第41話、Vウィルス 陽性なら銀を張り付けりゃ灰になるぞ

VV001バンパイア・ウィルスは使い方によっては万病に対する特効薬となり得る。

だが、それはワクチンがあったらの話である。


アトランタの悲劇によるバンパイア・ウィルスの感染は1例だけあった。

それは、ネズミからネズミへと感染を広げ、変異し更に拡大していった。

ネズミは強化された歯でコンクリートを食い破り、食糧庫を荒らし、マンションへも侵入していく。

やがて、ペットに拡大し、人へと急速に広がっていく。

ある者は吸血衝動を抑えきれず人を襲う。また、飛沫感染で家族へと広がり、灰になる者があとを絶たなくなった。



「アトランタでVVの変異種が検出された。おそらく、ゾンビ騒動の時に感染したのだろう。

早急に検査キットの開発にかかるんだ」


おおむねできています。銀に対して反応しますから、特定の薬品で着色したのち、銀粉を入れて反応すれば陽性と判断できます」


「直ちに製品化するんだ」


「ですが、そんなことをしなくても、銀を当てるだけで…」


「家族の前で灰にしろというのか!」



アトランタ全域の警官に銀メッキの警棒が配備され、ネズミの通路には銀箔が張られた、

その過程で、警官の三分の一が灰になってしまった。


事態を重く見た政府は、再度アトランタを都市閉鎖し、全住民に対し銀メッキの指輪を交付。


指輪により灰になってしまった者の数は10万人に及んだ。


一時、沈静したかにみえたVV騒動だが、2週間後周辺の都市でも吸血騒動が起こり、ジョージア州だけでなくアラバマ州テネシー州まで対策に追われた。

政府は銀粉入りの生レバーを下水や地下鉄構内にばらまき、毒餌を含んでネズミの掃討作戦が展開された。


「ワクチンはまだか!」


「…まだ手掛かりすら」


「このまま拡大したら、合衆国は滅ぶぞ!」


「所長、変異種にVV001を投与したところ、狂暴性は抑えられVV001の増加が確認されました」


「だから何だ、合衆国全員をバンパイアに変えるのか!」


「少なくとも、陽性反応者への投与は効果が見込まれます」


「くっ、プレジデントに打診はしてみるが、ともかく、何としてでもワクチンを作れ」


「それから、陽性者をどこかマイアミ沖の無人島にでも隔離して、例の銀の粉散布で対応しては如何でしょうか」


「それは…、君自身も含まれるんだぞ」


「当然です。血液かレバーさえ送ってくれれば、自給自足してみせますよ。

スポイトと電子顕微鏡があれば、ワクチン開発は続けられますから」




まず、私たち100人が先発隊として島に渡りました。

リゾート地として100の建物があり、一応の生活用品はそろっています。

この100人で感染者受け入れの準備をしつつ、既存の抗ウィルス薬を試すことになっています。


「はーい、一応私たちはウィルスに冒された病人ですからね」


「病人を働かせるんですか?」


「知ってるかしら。これ」


「なんすか?」


「銀の針が飛び出す杖よ」


「はい、一生懸命働かせていただきます!」


AHAHAHAHA!


「血が欲しい人は私に言ってください。近いうちに、自販機が入るまでは、個別に管理しますからね」


「あのー」


「はい?」


「例えば、二人でお互いの血を飲みあうって可能なんですか?」


「そうね。可能だと思うけど…、もし、試したい人は私に言ってください。研究データとしてチェックしたいと思います。

それと、災害の応援要請も入ります。そっちはマーク、お願いね」


「了解!

災害対策班チームVに参加したい人は俺に申し出てくれ。

一通り訓練が必要だからな」


「娯楽関係はあまり期待できないけど、ジェットスキーとサーフィン・ウィンドサーフィンは自由よ。

スポーツ施設関係はマイケルに言ってね」


「一応、プロサーファーなんでヨロシク!

