第21話、三人目…、俺は望んでないって!

「ここは食堂だ。

ゴーレムと魔道具を使って半自動化してある。

インプットしてある料理で、材料があれば、音声で注文可能だ。

から揚げ2人前と親子丼2人前作ってくれ」


「ショウチシマシタ」


「俺達でも注文できるのか?」


「ああ、調理が終われば、注文者のいる場所まで運んでくれる。

そういえば、お前たちのサイズにあわせた食器や装備が必要だな。

ドリンクサーバーとコップだけでも作っておくか」


「コップは自分で作る」


「そうか、じゃあ、このアルミを使ってくれ」


「わかった」


「じゃあ、ドリンクサーバーだな。

人間用と同じ4種類でいいだろう。ミスリルと魔石を出して…『クラフト!』

魔法式は人間用のやつをコピーして、出す容量だけ20ccでいいな。

種類は水と紅茶、オレンジジュースにリンゴジュースでいいか」


「30ccにしてくれ」


「わかった。

あとは、テーブルとベンチを用意して完成だ。

飲みたいもののところにコップをおいて、ボタンを押すと30cc出てくるから好きに飲んでくれ」


カチャ ポチッ シャー


「おお、これはいいぞ」


ゴクゴク!


「これがオレンジジュースか、うまいな」


「リンゴジュースもおいしい」


「冷たい紅茶も美味しい」


「オマチドウサマ」


トン


「食っていいのか」


「ああ、好きなだけ食ってくれ。足りなければ追加すればいい」


「うめえ」 「美味しい」 「このトロトロ感は!」


満足してくれそうだ。




その夜。俺が二人の嫁から搾り取られているところへ女王が裸で割り込んできた。


「チ、チートリアル、体の大きさを変えられるのか…」


「30分だけです。さあ、私には時間が少ないですから早く子種を…」


「3人目…これでお終いだからね」


「お、俺が望んだわけでは…ウプッ」


人間サイズのチートリアルは、いわゆる巨乳だった。

翌朝、俺は立ち上がることもできなかった。


「こ、腰が…」



その日の午後である。


「飛び去って行ったメタルドラゴンを探しに行く。

2・3人ついてきてくれ」


「私一人で大丈夫でしょう。

皆は、新しいオモチャに夢中ですから」


飛行艇にチートリアルとサクラを載せて北へ向かう。

城跡しろあとの向こうは氷の海が広がっていた。

この辺りが極になっているんだろう。

やがて氷が途切れ海に出る。


「なんだ、あれは」


『シマガメ、体長は200m前後、性格は温厚で、寿命は2000年前後です』


「おっ、違う島だな」


「いえ、プランクトンの集合体です。

内側のプランクトンは酸欠で死んでおり、悪臭がひどいです」


「あれは、大陸だな」


『太古の生物相が残ったクロウド大陸です。人間はいません』


「あ、あそこにメタルドラゴンが!」


「おいおい、本物のドラゴンと格闘中かよ」


「可哀そうに、羽を痛めて飛べないんです」


『収納!』


「帰ったら、俺の命令に従うよう書き換えてくれ」


「はい」


「ブレスはもっと細くして威力を高め、反動を吸収するようにできないか?」


「この飛行艇にセットされている感じですね。簡単です」




「このゴ〇ラみたいな外見は駄目ね。

コジ〇ジみたいにしましょう。えい!『クラフト!』」


「色も…ピンクにしましょう『ペイント!』」


「うん、これなら番犬として置いといてもいいわよ」


「あ、ああ」


体高8mのコジ〇ジみたいなピンクのドラゴンが我が家の守り神となった…


鳴き声もキュイーとセットされ、二人分の搭乗スペースもある…

まさか、これで町までお買い物とかないよね…




翌日、ケビンの元を訪れ、具体的な話を聞く。


「塩害だけの問題ではなさそうなんだ。

作物が育たないから、育つ場所で連作を続け、結果として全体的に土が痩せているんだと思う。

そのへんの技術的なものを含めた対策が必要だと思っているんだが」


