第30話、マーメイドの里…1000人規模の宿泊施設だって忘れてたよ

結婚式の午後、定期便を運行させた。


「ゴルへの往復は如何でしたか」


「いや、まさかゴルまで半日で往復できるとは…」


「内密にお願いしたいのですが、ゴルの東にマーメイドの里を作ります」


「やはり…」


「これを機に、相互の連携を深めたいとゴルから提案がありまして、特に服飾や商業面での交流です」


「物流が盛んになるのは歓迎するところだが、そうなると税金面とかの調整が必要になりますな」


「ゴルの財務担当も同じ見解です。

それならば、いっそ合併のような形で、連邦制をとってはどうかというのが今回の提案です。

ケビン領主とセキ領主には副議長を務めていただき、現幹部会はそのまま連邦議員になっていただきます」


「町の独自性を生かしたまま、その上に連邦議会を設置するという解釈でよろしいですか」


「そういうことです」


「相談役にこれだけのものを見せられているんだ、今更規模が違うとか言い出す者はいないでしょう。

領主が副議長なら、議長は相談役しかおりませんな」


「いや、そこはよく考えましょうよ。

物事を客観的にみられるお年寄りとか、絶対にいますよ」


「そんな人物がいるなら、とっくに相談役のポストに収まっていますよ」


「クスッ、服飾ギルドは大賛成ですわ。セシル様の服は、こちらの服飾ギルドでも作ってみたいとみんな言っていますから」


「商業ギルドも同様です。

タマゴは少し流通しだしましたが、レシピが伴っていない。相談役の提供してくれる食事を、町の食堂でも出せるようにしていただきたいという意見が多いですね」


「食糧事情ですが、ドランの北側を開墾し、テンサイサトウダイコンという砂糖の原料を栽培し始めました」


「サトウですか!」


「もう、南のジュールから高い砂糖を輸入する必要はなくなります。

それから、ホルスタインという乳をたくさん出す牛の飼育も始めました」


「すると、ヤギの乳も…」


「要らなくなります。

もし、それで職を失う人が出たら、テンサイとホルスタインの方で雇います」


「ですが、砂糖や乳に、それほどの需要があるとは思えませんけど」


「そう思って、今日は砂糖とミルクを使ったものを用意しました。

ソフィア、バーバラ、みなさんにお出しして」


「「はい」」


ガラガラ


「白い飲み物はホルスタインの乳です。冷やしてあります。

黄色いのは。タマゴと乳と砂糖を使った菓子です。

ジャガイモの上に乗せたのは、バターという乳の脂分を取り出したものです。

最後のは、乳を加工して砂糖を加えた生クリームをホイップしたものです。

小麦粉を溶いてバターで焼いた薄皮にホイップクリームを詰めてあります」


「美味しい」、「甘い」などの感想が聞こえる中続けます。


「これは、ほんの一例です。

こういったものが安価で出回れば、食事も華やかになってきますよ」


「そ、相談役、テンサイと牛は農水部門にお任せください」


「ええ、ある程度はゴーレムによる自動化を試してみますが、とりあえず統括してくれる人材を選んでください。

ある程度北に駐留してもらえる人をお願いします」


「承知しました」


「周辺の、自給自足している村へも応援を呼び掛けてください。

住居は確保しますから、人の集中化を図っていきましょう」


「はい」


「ということで、ドランとしてもシュウが議長で異論はないな」


「「「はい」」」




その夜、ソフィアたちのシマガメが浜に到着した。

シマガメは後ろのヒレで砂を掘り、30cmほどの卵をポコポコと生み落としていく。

100個ほどだろうか、終わるとタマゴに砂をかけ海に戻っていきそこで息絶えた。


マーメイド達はその亡骸に感謝と祈りをささげる。

シマガメの肉体部分は、一波ごとに崩れ、海に溶けていき、翌朝には甲羅だけとなった。

俺はマーメイド達の指示で、甲羅に残った鉱石類を回収していく。

鉱石類を回収した甲羅は水に浮くため、時には波で流されてしまうそうだ。