スケボとバギーもあるけど、数が少ないから順番だよ」


「生活関係はマギーよ」


「アルコールとドラッグは禁止。電子タバコはOKよ。

食事当番は交代制だからね。手を抜いたらお仕置きしてあげる」


「最後なんだけど、これからは子供やお年寄りもやってくるわ。

できれば、この島の住人は家族だと思いたいの。協力してくれると助かるわ」


「「「了解!」」」


こうして、バンパイアだけの独立したエリアができ、生活が始まります。





政府からの要請を受けて、バンパイアを駆除することになった、

終電の終わった地下鉄構内を、サーチしながら銀の粉を操る。

下水から路地裏、ビルの配管路。さすがに2週間かかったが、すべて掃討することができた。


「バンパイアエリアか、面白そうだから行ってみるか」


場所は聞いてあったので、空を飛んでいく。


「こんちわ。マリエさんはいますか?」


「あっ、私です」


「シュウです。どんな様子なのか見に来たんですけど、…元気そうですね」


「シュウさんって、あのシュウ・スエナガさん!」


「ええ。結構、大勢いるんですね」


「全部で3564人です。

もっと早く対応できていれば…」


「そこは、割り切りましょうよ。

3500人も救うことができたんだと」


「そうですね」


「ところで、ウィルスの様子は?」


「新規の人の受け入れが忙しくて、まだ抗ウィルス薬の投与は始めていないんです」


「ウィルスの駆除なら、魔法でできるかもしれませんよ」


「えっ?」


「向こうの世界ではクリーンという魔法を使って細菌なんかを駆除するんです」


「ほ、ホントですか!」


「ええ、まずはウィルスを見たいんですけど」


「ここではウィルスの培養をしていないので…、あっ、私のでお見せします」


つばを採取し、電子顕微鏡で確認してもらう。


「あれっ?おかしいな…」


血液からもウィルスは見つからなかった。


「写真とかは?」


「パソコンで見られます。…これです」


「ちょっと、マリエさんで確認していいですか?」


「は、はい」


『サーチ:バンパイア・ウィルス!』

「ないですね…」


「そんなこと…」


「ちょっと失礼『ステータス』

うーん、種族は確かにバンパイアになっていますが、感染とかの表示がありませんから、バンパイアとして健康体です」


「はあ…」


「ちょっと、島全体を見てきますね」


「あっ、はい」


上空からサーチしたところ、ウィルスは島の北側にかたまっていた。


「島の北側は、新しく来た人たちのエリアです」


「そうすると、ゾンビと違って、バンパイアに体が変化することで、ウィルスが消えるのかもしれませんね」


「ウィルスが消える…。もう、人に伝染しないんですか」


「現状をみると、新規に受け入れた人以外は大丈夫だと思います。

でも、紫外線と銀が致命的なのは確かですし、多分、血の欲求もありますよね。そうなると、この状態の方がいいんじゃないですかね。

一応、僕の方からもプレジデントに伝えておきますよ」


「お願いします」


「それと、娯楽用品を追加してあげますよ」


「ホントですか!マイケル~!」


「なんだい、大声出して」


「シュウ・スエナガです。スカイボードを50枚持ってきました」


「スカイボードって、あの牧場でアニーちゃんが乗ってるやつ!」


「スタッフ用に制限のないやつを10枚と、高度10mの時速40kmまでの制限付きを50枚。

白いのがスタッフ用です」


「か、感謝です。使いかたは…」


「今から海でやりましょうか」


「お願いします」



「はい、まずはボードを置いて上に乗り、足からボードに魔力を流します。

なんか熱くてもやもやしたものを感じたら、それが魔力です」


「「「もやもや…」」」


「そうすると、このように浮きます」


「あわわ」 「もやもや…」 「浮いた!」


「ボードの先を下げると沈んで、上げると上昇します。

魔力の量を増やすとスピードが増します」


「うおっ」 「ひゃー」 「もやもや…」


「あとは慣れてください。

じゃ、僕はこのままプレジデントに報告しに行きますから」


「「「ありがとう~」」」

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