第3話、冒険者登録してみたりして……
ナイフのような刃物に男は憧れる。
単に切れ味を求めるならカッターナイフで十分である。というか、切れ味を追求したのがカッターナイフである。
折りたたみナイフは、構造上横からの力に弱いため戦闘などには向かない。
そこは門番さんにも告げてある。
収納の中には、色々なナイフやカッター、行軍用のナタやカマ。万能ハサミや高枝切狭、チェーンソーに刈払機など様々な刃物類が入っている。
俺の趣味だ。
物置に行ければ、もっと大掛かりなものもあるのだが、あいにくと岩壁に遮られている。
さて、あくまでも仮証で入場しているため、冒険者ギルドで登録しギルド証を発行してもらえば銀貨1枚を返してもらえる。
他にも商人ギルドや職人ギルドなどがあるが、冒険者ギルドが一番手っ取り早いらしい。
冒険者ギルドは当然入場門の近くに有る。
収納を持たない冒険者が、討伐した血まみれの魔物を荷車に乗せて町を行き来するなどありえない。
門番に教えられたとおり、冒険者ギルドに入り、一番手前の受付にいく。
「いらっしゃい。ご要件は?」
30代後半だろうか、お姉さんと呼べるくらいの女性が対応してくれた。
「初めてなんですが……冒険者登録をお願いします。
それと、この二匹は従魔登録が必要ですか?」
「はい。じゃあ、この用紙に必要事項を記入して……あっ、犯罪歴はないわよね?」
「ええ、今日初めて郡や町に入りますのでありません」
「えっ、知り合いとか身元を保証してくれる人は?」
「いません……」
「そうなると、鑑定士にステータスチェックしてもらう必要があるけど・・・金貨1枚よ。お金はある?」
「ないんです……できれば、先に獲物の買取とかしてもらえませんか。
ハイイログマ1匹と魔狼10匹で金貨1枚に足りますか?」
「状態がよければ、クマだけで金貨1枚になりますね。
ゴンちゃん、買取のお客さんよ。査定お願いね~」
「ほいきた。この時間の持ち込みは助かるぜ。お客さん、獲物はなんだい」
「ハイイログマ1匹と魔狼10匹だってさ」
「なら、ここじゃ無理だな。裏の倉庫まで来てくれかい。
手ぶらって事は収納持ちかな」
「はい。収納になります」
倉庫にまわり、指定の場所に獲物を取り出す。
「ほう、クマの方は一撃かい。狼の方は無傷かよ、いや細かい刺し傷があるのか。
状態はいいな。これならクマが銀貨15枚と狼が全部で銀貨10枚だな。
合計で金貨2枚と銀貨5枚だ。いいか?」
「はい。それでお願いします。
あっ、別件ですけど一角ウサギだと幾らになります?」
「ああ、毛皮に傷がなければ銀貨2枚だな。狼よりも美味いからな」
査定を終えた俺はカウンターに戻ったが、サクラとクロウがモフられていた。
誰にって、受付のお姉さんにです。
「あら、もっとゆっくりしてくれば良いのに。
まあ、いいわ。金貨1枚は用意できたみたいね。
じゃあ、その用紙を持ってついてきて」
お姉さんに連れられて奥の部屋に入る。
「オトメさん入るわよ。
保証人なしっていうからステ鑑定お願いします。
じゃあ、鑑定が終わったらさっきのカウンターに来てね。
あっ、ゆっくりでいいからね」
『ゆっくりでいいにゃ』
『シュウ、なるべく早く済ませてください!』
どうやらクロウはモフられてご機嫌のようだ。逆にサクラは嫌がっているみたいだけど。普段から、クロウは俺のベッドで眠り、サクラはお気に入りのダンボールの上で寝てる。
ちなみに、ネコのしっぽの振り方は犬とは違う。シッポを振っているからといってゴキゲンなわけではない。
サクラの場合、長くてふさふさのシッポなのだが、ちょっとダランとして軽く左右に振っているときは機嫌がいいときだ。
今は、ピンと立ててブンブンと振っている……
「ほら、突っ立っていないでそこに座っとくれ」
言われたとおり、オトメさんという婆さんの前に座る。
「じゃあ、いくよ。
ステータス……見せてみよ!」
なんか、いきなり大声で言われたが、自分の中から何かズルズルと引き出される感じがする。
恥ずかしい部分を見られるような気がして、思わず抵抗する。
「こりゃ!逆らうんじゃない!」とデコピンされ、
オトメさんは俺の提示した申請書を確認しながら言葉にする。
「ふむ、名前はスエナガ シュウ、職業は商会の雇われで年齢は23才。
犯罪歴はないな。生命力や攻撃力は軒並み一桁か……
スキルは多いが、基礎が少ないのう。これでは冒険者として名を上げるのは厳しかろう。
まあ、先のことはワシには関係ないか……
ほれ、確認終了じゃ」
オトメさんは申請書にハンコを押して返してくれたので、カウンターに戻り手続きを進める。
「じゃあ、次はレベル確認ね。
冒険者にはプラチナ・ゴールド・シルバー・カッパーの4つのクラスがあるのよ。
各クラスに段階が1から3まであるんだけど、初期登録はカッパーかシルバーの3ね。
カッパーは見習いクラスで、シルバーから一人前として認められるわ。
シュウ君はクマを倒せるくらいだからシルバーの3で試験するわね。
えっと、うちのクマは……
あっ、コンゴウちゃん試験お願い」
「コンゴウちゃんじゃねえ!マスターと呼べよ……まったく
んで、俺が試験するような相手って事だな。
おもしれえ。
拍子抜けするようだったらケツ触るからな」
「いいわよ。その代わりコンゴウちゃんが手こずるようならキン○マ蹴るからね」
「いいぞ、その代わり素足で直接蹴ってくれよな」
なんか、すごい会話が飛び交っているんですが、このコンゴウって人がギルマスで試験の相手って、ハードル高くないですか。
ともあれ、木剣でギルマスと対峙することとなった。
「ほう、ステの低さをスキルでカバーか。
いいぜ、かかってきな」
上段から斬りかかるが、軽く躱された。
「うん、力はあるが素人の剣だな。いいぞ、続けてきな」
突きから横薙ぎに払うが軽くいなされる。
一旦間をとり、再度上段・中段と斬りかかる。
「力のある剣っていうのはな、こう いなされると大きな隙が出来ちまうんだ」
ギルマスの木剣は俺の首筋に当てられていた。
「ま、まいりました」
「名前は?」
「シ、シュウです」
「現場に出る前に、この町の剣道場に7日通え。
マリー、シルバーの3で登録していいぞ。
剣道場の案内もしてやってくれ」
「あ、ありがとうございました」
「おう。マリー、その二匹も従魔登録しとけ。
二匹で来られたら、俺でも危ないレベルだ」
ギルドカードに血を垂らして登録し、二匹には耳にピアスのような飾りをつけて終わりだった。マリーさんに剣道場と宿や食堂とかの場所を聞いてギルドをあとにする。
「ギルマスって凄い人だったな」
『私たち二匹でも敵いませんよ』
「さて、食堂を教えてもらったから、メシ食って道場ってのに行ってみようか」
『そこの屋台の串焼きが美味そうにゃ』
何の肉かは教えてくれなかったが、結構美味かった。
腹の膨れた俺たちは、教えられた剣道場に向かった。
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