俺はアンカーを打って甲羅が流されないようにしておいた。


「みなさん、お疲れさまでした。

宿泊はそこの建物を使ってください。

一部屋4人まで眠ることができますから、一族ごとに分散して部屋を決めてください。

ベッドもありますし、着るものも用意してあります。」


「クイーン、男は」


「明日から何人か来るようにしてます。

今日、どうしても我慢できない人は、言ってください。

シュウがお相手させていただきます」


「食事は?」


「宿泊所の1階にゴーレムを設置してあります。

メニューは3種類ですが、ドリンクバーと総菜パン・菓子パンを用意してあります。

でも、今夜は宿泊所の横にあるホールでパーティーです。

ワインも用意してありますので楽しんでくださいね」


「「「はーい」」」


寝具も着るものも何とか間に合った。

宿泊所は5棟で4階建て60部屋になり、エレベーターも作った。

一階には食堂のほかに、大浴場と集会スペースも設置してある。

マットレスとタオルケットの調達は大変だった。

宿泊所を作った時点で気が付いたのだ。

俺は全国の寝具店やホームセンターを回って何とか1200枚のマットレスを調達してきた。


チーターもフル稼働である。食堂のゴーレムに、エレベーター、ドリンクサーバーにシャワーに照明。

食材だって、半端な量ではない。

毎日200kgの鶏肉が消費されていくし、唐揚げ粉も半端じゃない。

サラダのレタスだって相当の量になる。


「大丈夫ですよ。

みんな自分でできることはやりますから。あん」


「そうですよ。魚だって取ってきて食べますし、寝るところだって前回の伴侶様は何もしてくれませんでしたわ。あん」


「前回のクイーンを知っているんですか?」


「ええ、シェルティーといって、もう100年くらい前に亡くなっているはずです。あん」


「あっ、ジェシカさん、そんなに激しく動いたら…」




翌日、夜になって二頭のシマガメが到着した。

今回は合同パーティーになる。

今日から道場の門下生10人と、兵士から10人応援を呼んである。

先生と領主には了解をとってある。

領主邸とここの往復便を作らせてもらったのだ。


「俺も、マリーの了解を取って応援にきたぞ」


「お義父さん、助かります」


「わしも来たぞ」


「先生!」


「やっぱり、マーメイドっちゅうのは男のロマンじゃからな」




その次の日には1頭、一日あけて最後の一頭がやってきた。


「やい、コンゴウ。お前マリーさんというものがありながら!」


「おお、久しぶりだなモスバガ。終わったら一杯付き合え」


「朝までなら付き合ってもいいぞ」


「お前に、いいものを見せてやろう」


トン


「な、なんだそれは。どうやって飛んだんだ…、!。

シュウ君、コンゴウにだけって事はないよな。

連邦制が可決された以上、両方の町は同じでないといかん」


「はいはい、どうぞ使ってください」


「よし、待てコンゴウ!」




浜の端に塩の精製所を作ってマーメイドに運営させる。ここで得た真水は宿泊所の高架水槽に送られて、シャワーや浴室で使われる。


浜には簡易食堂を設置して、魚専門のゴーレムを配備した。

焼き魚担当と刺身担当だ。

さらに、深海用のゴーレムを作り、新たな漁場を確保した。


「シュウ、このカニのお刺身とっても美味しい!」


「大エビの網焼きもいけます」


「今日から、養殖もスタートした。

マーメイド達も頑張ってくれているから、これからは美味しい魚が食べ放題だぞ」


「「「キャー」」」


カエデに続いて、チートリアルも妊娠した。


チーターの妊娠と出産については知識がない。


「サクラ、チーターの妊娠について分かる?」


『妊娠期間は6か月。カエデよりも早い出産ですね。

出産自体は、概ね人の出産と変わりません』

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