スタンピード
「なんか魔物達が集団で街に向かってきてるみたいだぜ!」
ギルドにそのような報告がされたのはちょうど半刻ほど前。
まさかスタンピードか?とギルド内は騒然となった。
運よく魔物達の群れは街を素通りした為、街は無傷だったがスタンピードを引き起こした上位の魔物が出現したのは間違いない。
スタンピードの魔物の群れにAランクの魔物も含まれていた為、Sランクか、またはそれ以上の魔物がこの街の近辺に出現したとみられている。
現在この街のギルドにはSランクの魔物に対応できるものはいない為、王都の方へ救援依頼が出されているが、Sランク以上となると王都でも対応できるものはすぐには見つかるかどうか。
ギルド員のビアンカは今日送り出した新米冒険者の少年と老人が気がかりだった。
もしもスタンピードに巻き込まれていたら……
――そうこう心配しているとギルドの扉を開け、中に入ってくるのは二人組の人物。
心配していた少年と老人だった。ビアンカはそっと胸を撫で下ろす。
「戻りましたー」
可愛らしい声で少年は報告してきた。
「無事でよかったですねー」
「えっなんかあったんですかぁ?」
少年は無邪気に尋ねてくる。
「スタンピードって言ってね、魔物達が大移動をする現象が起きたの。おそらくSランク以上の魔物が出現したはずだから今、他のギルドにも応援要請をしている所よ」
「えー怖い! スタンピードだってじいちゃん!」
「わしらはそれには遭遇せんかったから運が良かったのう」
とスタンピードを起こした張本人達は自覚がなく気づいていない。
「あっそうだ!今日討伐してきた魔物見てもらってもいいですか?」
へー討伐できたんだっと言ってもおそらくゴブリンやスライムだろうが。
「はい、討伐の照明になる部位とかは持ってきてもらってますかね?」
「えっ? 丸ごと持ってきちゃったんだけどまずかったですか?」
ん? 魔物を丸ごとって彼らはきた時と荷物ほとんど変わっていないではないか。
「こら! お姉さんをからかってますか! あなた達、荷物なんて出発時から増えていないじゃないですか?」
困ったような顔で子供と老人は顔を見合わせている。
「じゃあ一部だけちょっと出してみますね」
そういうと少年は小袋から一角兎アルミラージを何匹が出してくる。
「ちょっと、ちょっと! その袋は何ですか?」
「え? 何ですかって無限収納ですけど……」
無限収納? 伝説のアイテムじゃない何でこんな子供と老人が…
「それは昔、ハイエルフにもらってのう」
ってハイエルフも伝説の存在ですけど……
「……まあ、無限収納を持っている事はいいです。ってアルミラージを1、2、3……6匹? これあなたほんとに討伐したの?」
「はい! 僕が討伐しました!」
少年はにっこりと笑って言う。嘘を言っているようには見えない。
だけどアルミラージはCランクだぞ。それを初心者の少年が……可能なのだろうか?
しかし、こうして現物を見せられる以上は認めざるおえない……。
「後、まだここでは出しきれない魔物があるんですけど、どこか広い場所にいいですか?」
「……………」
少年たちをギルドの倉庫に案内した。
ドサッ!!!
少年は無限収納の魔物達を一気に取り出した。
魔物が山のように積み上げられている!
20、いや、30体はいるだろうか。うん? Bランクのマンティコアまでいるじゃないか!
「ほんとはもうちょっと狩れそうだったんですけど……」
少年はさも自分の成果が少なかったかのように言う。
いや、こんな量、ベテラン冒険者でも前代未聞だからね。
「……分かりました。こちらの討伐魔物の方、査定させて頂きます。後、これだけの魔物の討伐でしたらランクアップ対象にもなりますので、そちらも協議いたしますのでしばらくお待ちください」
「はい! よろしくお願いします!」
少年は爽やかに挨拶した。こんなに可愛い初心者の子が。
ビアンカはそのありえないような現実に若干、頭がクラクラして抱えた。
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