セバスチャンの回想
「――という事であります。ヴェラクルスに栄光あれ!」
「栄光あれ!」
お゛お゛お゛お゛お゛お゛ーー!!
地鳴りのような声援が演説会場に響き渡る。
セバスチャンの演説を聞いた観客達、と言っても貴族ばかりだが、その演説後もその大きな声援はしばらく止まなかった。
「ふぅ〜。」
「セバスチャン宰相、演説どうもお疲れ様です。王様がこの後、お話があるそうです。」
「王様が?分かったすぐに伺う。」
セバスチャンは休憩もそこそこにすぐにヴェラクルス王の元へと向かった。
「演説ご苦労。いい演説じゃったわ。」
「ありがとうございます。して話とはいかがなものでしょう?」
王の傍には見慣れない男がいた。
男はどこか陰気さを感じさせる佇まいをしている。
フードを羽織っているその姿から魔術師、または、商人を思わせた。
「おう、話というのはな、このカルロの事じゃ。」
ペコリと傍の男がお辞儀をし、
「カルロと申します。宝石商をしており王様にはご贔屓いただいております。」
なるほど、だが宝石商が俺になんの用だろう。
「このカルロじゃが、政治に興味があるみたいでな。お前の下で使ってもらえんかのう。」
なんの因果で宝石商を部下に…。内心は断りたい。
だが王の願いを断るわけにはいかなかった。
「承知しました。しばらく私の下で使ってみます。」
「おお、ではよろしく頼むのう。」
この時はまだこのカルロという男がとんでもない野心家で、その後自分が足元をすくわれるとは思いもしなかった。
「お疲れー。」
「お疲れ様です。」
カルロを部下に持ち三ヶ月。中々使える男で仕事覚えもいい。
やる気もあるようで今日もカルロは残業をするようであった。
「無理しないようにな。」
とカルロに声をかけ、セバスチャンは職場を後にする。
カルロはペコリと一礼している。
今日はセバスチャンは仕事終わりで立ち寄るところがあった。
バシッ!!
「はうあぁ〜。」
「この犬、躾がなってないようね。ほら!」
バシッ!!
「はぃ〜ん。もっとください。女王様!!」
「ふー。」
ひとプレイ終えた女王様役はタバコを吹かしている。
「今日もいいプレイでした。」
セバスチャンは脱いでいた仕事着を再度着なおしている。
「あんたもわざわざ仕事帰りに来なくてもいいじゃない。」
「何をおっしゃられます。この背徳感も込みでいいんじゃないですか。」
「ふーん、そんなもんかね……じゃあ良ければ今度野外プレイでもやってみる?」
「野外プレイ!?」
目をキランとさせてセバスチャンは尋ねた。
「そう野外で。また違った快感が得られるかもよ。まあオプション料金は頂くけど。」
「ではお互いのスケジュールを合わせましょうか。」
セバスチャンは仕事以上の真剣さで打ち合わせに臨んだ。
「フォーフォー。」
フクロウの鳴く声が響いている。
深夜の公園には人気は全くなかった。
バシッ!!
「むっううーーーう。」
バシッ!!
「ふーーむうむうーー。」
野外の為、女王様の攻めに声を出して応える事ができない。
だがそのもどかしさもまた別の快感を生み出していた。
とその時
「キャーーーーーー!!」
という声が公園内にこだました。
一人の女性がセバスチャン達のプレイを目撃してしまったようだった。
その事実はゾクゾクーとした快感をセバスチャンにもたらした……
――がいかんいかんと我にかえる。
「へ、変態よーー!誰かーー!」
あれ?どこかで聞いた事があるような声をしている……
女性をよく見てみると――
「あら、あなた……セバスチャンじゃなくって!?こんな所であなた変態してるの!」
オワタ、オワタ、オワターーーー!
その女性はあろう事か王の娘の王女であった。
なんでこんな所に!! オワター!!
「王女どうされました?」
ん?カルロ?カルロもなぜかこんな所に来ている。
「カルロ!あなたに言われて夜の公園だと宝石がより美しく見えるからって来てみたけどまさかセバスチャンが変態をしてるなんて!」
うん?まさかカルロお前が王女をここに連れてきた?
「カルロ…お前、まさか!?」
「王女様、この事は王様にご報告を!一国の宰相がこんな事ではとんでもないですぞ!」
カルロは俺の問いかけは無視して王女に注進をしている。
やられた!!その時、俺は全てを悟った。
その後、俺は追放され俺の後釜にカルロが収まった。
――そしてそのカルロがボロボロになって今、俺の目の前で倒れている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます