皇帝への道
『……ん!?私の聞き間違いですか!?皇帝と聞こえたのですが!?』
『皇帝と言ったぞ!!』
『皇帝とは確か人間世界の全ての国の王ですよね?』
『その通りだ。俺は今世では皇帝になって誰にも指図されずにストレスフリーになって、酒池肉林のハーレムを作って好き勝手生きる!!』
随分と可愛らしいなりをしたその赤ちゃんは、
ムフーっと胸を張りあうあうあーと声を張りながら念話では皇帝になると言っている。
ラミアはその光景があまりに現実感がなさすぎてしばらく呆気に取られてしまった。
『……そうですか…とりあえずこれからどうしますか?』
こっくりこっくり
『あらご主人様?……お眠むですかねー。』
ラミアはケインを抱きかかえ、
ボフ!!
と竜形態へ戻り、
バサーー!!
とその手にケインを抱えながら自らの住処に向けて飛び立った。
う…ん…?
目を開けると岩肌が見える。何かの洞窟内かなあと思うが随分明るい。
『あら、ご主人様目が覚められましたか?』
『ああ…むにゃむにゃ……。ここはどこだ?』
『こちらは私の住処になります。』
道理で洞窟内みたいな無機質な感じなわけだ。
『ああそうか……で寝てたこれはなんかの台に見えるがなんだこれ?』
『そちらは生贄の台になります。かなり昔になりますが人間どもが私にその台に生贄を捧げておりました。』
『なんちゅう所に寝かせてるんだ!!』
よく見ると血の後に見えない事もないようなシミが見えてゾッとした。
『お気に召しませんでしたか…失礼しました。』
『お気に召す訳ないだろうが全く…。まあいい抱っこ!』
ラミアは嬉しそうに俺を抱きかかえた。
あうー、ばぶーと俺は言いながら行きたい方向を指差しラミアに住処の案内をさせた。
住処は想像以上に広い、洞窟部分に見えたのはほんの一部ですべて石造りではあるが城まで建設されている。
『なんで城なんかあるんだ?』
『ああ、これは確か国を一つ滅ぼそうとした時に慈悲を乞う為に建てられた物だったと思います。お城の中にもはいってみますか。』
お城の中は装飾などなく石づくりのみの殺風景な物だった。ただ竜用という事でそれぞれの造りがデカイ。
一つの居室に入ってみるとそこには金銀財宝が無造作に積み上げられている。
『おお!すごいなこれは!!この金銀財宝は人間からの貢物か!?』
『はい、そうですね。私は興味がないのでこのように無造作に積み上がっていますが。』
金銀財宝は小国程度であれば買えてしまうのではないかという程の量があった。
『これちょっと通貨に変えて帝国までの軍資金にしてもいいか?』
『はい、全然構いません。というか私にとってはゴミに近いのでいくらでも使って頂いても。』
パアーーと俺は手をかざし収納魔法で金銀財宝の一部を無限空間に収納した。
「それではしばらくお待ち下さい。」
メイド姿の女性とそれに抱きかかえられた赤ん坊をどこか胡散臭い物を見るように受付の女性は奥に担当者を呼びに行った。
財宝を換金に来たのはラミアの住処から近場の街で一番大きな商会だった。
『なんか感じ悪いな。』
『こいつらまとめて滅しますか?』
ここで俺がYESといえばラミアは本当にやるだろう。
『物騒な事を言うんじゃない。若い女性に赤ん坊がこんな高級商会に財宝の換金だ。胡散臭くも見えるだろう。』
「大変お待たせしました。財宝の換金という事で伺っております。」
口調は丁寧だが表情からこちらが侮られている事が分かる。
「財宝を広げるにはここは狭すぎるからもうちょっとスペースがある場所はあるか?」
俺はラミアに念話で話す内容を指示する。
「もっと広い場所ですか……失礼ですが見た所、それほどの財宝をお持ちには見えませんが…。」
「いいからさっさと案内しろ!滅するぞ!」
おい!と俺はラミアに念話で注意する。指示をする前にラミアが素で話してしまった。
担当の男は面をくらって怪訝そうな顔をするがある程度の広さを持った倉庫に案内してくれた。
「ばぶーー」
俺は収納魔法で収納されている財宝を展開した。
「な!ななな!!!!!!」
査定担当者は目の前に山積みされた金銀財宝に驚愕した。
「これも!これも!これも!!!信じられん!」
目の色を変えて財宝の数々を手にとり眺めている。
「どれくらいになりそうですか?」
「うーん……すくなくとも10億ギル……もしかしたら100億ギルも超えるかもしれません!!!」
おおー、一気に億万長者だ。
『やったな!』
『はい、おめでとうございます!』
いやおめでとうございますって、ラミア、元々あなたの物なんだけど……
とも思ったがこれで皇帝への軍資金が用意できそうだった。
見てろよ両親、並びに、俺の事を見限ったもの達よ!
この金を元手に俺は皇帝まで上り詰めてやる!!
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