第22話、マーメイド…人間の姿だと魅力半減だろ

「私を含めて50人のマーメイドがガンダの人間に拉致されました」


「拉致ですか。でも、狩りに出ていたって聞いてますし、逃げようと思えばいつでも逃げられたんじゃないですか?」


「半数は人間に監禁され、毎日のように男をあてがわれました…

もう半数が、人間のために魚を捕る毎日です。

それに、シマガメ様の元でないと、サメや海獣に襲われてしまいます」


「泳ぐのはそれほど早くないんですね」


「はい。攻撃手段も持っていませんので」


そうすると、ケビンは監禁されていたマーメイドを抱いたのかよ…


「今は100名ほどだと聞きましたが」


「私たちの子供です。毎日抱かれていれば身籠みごもりますから」


「今は、残りの50人が海賊に囚われていると」


「半数は以前と同じように海に出ているのですが、サメが多くなり自由に漁ができないようです」


「そうすると…、まずはここの50人をシマガメの元に届けてから、囚われた50名の救出と海賊の盗伐かな」


「えっ、まさか…シマガメ様の元に帰れるんですか?」


「ここに残りたいの?」


「まさか!…、ここでも男に抱かれていますから…」


「やっぱりね。

じゃあ、マーメイドを集められるだけ…、いやゾロゾロ集めるのは無理か、ちょっと待ってて一応領主に断ってくるから」


シュン!


「うわぁ、ど、どこから…」


「こうやって、どこでも移動できるんですよ。

マーメイドから話は聞きました。彼女たちは全員シマガメのところに送り返しますから」


「で、ですが、人間と暮らせば、彼女たちも数を増やせます。

マーメイドは少数民族なんですよ」


「そこは、彼女たちと相談して考えますよ。じゃあ、そういう事で」


シュン!


「サクラ、瞬間移動って、場所に対して有効なだけかな、特定の人間や物に対しても使えるの?」


『シマガメに一度下りれば、何度でも行けますよ。誰かの元というイメージでも行けますが、障害物がある可能性がありますので、あまりお勧めはできませんね』


「了解。じゃあ、ソフィアさん行こうか」


「ど、どこへですか?」


「シマガメを探しにだよ」


シュン!


「こ、ここは?」


「飛空艇といって、空を飛ぶ乗り物だよ。

僕は、一度行ったところなら瞬間移動で行き来できるから、とりあえず一度シマガメに行かないとね」


キーン


「シマガメって何頭もいるのかな?」


「世界で5頭だと聞いています」


「5頭ね『遠距離探査”シマガメ”!』おっ、さっそく一頭発見」


シマガメの甲羅に着陸する。


「どう?君たちのいたシマガメかな?」


「ちょっと潜って確認してきます」


ソフィアさんは裸になって海に飛び込んでいきます。

空中で足が尾びれに変化すると、紛れもないマーメイドの姿になりました。


「いやあ、きれいだな…」


『何を胡麻化しているんですか?』


「いや、彼女たちを独占したいって気持ちもわかるなぁってさ」


「シュウさん、ここじゃあありませんでした『ブロー!』」


「あの、裸のままでいいですか、いちいち脱いだり着たりするのは面倒なので」


「あっ、大丈夫です。理性で押さえますから」


「クスッ、シュウさんって変わってますね」


2頭目3頭目も違いました。

ほかのマーメイド族がいたらしいです。


4頭目


「あっ、多分ここです」

チャポン


数分後、ソフィアさんはゾロゾロと仲間を連れて戻ってきました。


「間違いありませんでした。

お母さんとお祖母ちゃんと、お姉ちゃんと妹たちです」


「ごめん、見分けがつきません…」


「いいんですよ。みんなソフィアですから」


「えっ?」


「血筋に連なるものは皆ソフィアなのです。

マーメイドは個ではなく血筋によって認識されます。

私たちからの感謝の気持ちを受け取ってくださいね」


「えっ?」


6人のソフィアさん相手に、3回が限界でした。


「す、すみません…」


「いいの、何度も来てくれるんですよね」


「は、はい。行ってきます」


シュン!


タンペイの町でマーメイドをサーチし、少しだけ状況を説明してシマガメに移動する。

これを繰り返すこと50回…3回は移動した瞬間に拿捕されお礼とやらを受け取りました…


「あとは海賊の元から助け出すんだけど、ソフィア場所は分かる」


「あっ、私分かります」


「いいの、ジェシカは引っ込んでいて!」


「ずるいよ、ソフィアばっかり…」


「さ、行きましょう」


キーン


「私はまだ、お礼していませんの…」


「あっ…」


本日7回目…


海賊の拠点とシマガメの往復を続けたが、30往復目で海賊側に対応された、


「おかしな術を使うようだが、抵抗したらこのマーメイドを…ぎゃあ!」


転移して海賊の腕を切り落とす。

35往復目では残りのマーメイドが集められていた。

しかも、複数の弓でマーメイドを狙っている。


「おかしな…」


精神支配マインドハーネス!』


その場にいた海賊を支配下に置き、他の海賊を盗伐するよう指示を出す。


こうしてマーメイドの救出は終わった。


「行っちゃうんですか…」


「また、すぐに来ますよ。

これからの事を相談しないといけませんしね」


「勘違いしないでくださいね」


「何を?」


「マーメイドは、誰でもいいからするわけじゃありませんの。

心からマーメイドの事を考えてくれる人でなければ、自分から抱かれることはありません」


「じゃあ、俺は合格なのか?」


「すべてのマーメイドにとって大切な人…」


「分かった。またすぐに来るから」


俺はソフィアの額にキスをした。


「あっ…」


「どうした?」


ソフィアの耳が赤い…


「な、なにか…おかしいです…」


ソフィアの全身が光に包まれ、おさまっていくと、そこにはティアラをいただき、金色の尻尾をしたソフィアが横すわりになっていた。

海の色だった瞳も、金色に変わっている。


「「「おお!」」」


「数百年ぶりにクイーンが誕生するなんて!」


「「「クイーン!」」」


「えっ?どうしたの?」


「そうか、お前はまだ知らなかったのですねクイーンの事を…」


「「クイーンって?」」


俺とソフィアの声が重なる。


「マーメイドにとって真の理解者が現れ、そのお方に自分の全てを捧げたいと願う者がいて、その思いを遂げたときにマーメイド・クイーンが誕生します。

私が生きてきた380年でも、初めてのこと」


「マーメイドクイーン…」


「ティアラと、金の瞳、金の下半身。伝承のとおりです」


「そ、それで何か変わるのか?」


「クイーンの伴侶は、全てのマーメイドに愛を注ぎ、その影響を受けたシマガメ様が一か所に集い産卵を始めます」


「待て、こんなのが5匹も揃ったら、人間の町は壊滅するぞ」


「大丈夫です。このシマガメ様を安全な場所に誘導するのは私たちのお役目です」


「それだけの砂浜…あった。ゴルの東側だ。

俺の家から東に行った浜辺」


「そして、全ての海の生き物が活性化し、豊かな海が再現されるのです。

シマガメ様は次の世代に海を託し、その亡骸は伴侶様の所有物となります。

そして、そこは当分の間マーメイドの里となります」


「いや、あんな亀の甲羅をいただいても…」


「あの甲羅は鉱石なのです」


「鉱石?」


「金や銀を始めとした金属類と、宝石の山です」


「それならば、里を作る資金にできるな。

まあ、乗りかかった船だ。できる限りのことはしよう」


「「「よろしくお願いします」」」


「とりあえず、このまま東へ向かってくれ。俺は受け入れの準備をしてくるから

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