新たな仲間

『ぐぬぬぬ!失礼だぞ!まあバカだというのは否定はしないが。』

『そうです!失礼ですよ!確かにバカですがバカにバカって言っちゃダメです!』

 じゃあお前もご主人に対してバカって言うなし、否定しろだ!


『俺一人で一国を相手にできるくらいの戦力はある。それにラミアもいるしな。』

『ヒュー、言うねぇ。』

 茶化すようにグラ―ドは言ったが多分強さは肌で感じているはずだ。


『俺が皇帝になったら側近のお前は女も金も思いのままだぞ。』

『ふん!両方とも興味ないな!』

 興味ないだと?金はSランクだから困っていないだろうが女に興味ない?


『お、お、お前もしかして……外野がお前を恐れてんのもそういう理由か!?』

『あん?……変な想像してんじゃねぇ。権力になびく女なんざ興味ねぇんだよ。』

 かっこいい事言いやがって。そうだ!


『ラミアこいつが言ってる事は本当か?』

『はい、本当のようです。ご主人様とは違うようですね。』

 後半のセリフはいらないだろ。


『なんだ読心術か。じゃあ無駄だって分かるだろ。』

『ご主人様、こいつは脳筋のバカですよ。』

『どういう事だ!脳筋のバカって!』

 グラ―ドは怒っているがなんとなく分からんでもないな。


「おい、あいつもしかして新しく領主になったやつが赤ん坊って……」

「そう言えば前の領主に馬乗りで乗ってたのがあんな赤ん坊だった気が……」

 ざわざわとどうやら俺が領主だと何人か気づき始めたらしい。


『ん?お前もしかして最近話題の新しい領主か?』

『そうだが。』

『おお、そうかぁ。』

 ん?なんだ?今までとグラ―ドの反応が違う。

 好意的というか。なんだろう。


『前の領主は気に入らなかったのか?』

『前のやつはクソ野郎だっただろ。この国も貴族至上主義でくそだしな。』

 なるほどそう言うタイプか。ならそっち方面でアプロ―チしてみよう。


『グラ―ド、俺は今のこの世界は間違ってると思ってる。俺は皇帝になってこの世界を正すつもりなんだ。』

『それは初耳ですね。皇帝になるのは好き勝手やるのとハ―レ…』

『ちょーーちょちょっとラミアちゃん!ちょっと黙っとこうかぁ。今大事なとこだからねー。』

 実際皇帝になったからといって悪政をするつもりはないし、完全な嘘は言ってはいない。はずだ……


『この世界を正すか…じゃあ手伝ってやってもいいかもな。』

 えっもう?チョロくないか?脳筋というのもあながち間違っていないかも知れんな。


『じゃあついて来い!屋敷に戻って正式に契約を交わすぞ!』

 こうなったら後は勢いで押し切るのがいい。

 契約書は解約ができないようにセバスチャンにうまく作って貰えば。ゲヘヘヘ。



 帰るために抱っこをしてもらおうとするがラミアからの冷たい視線が突き刺さる。うう…

『また適当なことを言って。飼い犬に手を噛まれても知りませんよ。』

 飼い竜にはすでに何度も手を噛まれてるが、と思うがそんな事は口にできない。


『抱っこ』

『はいはい、しょうがないですね。これでまた仲間にバカが一人増えるわけですね。』

『バカって言うな!俺はご主人だぞ!』

『なんて言い草だこの女!俺は賢くはないがバカではないぞ!』


 やれやれという感じでラミアを俺を抱き上げ、俺とグラ―ドの顔を一瞥してふ―っとため息をついた。

 ぐぬぬぬ。とまあこうして俺はまた新たな仲間を得て帰路についた。

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