捜索

「イテテテ、分かった! 話す! 話すよ!」

「ったく最初からそうしてろよ」

 そういうとグラードはひねり上げていた腕を解放した。


「ジルベルト盗賊団の一味はエディンバラの街に一部潜伏してるはずだ。本拠地はどこか知らんが、エディンバラに一つの拠点があるのは間違いねえよ」


 俺達、俺とラミア、そして、相手が盗賊団という事で用心棒変わりに久しぶりにグラードと共にイネスの捜索をしている。

 今は街でみかけた裏の世界に精通していそうなチンピラを適当に締め上げていた所だった。


「嘘は言っていないみたいですね」

 ラミアが読心術で読み取り、


「もう行っていいぞ」

「くっ覚えてやがれ!」

 分かりやすい捨て台詞を吐いて、チンピラは去っていった。


「さてと、ジルベルト盗賊団のしのぎはほとんど強盗らしい。エディンバラは商業都市だ。物資の輸送が盛んだからそれを襲ってるんだろう。という事は強奪品を売却前はどこかに保管している、つまりある程度の倉庫を持っているという事になる」

「だとしたら商人街か。あそこは倉庫も多い。まあ他にも倉庫はあるにはあるだろうが」

「商人街なら強奪品を売却するのも楽だな。じゃあとりあえず商人街で聞き込みしてみるか」


 俺はそういうと抱っこしてもらってるラミアを促し、商人街の方へと向かう。

 手がかりが薄い現状では地道に聞き込みするしか手がない。



 商人街で、声をかける商人の基準は、ある程度の強さがあること、プラス、人相が悪い事だった。

 そういう奴の方が裏の人間に繋がりやすいだろうという判断だった。


 顔に裂傷があり、いかにもという年配の男が売店で何か売っている。

 あいつに声をかけてみよう。ラミアを促す。


「おい、あんた」

 赤ん坊にいきなり喋りかけられたその男は驚いた表情を見せたが、


「何だ? 客じゃねえな」

「ああ、情報が欲しい」

「……………」

 こちらを値踏みするように見ている。まあ見るからに怪しいだろう。

 メイドに赤ちゃんに戦士。商人街では見ない組み合わせだ。

 しかも話しかけてきたのは赤ちゃんだ。


「ジルベルト盗賊団の情報を得たい。報酬は弾む」

 そういうとラミアを促し、財布の小袋一杯に入った金貨を見せる。

 金貨を見た、商人は明らかに目の色が変わった。


「情報源は?」

「当然バラさないよ。そこは安心しろ」

 男は若干の躊躇を見せたが決心がついたようで……


「ジルベルト盗賊団はこの街、最大のレイモンド商店の最大のお得意様だ。そりゃ強盗した商品だ、どこよりも安く仕入れられるさ」

 男は周りをキョロキョロしながら警戒を崩さず話し続ける。


「元々盗賊団の頭がどんでもなく強いって噂だったが、最近なんかガキが入ったらしく、こいつが人間離れした強さらしい。A級の冒険者でも敵わないじゃないかって言われてる。」

 ビンゴ!イネスの事だ。


「じゃあレイモンド商店を突けばジルベルト盗賊団が出てくるって事だな」

「おそらくな。だがあんたら只者じゃねえんだろうがジルベルト盗賊団に手を出すのはやめた方がいいぞ。奴らは元々Sランクの討伐対象だったが、最近ではSSランクに上げられるって話も出てるらしい。勝ち目はないぞ」

 商人の男に礼をいい、報酬の金貨を渡す。


「じゃあレイモンド商店を突けば盗賊団が出てくるっていう事なんで、突きに行くか。ここはグラード頼む」

「うん?……よし、任せろ! 暴れてやる!」

 ラミアまで指を鳴らしている。イネスは小さい頃から何度か城に遊びに来ていたらしく今回の件にラミアは気合が入っていた。

 頼むとは言ったがやり過ぎなければいいが……



 ドギャーーーーン!!

 グラードは派手にレイモンド商店のドアを蹴破った。

 おいおい、衛兵が来ちまうぞ。

 どういう立ち位置で行くつもりだ?

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