領兵の派遣

 拠点の邸宅に帰ると何か兵士?によって拠点が囲まれてる。


「何してんのー?」

 俺は兵士達に尋ねる。


「えっ赤ん坊?……いや、我々はセシウス=ザグレブ侯爵の命にて、セシウス様のご子息のケイン様を奪還に来ているのだが、周りに結界が貼られていて邸宅に入れんのだ。」

 なるほど、ラミア、グッジョブだ。


 結界は部外者のみを対象にしているため、俺は楽々その中に入れる。


「なっ!? なんであの幼子は入れるんだ?」

 兵士達は驚愕していたが彼らになすすべはなかった。



「ただいまー」

「おかえりなさいませ」

「ラミア、結界グッジョブだ。それによく我慢したな」

「ご主人様の命を守ったまでであります」

 俺はラミアに邸宅を攻撃する者が現れても絶対に攻撃するなと命じていた。

 十中八九、殺してしまうから。


「早速だけどハーフェンにあいつらなんとかしてもらうように頼むか」

「排除はしないのでありますか?」

「それをしてもゴキブリみたいにまた湧いてくるよ」

 両親達はたぶん領兵の事などなんとも思っていない。

 使い捨てでどんどん送ってくるだろう。


『ハーフェンお疲れ』

『あらどうしたのケイン? 課題はまだ決定できてないけど』

『ちょっと頼みたい事がある』

 俺は転生してからの追放の経緯と今、邸宅が置かれている状況を伝えた。


『全くあんたは生まれに運がないわね』

『前世は貧乏だったけど両親はいい人だったぞ。それで真っ当に育ったんだ。今世の両親が特別なんだよ』

『じゃあ、とりあえずは領兵を退かせるだけでいいのね』

『それだけでいい。また何かあれば対処する。ってこのままじゃ済まさないけどなもう』

『了解。じゃあまた何かあったら連絡して!』

『了解。じゃあ頼むな!』


 念話での交信を終える。


「私が行って領内を滅してきましょうか?」

「いやいい(笑)。あくまで悪いのは俺の両親だから。気持ちはありがたいけどな。」


 両親はハーフェンからの圧力があれば領兵は退かせるだろうが多分諦めないだろう。

 もう俺に関わらないと思うようにさせないと終わらない。

 さて、どうするか。


 俺はすこしばかり案を練った。




 ◇




「ひゃーーあれが赤竜の巣ですかぁ兄貴!」


 俺達は魔術国家パラツインの北方の外れの山岳地帯の通称、赤竜の巣と言われている場所に来ていた。


 標高は高く森林限界を超えており、山々は岩肌が続いている。

 おそらく赤竜以外の生物はここにはほとんど生息していないであろう。


「きゃ!」

 レンツェは足元の石につまづく。

「おっと。」

 俺は身体強化で支えた。


「ありがとう。ケイン君」

 レンツェとストラスには赤竜の巣は山の上にあるとは伝えたが――


 レンツェは大きなリュックに動きやすい服装と登山靴を履いてきており、登山ガチ装備だった。

 いや流石に移動はラミアに連れてきてもらったからそんな装備は要らなかったんだけな。

 逆にストラスは軽装だ。彼の方は多分最初から深くは考えていないのだろう。


「グオォォォォォォォーー!」

 赤竜達の鳴き声が聞こえる。

 我々からはその姿は見えていなが、おそらく奴らは俺たちをすでに探知しているのであろう。



「ラミアちゃんがよかったらなんだけどね、卒業課題の一つ目は赤竜の爪にして欲しいの。」

 ズーーとハーフェンは紅茶を啜る。


「多分、OKはすると思うけど。討伐じゃないから。ただ何で冒険者ギルドに頼まないんだ?」

「それは冒険者ギルドの依頼ランクがSSSになるからよ。」


 冒険者ギルドの依頼ランクは下はFから始まり、E、D、C、B、Aときて、S、SS、SSSランクとなっていた。

 SSSランクは通常不可能案件と呼ばれており、一般には公開されない。

 依頼自体が不可能なほど難しくて、更に、その依頼によって何らかの被害が発生する物が対象となっている。


 赤竜の爪自体は不可能という程ではないが、竜達を敵に回せば国の一つぐらい簡単に滅びる。

 そういう意味でSSSランクの依頼だった。


「なるほどな。俺にはラミアがついてるから万が一にも赤竜が敵になる事はないと。」

「そう、ラミアちゃんは暗黒竜で全ての竜種の頂点に存在しているから。これ以上ない依頼対象なのよ。」


 赤竜の爪はハーフェンの研究素材として必要らしかった。




 という事で赤竜の爪の課題を受けたわけであるが――

 PTメンバーは4人。俺とラミアとレンツェとストラスになっている。

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