模擬戦

「うーん、なかなかうまく結べないなー−。」

 俺は鏡の前で学園の制服のネクタイを締めていた。

 赤ちゃんの手ではなかなか締めにくい。


「しょうがないですねー。」

 とラミアがネクタイを締めてくれる。

 よかった、大人の手でちゃんとやってもらえる……

 ―――ギュ―


「おげーーー!死ぬ!!」

「ああ、失礼しました。」

 ったく念の為、首周りの身体強化を強めにしておいてよかった。

 下手したら死んでたぞ。


「あっそうだラミア、学園への同伴はもういいからな。」

「えっなぜですか?」

「そもそも学園が保護者同伴って指定してたけど、昨日で大丈夫だって分かっただろ。そういう事で。じゃ。」

 ピュ―――

 俺は浮遊術を使って逃げるように登校した。

 やっぱり保護者同伴はちょっとやりにくい。




「それでは4限目の魔法実技を初めます。えーとそれではストラス君、火系魔法の見本を見せてもらっていいですか?」

 すたすたとストラスはみんなの前に躍り出る。

 こいつは確かレンツェをイジメてる一派のやつだ。


 ブツブツと詠唱をして――

「ファイア!」

 小さな火珠放出されて10メートル程いった所でそれは離散して消えた。


 パチパチパチ


 え?なんでこんな初級魔法で詠唱してんの?

 今世は魔術師のレベルが低いのだろうか?

 ハーフェンは何やってんだ。


 うん?なんかストラスこっち見てドヤってるな。

 いや大した事ないからな。


「ストラス君、ありがとうございます。それでは次は対人の模擬戦に移つろうと思います。ストラス君は引き続きで……レンツェさん!」

「え?あっはい。」

 自信なさげにレンツェが前に出る。

 ストラスの仲間達はニヤニヤしている。なんか嫌な感じがする。


「それでは対人の模擬戦を開始します。使用していいのは水属性と地属性のみで、人を傷つける恐れがある魔法は使わないでください。レンツェさんいいですね。」

「はい…」

 なんでレンツェだけに聞くんだ。


「それでは開始!」


 ストラスは早速魔法の詠唱を始めた。

 レンツェは……なんだオロオロとしてるだけだぞ?


「ウォーターボール!」

 水の塊がレンツェに向かっていく。

 バシャーーーーー

 見事直撃した。


 ストラスは次の魔法の詠唱にかかっている。

 レンツェは……まだ魔法の詠唱すらしてない!なんなんだ?


「ストーンボール!」

 小岩がレンツェに向かっていく。まずい!

 ドーーーン!!


 小岩はレンツェの目の前で破壊された。

 レンツェ含め、他の生徒達、先生もポカーンとしている。

 咄嗟に俺が魔力弾をぶつけて破壊したのだった。


「な、何が起こったのでしょうか? わ、分かりませんがまあいいです。模擬戦はストラス君の勝利です。両者元に戻ってください。」

 パチパチパチパチ


 レンツェが戻ってきた。


「なんで魔法で反撃しないんだ?」

「私、まだ魔法覚えてないから。」

「は?」

「平民で魔法書が高過ぎて買えなくて…」

 なんだそりゃ。魔法を習うために学園に来てるのに本末転倒もいいとこだ。


「先生はレンツェが魔法を使えない事は知ってるのか?」

 レンツェは無言で頷く。

 なるほど、先生もクソなんだな。


「先生ー!次はケイン君と模擬戦をしたいと思います!」

 うん?ストラスがなんか申し出ている。


「ケイン君とですか…いいでしょう。新入生だから手加減してあげてね。」

「はーーーい。」

 元気よく返事はしているが、こっちを見てニヤニヤ。

 絶対手加減なんかするつもりないだろ。


「先生、模擬戦ってなんか賭けちゃダメなんですか?」

「賭ける?」

 俺は先生に提案する。


「俺、勝ったらストラス君にお馬さんになってもらいたいです。」

「あら、まあ。」

「いいぞ!但しお前が負けたら俺の家来な!」

 よし!同意が取れた。


 俺とストラスは生徒達の前に歩み出て、向き合い対峙する。

 さてどう料理しようか。

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