開戦

 ヒューーーーードガーーンッ!


 うん? 大きな物音によりうたた寝から起きるケイン。

 なんだ? と窓の外を眺めてみると――

 なんと一面レイングラードの街が火の海になっている!!!


「なんだこれは!」

 俺は飛び起きる。

 窓を開け、浮遊術により部屋を飛び出る。


 ヒューーーバンッ!

 ヒューーーーードガーンッ!

 火球を街に落としている奴がいる!


「ラミア!」

「はい!」

 ラミアは早速レイングラードの街に結界を張った。


 攻撃を加えている奴らは…………吸血鬼連中だ!

 くそ!! 完全に誤算だった。まさか戦争行為に打って出てくるとは!


「セバスチャン!」

 俺は遠距離念話でセバスチャンと交信する。


「…………はい、なんでございましょう。陛下」

「吸血鬼王国が打って出てきた! 帝都もすぐに臨戦態勢に入れ! 前線は俺らが抑えるから帝国軍本体は帝都及び、周辺地方の防衛を頼む!」

「か……かしこまりました! そんな……数百年の講和を破棄するとは…… 陛下ご武運を!」

 続けて領主アンセルムに念話で繋ぐ。


「アンセルム! 無事か!」

「はい、なんとか。陛下もご無事で!」

「一旦は街の消火を最優先に。外からの攻撃は一旦ラミアが結果で防いでくれている。消火が終わったら国境付近に兵を集結させろ!」

「かしこまりました!」


「きゃーー」

 街中で悲鳴が聞こえている。そちらの方向を確認すると…………吸血鬼だ! すでに結界内部にいた奴がいたようだ。

「行ってくる! ラミアは引き続き結界を最優先で! ノストラードは消火を手伝ってやってくれ」

 そういうと俺は全速力で吸血鬼の場所へ向かう。


「はぁーうまい! 女王様の許可が出て新鮮な生き血が飲み放題だ! さて次はどいつにするか…………お! あの幼な子、うまそうだなぁ」

 バシュー

 吸血鬼の元に行くと有無を言わさずその首を魔力剣で撥ねる。

 そして

『アルティメットインフェルノ!』

 別名神の炎でそいつを燃やし尽くした。


 そして次は――

 結界で手をこまねいている街上空の吸血鬼たちの元へ向かう。


「ちぃーー! これはあのトカゲ野郎の結界かぁ! 忌々しい! おいお前らちょっと魔力を合わせてこの結界破るぞ!」

「もう遅い!」

 俺は一瞬で吸血鬼たちの前に躍り出た。


「お前は…………赤ちゃん皇帝ケイン! わざわざ目の前まで来てくれるとはな。フォースの俺の眷属が世話になったな」

 吸血鬼貴族階級がサードのフレデリック。

 執事として人間界に潜り込んでいたやつだ。

 今回の攻撃の首謀者、リーダーはこいつらしい。


「我らは吸血鬼貴族の中でも上位の集まり! いかに貴様でも勝ち目はない。おい! お前ら遠慮はいらん! 全員で一気に……」


 俺はその言葉が終わる前に――

『神雷!』

 神級の雷撃魔法を発動する。


 辺りは一瞬で暗闇になり、それぞれ吸血鬼たちに特大の雷が落ち続ける。


「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 吸血鬼たちは悲鳴を上げながら神の雷にその身を焼かれていく。


 おそらく街の人々はこの光景をこの世の終わりのように眺めているだろう。

 真っ暗闇の空に凄まじい雷撃が無数に繰り広げられていた。


「ぐぎゃあぁぁぁ………………………」

 最後の一人の悲鳴が消え、そしてその身が塵に芥になるまで焼き尽くされるとケインはその雷撃魔法を解いた。


「…………………」

 ケインは宿に戻る。


 宿にはラミアだけがいた。

 他のものは火事の消火などに行ってくれているらしい。

 俺は無言で部屋に入る。


「奴ら……絶対許さない……罪なき人々の命を奪った償いは必ずさせてやる!」

 ラミアは俺のその言葉に頷く。

 そして、

「ご主人様、ちょっと竜王国に知らせを入れてきます」

 と言って、部屋から出て行った。




 確かこの辺りに……

 ラミアは浮遊術で竜人の波長を頼りに竜人を探している。

 竜族同士は独特の波長でお互いの存在を知る事ができた。


「あっ! あいつね!」

 その者の元へ行き、


「ちょっと頼みがあるのだけど」

 と突然声をかける。


 竜人は一瞬驚いた顔を見せるがラミアは有名人、


「これは姫様、どうなさいました?」

「今、人間と吸血鬼族で戦争が勃発したのは知ってるわね」

「はい、数百年の講和を破るとは……」

「悪いけどちょっと竜王国に急いで行ってこの事をお兄様を初め、王家の人間たちに伝えてもらえる? 多分人間界に援軍を送ってくれるはずだから」

「なるほど、かしこまりました! それでは早速行って参ります」

「頼んだわよ!」


 そういうと竜人の男は空中で竜形態と戻り、凄まじいスピードで飛び去っていった。




 遠くに見えるは吸血鬼女王の城。

 レイクグラードと吸血鬼王国の国境から峠を一つ越え、峠の山頂部で吸血鬼王国を見下ろしている。

 建物など全体的に黒を基調とした色合いだ。

 市民はまだこちらに気づいておらず普段通りの日常を送っているようだ。

 最も今は早朝で吸血鬼たちは今から寝る時間のはずだった。


 俺の後方には竜王国からの援軍、ラミアの兄のクリフォードを先頭に現在の八竜が駆けつけてくれた。

 そしてレイングラードの領兵たち。

 彼らも身近なものを亡くしてしまったものもいて気合が入っている。


「奴らに罪なき人々を傷つけ、殺めた償いをさせてやれ! 進撃開始!!!」

「ウオォーーーー!!!」

 兵士たちの地響きのような雄叫びが響き渡る。

 何体かの吸血鬼は気づいたようだが……もう遅い!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る