。


『従者のラミアだか……』

 ラミアの方へ目を向ける。

 これから言われる事が分かっているのだろう、ラミアはえっへんという表情をしている。


『彼女は今はメイドの形をしているが実は暗黒竜だ。』

『なんと!世界3代災厄と言われるあの……」

『そして俺の前世は魔術王と言われた魔術師の生まれ変わりだ。前世であれば全世界を敵に回しても勝てた自信がある。』

『かの伝説の魔術王とは……!なんと!!』

 エリーゼは考え込んでいる。


『ご主人様、エリーゼにはハーレムの話はしなくてよろしいのですか?』

『ちょっラミア、入ってこないで!そのハーレムとかなんの話かわからないし(汗)』


 エリーゼはセバスチャンと違って、堅物だというのは事前の情報収集で分かっている。

 ハーレムを目指しているなんて伝えたらマイナス必死だ。


『ハーレム?一体なんの事です?』

 エリーゼは真剣な眼差しで俺に問いかけてくる。そんな目で見ないで。


『いや、その…まあ皇帝になったら、ハーレムつくりたいなあなんて思ったりして…(汗)』

 下手に嘘をつくより正直に話すが吉と思い切って俺は説明した。


『ああ、そういう事ですが。ただハーレムって女性ですよね。私的にはかわいい男の子が好きなので。ケインちゃんも食べちゃいたい。』

 ゾワゾワっとした。俺の傍にいたセバスチャンは無言で距離をとっている。

 え?まさか?そういう事なの?


『……エリーゼは結婚してないけど、もしかしたらそういう事で…?』

『もうーそういう事ってなによー。ケインちゃんかわいいから仲間になってあ・げ・る。』

 俺はエリーゼを討伐しておけばよかったかなと少し後悔する。

 がおかまちゃんであろうと優秀なのには変わりないのでいいだろう。


『う、うん。じゃ、じゃあよろしく頼むな。』

『よ・ろ・し・く・ね』(ウインク)


 こうしてエリーゼが仲間になった。

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