第2章 マーメイド

第18話、メタル系


「へえ、二人で渋谷へ行ったんだ。どうだった?」


「人が多すぎて気持ち悪いです」


「じゃあ、今度は横浜にしようか。

どちらかというと大人の街だから」


「しばらく、向こうはいいです。

作りたい魔道具がありますので、こっちでゆっくりやりますよ」


「そうだ、エルフから教えてもらった酸っぱい実を甘く煮てジャムを作ってみたんだけど食べる?」


「「食べます!」」


「じゃあ、ジャムトーストにしよう」


チン


「モグモグ、アセロラみたいな味ね」


「ですね。ヨーグルトのほうがよかったんじゃないですか」


「ほら、男の人って、そういうのセンスないから」


グサッ


「そうですね。これも四つ切にしてくれれば食べやすいのに…」


「うっ、ちょっとギルドに行ってくる」


三人で暮らすために、ゴルの郊外に家を建てた。

周囲に畑を作り、ゴーレムに管理させている。


小学校の校庭くらいの畑の周りには高さ5mの土壁を作り、中心に家を建てた。


外に出ると、上空にガーゴイルが見える。

スリングショットで打ち抜くがいつものように落ちてこない。

2発3発と打ち込みやっと落下してきた。


不振に思い落下地点に移動すると、そこには金属質のガーゴイルが横たわっていた。




「なんじゃこれは?」


「鑑定にも表示されません。

しいていうなら、メタルガーゴイル」


「まあ、そんなところだな」


ここはギルドの会議室。

メンバーは先生とギルマスと俺。

つまり道場主とその義理の息子、義理の孫という三代の構図になる。


「対策してきおったという事か」


「スリングショット一発では落ちませんでした。

3発でやっと仕留められましたが…」


「アンデッドの比ではないのう」


「こんなのが大群で襲ってきたら…」


「どういう攻撃手段を持っておるかわからんが、このクチバシだけでも脅威じゃな」


「10や20なら何とかなるだろうが、50、100で来られたら対応出来ないと思う」


「とりあえず、領主様に報告しておこうかのう」


「俺とシュウで行ってきます」


「ああ、そうしてくれ」




「メタルガーゴイルですか、また厄介なモノが現れましたね」


「こいつだけでも脅威ですが、他の魔物がこんな変化をしてきたら…」


「ただでさえ硬いドラゴンとかがメタル化したら…か」


「町は壊滅ですな」


「シュウ君、何か対抗策はないだろうか」


「そうですね…」


俺はクラフトのスキルをセットしてメタルガーゴイルを素材にする。


「材質はミスリル銀ですね。

魔鉱石を核にして動かしているようですが、スケルトンと違って魔鉱石は内部に収容されています。

ゴーレムに近いかもしれませんね。

弱点らしい弱点はなさそうです…」


シュン!サクラが瞬間移動で現れた。


『シュウ、そのメタルガーゴイルが現れたわ。

10羽、町に向かってくる。

カエデとルシアはドランに避難させたわ』


「メタルガーゴイルが10羽現れたそうです。

町に向かっているそうなので、迎撃の準備を。

おそらく、数分でやってきます。

僕は先に先生を呼んできますから」


「頼んだ」


シュン


「先生は?」


「道場に帰ったわよ」


シュン


「先生、ガーゴイルが10羽向かってきます。

団長とお義父さんには伝わっています。

招集をお願いします。

僕は先に様子を見てきますので」


「分かった」


シュン


「あれか、サクラ、クロウ、対応できるか?」


『余裕ニャ』 『大丈夫です』


スリングショットを連発し、1羽2羽と落としていく。


「くそ、早い!」


残り8羽、瞬間移動でガーゴイルの上に移動し、ミスリル製の剣で頭と羽を切り落とす。

サクラも瞬間移動でガーゴイルの上に乗り、爪で切り裂いていく。

クロウは空中を駆けて正面から受け止めている。


ギャア!


「くそう、抜けられたか」


シュン


ズバッ


「大丈夫…」


兵士は頭を貫かれて絶命していた。


『シュウ、後ろ!』


ゴン!


「つう、このぉ!」バシュッ


物理障壁があるとはいえ、衝撃はくらう…




「犠牲者1名か…」


「当面、警備兵を増員してスリングショットを常備させよう」


「それだけじゃあダメです。ミスリル銀を切れる人は何人いますか?」


「ミスリルで試したことはないが、鉄を切れるのは俺とオヤジを含めて5人だ」


「団の方も同じだな」


「足りないですよね…、鉄を切る方法…あっ、ガーゴイルの残骸を全部集めさせてください。

残骸を使って武器を作ってみます」




「くそう、高速で刃を振動させて鉄を切るなんて嘘じゃねえか…

どうする、自動小銃でも仕入れてみるか、伝手はないけど瞬間移動で戦場とかに行けば何とか調達できそうだけど、俺自身そんなの使ったことねえし…

まてよ、風魔法で鉄球をまとめて打ち出すってできないか…ミスリルで銃身を作って魔法を書き込む」


ドン


「これじゃあ、スリングショットのほうが威力あるよな…

じゃあ、同じようにメタルガーゴイルを作って対抗させるか…結構複雑な魔法式になるよな…!

そうだミサイル!進行方向の魔鉱石を感知して、胴体を貫いて魔鉱石を奪い取る。

これならサーチと飛行を連動させて、魔鉱石破壊。同じ強度のミスリルなら強化をかけて…、同士討ちを避けて、同じターゲットに向かわないように識別のシグナルを発信。

どうだ、これなら1体のガーゴイルから5発作れる。魔鉱石はドワーフにもらったやつを入れて…完成だ。」


ターゲット用にミスリルの塊に魔鉱石を埋め込み、浮遊させて反復移動をセットする。


「よーし、発射!」


プシャー グシャ!


「ダメか、少し食い込んでとまっちまう…

そうだ!ドリル状にして回転させる。

よし、発射!」


プシャー ブシャッ!


「魔石まで貫通しねえか…、もっと細くして…、そうだ先端に100均の金属用ドリル刃を装着する。これでどうだ。

発射!」


プシャー ズシュ!


「くーっ、いけるじゃねえか。魔鉱石は破壊できなかったが、本体を突き抜けて押し出している。

それに比べて、こっちは多少へこんでいるが再利用できそうだな。魔鉱石を捕獲して戻ってくるようにするか」


魔鉱石追尾式ミサイル100本を作って城壁に配備する。

百均のドリル刃は10軒まわって確保した。出費は11000円。


さあ来い、メタルガーゴイル!


だが、一か月経ってもメタルガーゴイルは現れない。

こっちのミサイルは1000本になっている…


「おーい…ガーゴイルさーん…」


「うん、どうだ?」


「だめ。偵察用もばったりで、影も形も見えないですね」


「まあ、見張りに任せて待機してればいいだろう」


「対空ミサイルが有効かどうか、試したいのに…」


「来ないにこしたことはないだろう」



だが、それは意表をついてやってきた。


カンカンカン!


夜中に半鐘の音で起こされた俺は、門へ瞬間移動する。

この騒ぎが起こって以来、俺はギルドで寝泊まりしている。

食堂の仕込みもあるので、食堂の休憩室を利用しており、いつでも飛び出せる格好でだが。


「これは…」


「仮眠番で、起きたらこのような状況でした」


門兵二人が、頭半分を吹き飛ばされて絶命している。


「闇に紛れて奇襲されたら、打つ手なしかよ」


「おい、どうした」


他の兵たちが駆けつけてきて、周囲の様子を確認するが他に犠牲者はいない。

深夜0時を過ぎて外出する者などいないからだ。

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