「支援するのはいいが、メリットはあるのか?」


「塩とマーメイドだけだな」


「塩はいくらでも生成できるんだが、マーメイドか…

それよりも、海藻の養殖とか魚の養殖を指導したほうがいいんじゃないのか?」


「ともかく、現地を見てからだな。明後日から一週間開けてある」


「分かった。それまでに準備しておこう」




塩害に強いとされるトマト・アイスプラント・アスパラガス・キャベツの種を購入し、マーメイド用に魚を確保する。

ほかにも、養殖場用に網とひも類、フロートも大量に買っておく。


「さてと、二人乗りの飛行艇も作ったし、下見でもしておくか」


二人乗り飛行艇の試験飛行をしながら西を目指して飛んでいく。

すると海に出たので南下していくと、町があった。


「すみません、ここはガンダの町ですか?」


「ガンダだと?ガンダは滅んだ。今は海賊の拠点になっているハズだ」


「えっ?」


「3か月ほど前に、海賊の襲撃があり、多くの住民はここタンペイに避難している。

あそこに残っているのは、捕まって奴隷にされた住民と、人質をとられて奴隷状態のマーメイドだけだよ」


「す、すみませんが、ゴルの町相談役のシュウと申します。

領主様にお取次ぎいただけませんか」


兵士によって取次され、領主邸の応接室で面会してもらった。


「突然の訪問で申し訳ございません。

ゴルとドランの相談役を兼務しています、シュウと申します」


「タンペイ領主のタイラです。

ゴルとドランの繁栄は聞き及んでいますよ。

シュウさんのご活躍もね」


「恐縮です。

実は、ガンダからドランのケビンに対して援助の要請があったそうで、その下調べに来たんですが、ガンダは滅んだと聞きまして、そのあたりの情報をいただければとお伺いしました」


「罠ですね。ガンダは海賊に襲われ、半数の町民がこの町に避難しております。

ガンダで暮らしていたマーメイドの半数も避難してきましたが、海賊が怖くて海に出られない状況が続いています。

タンペイの船も何隻か被害にあっており、対策を検討しているところです」


「こちらも被害を受けているのですか。

海に出られず、避難者を受け入れたのでは、この町も困っているのではないですか?」


「恥ずかしい話ですが、特に食料に困窮しておりまして、ドランへ援助をお願いしようかと考えていたところです」


「でしたら、ガンダへの支援用に用意してきた物資を提供できます」


「それは助かります」


「では、食糧庫に案内してください。できれば、そのあとでマーメイド族と話をしたいのですが」


「はい、そちらも準備させます」




「では麦500袋」


ドン


「小麦粉500袋」


ドン


「こ、これだけあれば、当分は凌げます」


「ほかに倉庫は?」


「はい、隣にも」


「では、ジャガイモとサツマイモを置いていきます」


「ありがとうございます。

マーメイドは漁業ギルドの応接に待たせてあります」


「申し訳ないのですが、僕一人で話をさせてもらいたいのですが」


「かまいません。引き合わせが終わったら、私は帰りますから」




「さてと、周りに音は聞こえないようにしたから、安心して話してください。

僕はゴルという町から来ました、シュウです」


「マーメイド族のソフィアと申します」


地上で生活するときは人間と変わらない姿になり、残念ながら普通に服も着ています。

ソバージュの金髪で海色の目をした美人さんです。


「マーメイド族は、昔から人と暮らしてきたんですか?」


「いえ、50年ほど前までは、シマガメ様の元で暮らしていました。

今でも、多くのマーメイドはシマガメ様の元にいるはずです」


「へえ、昨日見ましたよ、シマガメ様」


「ど、どこで…、いえ、それを聞いても…」


「50年前に何があったんですか?」


「私を含めて50人のマーメイドがガンダの人間に拉致されました」

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