【終章】やがて一つになる

 一つ、また一つ。

 各地へとばら撒いていた魔核が戻ってくる。

 一つは意思を持たない物として。

 また別の一つは生物に取り込まれて。

 クーも、そのうちの一つだった。

 アルガ率いる勇者一行に首を獲られた時、魔王は既に己が持つ魔核を十に別け、一つを残し各地へと隠し分散していた。

 故に、全力を出すことなく敗北を喫することとなった。

 それがまた今、魔王の許へと集いつつある。

 本来の力を取り戻した魔王が、何を目的として動くのか。

 決まっている。

 己の魔核を破壊した者の息の根を止めること。

 勇者の分身体であるアルガを、自らの手で殺すことだ。

「ねー、ここどこー?」

 その声は届かない。

 返事をする者はいない。

 暗闇の中に存在するのは、自分のみ。

 あとはただゆっくりゆっくりと、飲み込まれていくだけ。

 魔核と共に、魔王の一部と化すのを、ただじっと待つだけだ――…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勇者の代わりに魔王討伐したら手柄を横取りされました ひじり @sekijohijiri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